冒険者学校のほのぼのとしたお昼2
一体何だろう?
ホテルのことを言っているのなら、ホテル自体が未曾有の建築物である。
逆に、有りすぎて何も思いつかない。
俺が思考を巡らせていると、ライムお姉さんが顔を近づける。
「常連さんの女冒険者の方々なのだけれど、今朝南の森でボブゴブリンとゴブリンの群れに遭遇したみたいなの。でね、急いで逃げようとしたけれど周りを囲まれて全員死を覚悟したそうよ。でも、急に空が明るくなったかと思うとゴブリン達が急に弱りだしたらしいの。全員負傷したものの、弱ったボブゴブリンとゴブリンを十数匹倒して冒険者ギルドに駆け込んだそうよ。でね、今冒険者ギルドで討伐隊が組まれて残りを討伐しに行っているみたい」
「へー……」
恐らくあれだよね……天をも浄化する、聖なる浄化の光 アルティメット ピュリフィケイション セレモニーの追加能力。
確か、浄化の光り? がどうのこうのってログが流れてたあれだ。
アンデットじゃなくても、効果あったんだ。
『「リリー様、ウンディーネ達だけではなく私達も一時的に急激な力の上昇を獲ましたが、この国に住んでいた者も少なからず恩恵を受けたと思われます。ですので、その女冒険者達も生還することができたのでしょう」』
と、ユグドラシルから『心情』が伝わってきた。
まさか、アイビーの汚れを祓っただけだったのに、ここまで影響を及ぼしていたとは思わなかった。
無意識だったとは言え、あんな魔法をもし連発したら生態系が壊れてしまうだろう。
自粛しないと……。
ただ、耐性を獲たし特殊耐性でもう黒い悪魔とは遭遇しないとは思うけれどね。
それに、ゲームではマジックポイントという設定で、その者の使える魔法に制限が有ったけれど、俺の場合そのマジックポイントが減ったという感覚すら無いんだよね。
もし、シューティングスターとかを防壁や障壁なしで放ったらどうなるんだろう? と勘考していると
『「この大陸が、この世界から消滅し闇が世界を覆い生物が絶滅するとユグは思います」』
とユグドラシルから『心情』が伝わってきた。なので、俺も『心情』を伝える。
『「ユグちゃん、怖い事言わないでよ」』
すると、
『「ですので、そうならないようにスノー様や私達がいるのです。それに、スノー様を召喚し戻さずにいるだけでも、大陸全ての魔法士の魔力を集結させたとしても数秒召喚していられるかどうかの魔力消費です。浄化魔法のピュリフィケイション セレモニーや他の魔法を放ったとしても魔力を消費したかどうか分からないのは当然です」』
とユグドラシルから『心情』が伝わってきた。
ユグドラシルと心情を伝え合っていると、ライムお姉さんが
「リリーちゃん、まだ続きが有るのよ」
と言ってきた。
「その負傷した女冒険者達がうちに来て、先ほど温泉に入ったらしいのだけれど、タオル一枚で慌てた様子でカフェバー&レストランに駆け込んできて私の前でありがとうと言って泣いたのよ。それを見た周りの男性客達が女冒険者達のあられもない姿を見て食べ物をボロボロと落としていたから思わず奥の部屋に入れたのだけどね。その女冒険者達曰く、身体中に負っていた傷や傷跡が残るって言われてた顔の傷も綺麗に治ったそうなの。それにね、以前から他の冒険者の人達も言っていたのだけれど、ホテルの温泉に入ってホテルに泊まると次の日には魔物に負わされていた傷が綺麗に治ったそうよ?」
――確かに俺のいた元世界でも、昔から温泉には様々な効果があった。
リュウマチ、神経痛、皮膚炎、傷などの治癒を早める効果、美肌効果等々……。
ただ顕著に現れたり、即効果が現れたりはしなかった。
当然である。現実世界はゲームではない。
ただ、リアリティーを追求した本格的なゲームでは無く、一般的な昔のゲームでは宿屋に泊まると、ありとあらゆるものが全て回復する場合が多かった。
体力や魔力だけではなく、毒や麻痺といった状態異常まで。一部のゲームでは死をも治していたが……。
まさか、俺が【様々な効果】がある。と、いった俺の思いにスキルが反応したのか?
いや、あり得なくはない。寧ろあり得る。
それに、キノットさんのホテルの温泉にも回復を得意とする水の微精霊ちゃん達がいるのかもしれない。
キノットさんのホテルのラグジュアリーVIPルームにある大浴場には入ったことが有るが、外の大温泉には入った事がない。
今度、確認しに行った方が良いかもしれないな。
微精霊ちゃん達が踊っているのならまだしも、もし精霊や大精霊クラスが踊っていたら話が違ってくるからだ。
と言うか、確認すれば良いか。
「ライムお姉さん、少し確認するから待ってね」
「うん」
「ウンディーネちゃん、おいで」
水色の魔法陣が描かれたかと思うと、大精霊ウンディーネが姿を現した。
そして、ユグドラシルのように小さくなった。
「リリー様、呼んで頂き感謝致します」
「少し聞きたいのだけれど、いいかな?」
「はい、何なりとディーネにお聞き下さい」
「あっ、もしかしてディーネちゃんて言った方が良いのかな?」
「はい、ディーネ嬉しいです」
ユグドラシルの時もそうだったが、親しみを込めて名前を短くすると喜んでくれるみたいだ。
ユグドラシルも『心情』で『「その通りです」』って言っている。
「えっと、ディーネちゃん? もしかして、キノットさんの外の大温泉に行ったりしてる?」
「はい。本当はリリー様の温泉に行きたいのですが、結界が張られているので湖に近いホテルの温泉にディーネや精霊達が毎日通っています」
やっぱり……うーん、どうしよう。
でも、大騒ぎしていないところを見ると姿を消したまま入っているのかな?
『「はい、ディーネも精霊達に姿を消して迷惑をかけないよう指導しているようです。ユグが指導しましたので」』
とユグドラシルから『心情』が伝わってきた。
「リリーちゃん、こちらの可愛らしい方は?」
と、ライムお姉さんが言ってきた。
「あっ、ライムお姉さん紹介するね。水の大精霊ウンディーネちゃんです。私はディーネちゃんと呼んでいます」
「初めまして、私はあのホテルの女将ライムよ」
「初めまして、リリー様の召喚精霊ウンディーネです」
「あっ、もしかしてレモンがユグちゃんみたいな可愛い精霊さんが温泉で踊っているって言っていたけれど貴女だったのね」
やっぱり、ウンディーネも踊っていたんだ……。
『そのようですね』
とユグドラシルから『心情』が伝わってきた。
大精霊が踊れば、温泉の回復力も異常に上がるのは納得だよ。
回復が得意な微精霊が踊るだけで回復効果が上がるのに、大精霊が踊れば超回復になるよね。
そりゃ、消えない顔の傷も治るよ……。
でも、ライムお姉さんの話からしてウンディーネ達とは別に温泉やホテルの客室の回復が上がっている様だけれど……恐らくね。
ライムお姉さん達には、正直に伝えておいた方が無難だろう。
「ライムお姉さん? 以前、確か言いましたよね。私、温泉には美肌効果の他に様々な効果があるって。それに、どうやらホテルの部屋もみたいですが……」
「ええ……そう言えばリリーちゃんが、言っていたわね」
「私は【即】効果が現れると思っていなかったのですが、私の能力が向上した事や回復が得意な大精霊や精霊、微精霊ちゃん達により効果が【即】に上方修正されたようです」
「えっ? じゃあ、あの温泉とホテルの部屋に泊まると、医者いらずとか……? 何て、リリーちゃん冗談よね?」
「……テヘッ」
「エッ、エェェェェェェ」
ライムお姉さんが驚愕していたが、そうなってしまったものは仕方がない。
「今度、王様にでも相談してみますよ」
「ええ、リリーちゃんに任せるわね」
「ライムお姉さん心配しないで。それに傷が治ると評判も良くなるしね。一石二鳥よ」
俺が満面の笑みで答えると、ライムお姉さんの複雑そうな顔が太陽の様な満面の笑みに変わった。
「そうね、リリーちゃんは女神様ですし。多少のことで驚いていてはダメね。リリーちゃん有り難う」
ライムお姉さんと話しているとレモンちゃんが呼びに来たようだ。
「ママー、お客さん増えてきたよ。あっ、この前の綺麗な大精霊ちゃんだ」
「レモンちゃん、この前は温泉に案内して頂きありがとうございます」
あれ? 確か、ユグちゃんディーネに姿を消すよう指導したんだよね?
『「はい。ですが、この前会ったようですね? ……姿を消すようにしている大精霊を、確認出来たと言うことは、レモンちゃんとディーネとの相性がよく適正があるのかもしれません」』
俺の『心情』の問いにユグドラシルが『心情』で応えたあと姿を現した。
「あっ、ユグちゃんだー。こんにちはー」
「レモンちゃん、こんにちは」
レモンちゃんが、ユグドラシルに抱きついた。
『「このように、ユグの場合は自ら姿を現さなければ通常見ることが出来ません。リリー様の場合は、心情で通じやすくする為にユグ自身がリリー様の中に入るので見えないだけです」』
とユグドラシルから『心情』が伝わってきた。なので、俺も『心情』を伝える。
『「じゃー、適性があるレモンちゃんは賢者の素質が有るって事かな?」』
『「それは、ユグはわかりません」』
使徒になれば、レモンちゃんもスミレちゃんのように俺の下位職を授ける事ができる。
それに、今回起きたアンデット事件に魔の者が暗躍……
俺がこの国からいなくなる二年後、スミレちゃんとウンディーネだけが俺の愛するこの国を守らなくてはいけなくなる。
守る為には、仲間が必要だ。ならば
「ライムお姉さん、レモンちゃんがもしかしたらスミレちゃんの様に私の使徒になれるかもしれないと言ったらどうします?」
「えっ? そうね、レモンの好きにさせるわ。私達家族は皆、リリーちゃんと絆で繋がっている家族みたいなものですしね」
「ライムお姉さん、ありがとう。ライムお姉さん達家族の絆を、私はいつも感じているよ」
「レモンも、リリーちゃん大好き」
ならば、勘考した事を試してみればいい。
「レモンちゃん、同じ名前だけれど私が改めてレモンと命名してもいいかな?」
「うん。レモン、リリーちゃん大好きだから良いよ」
「レモンちゃん、ありがと」
すると、レモンちゃんは急に光に包まれ唐突にシステムが起動。
【システム レモンが管理者に改めて真名を授けられたことにより進化します】
【システム及び女神システム起動 システム認証問題ありません】
【ダブルシステム リリー・ヴァリーとレモンの絆が管理者の命名を受け進化を試みています】
【ダブルシステム 限界突破しました】
【ダブルシステム 強い絆と信仰を持った信者が、進化を遂げ使徒となりました】
【ダブルシステム 使徒の正式認可を、リリー・ヴァリーに承諾として確認致します……】
【ダブルシステム 【はい】 【いいえ】を選んでください】
ダブルシステムさん、勿論【はい】を選びます。
【ダブルシステム 承諾を確認致しました】
【ダブルシステム 使徒 レモン が第三級中位管理者リリー・ヴァリーに認められました】
すると、俺の眼前に文字が現れた。
【ダブルシステム 使徒 レモン に、リリー・ヴァリーの下位職を伝授可能です】
【ダブルシステム 使徒 レモン に、リリー・ヴァリーの【天啓】を授ける事が可能となりました】
『「リリー様、レモン様もスミレ様と同じように暖かい心情の持ち主です。レモン様に、ユグが何度も抱きついて頂いた事でいつも暖かい心情が伝わって参りました。花の精霊ユグも中偉聖霊王女ユグドラシルとして、リリー様にご報告致します。レモン様も、この世界に対して邪な心は一切無いと断言できます」』
と、ユグドラシルから『心情』が伝わってきた。
俺は、レモンちゃんに予め『使徒間テレパシー』を使用する事を伝え通信を行う。
『「レモンちゃん、聞こえる?」』
『「うん。リリーちゃん、聞こえるよー」』
『「レモンちゃんは、私がレモンちゃんに真名を授けた事で進化を遂げ正式に私の使徒になったの」』
『「えっ? 使徒ってなあにー?」』
『「そうねー、私の大切な家族であり仲間かな」』
『「やったー! レモンね、ママ達と同じ位リリーちゃんもだーい好き。レモンも、リリーちゃんの事大切な家族だと思っているよー」』
『「レモンちゃん、ありがと。それとね、大切なことを話すから今から言うことを良く聞いてね」』
『「うん」』
俺は、スミレちゃんに言ったようにレモンちゃんには分かりやすく話してあげた。
『「どう? 分かった?」』
『「難しいけれどー、レモン頑張る。分からない事があれば、リリーちゃんとスミレちゃんに聞くねー」』
『「そうね、今はそれで良いよ。で、やっぱりレモンちゃんは?」』
『「ディーネちゃん、ユグちゃん、凄ーく可愛いから賢者が良いです」』
『「うん、分かったわ」』
後は、レモンちゃんに賢者を授けるだけね。
【システム 女神システム起動】
【システム 特殊啓示を承認】
【システム 啓示を授ける者を、リストより指定して下さい】
俺が伝授を思考すると、女神システムが起動。
なので、使徒 レモンを選択してエンターを押した。
選択後に【はい】と【いいえ】が出てきので、選択肢は勿論【はい】を選択。
管理者システム
→女神システム
→特殊啓示
→使徒・眷属 伝授
- 職業伝授
- 自身の下位職の伝授
← 賢者 →⇖
啓示者リスト
← 使徒 レモン →⇖
【システム 指定された【使徒 レモン】へ、啓示を授け伝授しますか?】
【はい】⇖ 【いいえ】
そして、レモンちゃんに『天啓』を告げる。
『使徒レモンよ、貴女にインテレクト マジック マスター ハートを授けます』
レモンちゃんが神々しい光に包まれた。
俺は、スミレちゃん同様レモンちゃんに初歩の賢者スキルを教えた。
「どお? 使えそう?」
「うーん、難しいけど頑張る」
「ディーネちゃん、レモンちゃんはどお?」
「はい。リリー様のように、ディーネの真の姿を呼び出すのは難しいようですが、この小さな姿でしたら呼び出せるようです」
「うん、それなら良いかもね」
「はい。レモン様は元々、水・火・風・土の四元素の精霊達と相性が良いようで、魔法よりも召喚が得意なようです。微精霊は既に、レモン様は召喚できるようですし、魔法もディーネが教えて行きますので直ぐに憶えられるとかと思います」
「ディーネちゃん、レモンちゃんの事よろしくね」
「はい、リリー様」
まあ、最悪ディーネが頑張って憶えさせても憶えられなければ他にも手は有るからね。
ライムさんが俺の元に来た。
「レモン、嬉しそう。リリーちゃん、これから娘のこと宜しくね」
「あ、はい。でも、いつもと同じようにしてくれて構いませんので」
「そうなの?」
「はい。スミレちゃんのように私の家で住んでも良いですし、キノットさんの家でもかまいません」
「レモン、どうする?」
「レモン、ママの所にいるー」
「ライムお姉さん、そういう事です」
ライムお姉さんは、俺にお礼を言ってレモンちゃんと共にホテルに戻って行った。
「二人目の使徒に天啓授けちゃったけど、これって大丈夫だよね? スノーも何も言ってこなかったから、大丈夫でしょ。たぶん」
俺は、自信で自身に言い聞かせるように呟いた。
そして、スミレちゃんが戻って来たので二階の教室に戻ることにした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「スノー、私レモンちゃんを使徒にしちゃった」
スノー「二人目の使徒、おめでとうございますぅにゃん」
リリー 使徒って、禁則事項に当てはまらないんだ。
「でも戦艦は、どうしてなんだろう?」
スノー「リリー様、心の声が出ていましたぅにゃん」
リリー「あっ! 最近ユグちゃんと話しているから間違えちゃった」
ユグドラシル「リリー様、すみません」
リリー「良いの。ユグちゃん気にしないで」
スノー「い……ぅにゃん……」
リリー「えっ? スノー今何か言った?」
スノー「ぅにゃん」
禁則事項を思わず口にしそうで、可愛い仕草で誤魔化したスノー
であった。




