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冒険者学校に行こう【リリーSIDE】2

 スミレちゃんが、その名前を聞いた途端にとても気分が悪そうな顔をした。

 まさか黒い悪魔とは、そんなにも恐ろしいものだというのか? 

 しかし、この国には魔獣や魔物等が入れない結界が張られている。では、一体何だ? 

 俺は専門家であるシルクに話を聞くために『従者テレパシー』を使用する。



『「シルク、アイビー、今良いかな?」』

『「良いわよ」』

『「はい、リリー様」』

『「実はね、学校の寮に黒い悪魔がいるみたいなの。確か、以前シルクが話していたでしょ? それを思い出したの。それにシルクが、黒い悪魔は軍隊で討伐するって言っていたし……。私は、黒い悪魔が一体何なのか知らないしどうしたら良い?」』

『「そんなの、私とアイビーに任せたらチョチョイノチョイよ。リリー、今から行くから待っていなさい」』

『「あっ、シルク急ぐから……アイビーと一緒に、こちらに一瞬で来られるように強制テレポートさせるね」』

『「あっ! リリー、ちょっと待って!」』

『「うん……」』

『「キノットさんに、リリーの元へ向かう事を伝えたわ。アイビーも、連れていって良いみたい」』

『「うん。じゃー、シルクとアイビーを呼び寄せるわね」』

『「リリー、いつでも良いわよ」』

『「僕も、いつでも良いです」』



【アクティブ】

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

  特別スキル

  ・眷属・使徒・従者・信者間テレパシー

  ・眷属・使徒・従者・信者間テレポート

  ・ワールドマップテレポート

  ・眷属・従者・信者強制テレポート

   → 眷属・従者・信者の選択

      ← 従者 →⇖


  従者強制テレポートの選択

   - 第一強制テレポート者リスト

      従者  ← シルク  →⇖

   - 第二強制テレポート者リスト

      従者  ← アイビー →⇖

   +

  

 【指定された従者【シルク】、【アイビー】を強制テレポートさせますか?】


 【はい】⇖   【いいえ】

 

 

 俺は【はい】を選択し、強制テレポートを使用。

 シルクとアイビーを呼び寄せた。



「眼前が一瞬暗転したから少し驚いたけれど、このテレポート便利ね。アイビーの上に乗ろうとして飛んでいたけれど、リリーの眼前にアイビーと一緒にテレポートできるし」

「そんなことより、シルク? 黒い悪魔は、一体どんなものなの? それに、どう対処すれば良いのかな?」

「リリー、心配しなくても良いわよ。元々、森には黒い悪魔が多いのよ。それに、言葉の綾で思わず軍隊って言っちゃったけれど、何度も討伐してきた私とアイビーなら何匹いようと簡単に倒せるしね」

「リリー様、ユグもお手伝いします。黒い悪魔が苦手とするシトロネラとレモングラス等のハーブ系の強い香りを寮に充満させました。それに、黒い悪魔が出てくる場所全てに麻痺になる薫りを風の微精霊達と協力して放ちました。ですので、外に出た黒い悪魔は麻痺になります。シルク様とアイビー様には、風の微精霊達が麻痺の薫りが行かないように守護してくれます。ですので、シルク様とアイビー様は麻痺になった黒い悪魔の討伐をお願いします。そろそろ、黒い悪魔が出てきますわ」

「ユグちゃん、了解! リリー、後は私とアイビーに任せなさい」

「ワン、ワン」

『リリー様、僕たちに任せて』


「うん……」



 スミレちゃんも、俺と同じように不安な顔をしてシルクとアイビーの向かう寮の入口付近を見つめていた。

 シルクとアイビーが寮の前に行くと、黒い悪魔がその姿を現した。



「――――!」



 俺は、声にならない叫び声を上げたかと思うと気絶した――

 そう俺が予想していた通り、黒い悪魔の正体は奴だった。

 幼少の頃、田舎の祖父とお風呂に入ってた時である。

 祖母が外で風呂の湯を沸かすために薪を入れていた。



(レイ)ちゃん、湯加減はどげんな?」

「ありがとう、お婆ちゃん。ちかっぱ、気持ちよかよ」

「そうと、そりゃ良かったばい」



 俺は、手で湯加減を確認して服を脱いで裸になる。

 そして身体(カラダ)を洗ってから、五右衛門風呂の湯船に浮かぶ板を足でゆっくりと押してそっと浸かった。

 実はかなり熱い湯なのだが、風呂場に扉が無いので隙間風が入ってきて寒いのだ。

 田舎の夜は、真っ暗でしんとしており虫の声が聞こえてくる。

 それに、真っ暗な空に星がとても美しく見えるのだ。

 そうしていると、祖父が遅れて風呂場に入ってきた。



「湯加減は、どげんな? 熱かろ?」

「お爺ちゃん、気持ちよかよ」



 祖父は俺に笑顔を向けると身体(カラダ)を洗いだした。

 俺はその時、天井から忍び寄る黒い影に気づいていなかった。

 そして、天井から滴が顔に落ちて来た瞬間「カサカサ」俺の顔に……

 そう、ここから俺の記憶がなくなり意識を消失。

 気づいた時には布団の上で、祖父母が心配している顔が見えた。

 それ以来コードネームG(ゴキブリ)を見ると、顔と背中がぞわっとするようにはなったが気絶はしなかった。


 恐らく、心的外傷が強すぎて幼少期の俺は記憶を封印したのだろう。

 しかし、コードネームG(ゴキブリ)は俺が知るものよりも大きく数が半端ではなかった。

 その大きさは何と、16㎝……。

 怖くねえ! そんな物、俺は何ともねえよ! と思われる勇者は、想像してみるといい。

 6インチある、黒いスマホの様な黒光りするコードネームG(ゴキブリ)が大量にカサカサと音を立ててもの凄い早さで動き回る様を……悪夢である。

 そして、魂の奥底で眠っていた心的外傷の記憶が蘇り俺は意識を消失したのだ。



「リリーちゃん、リリーちゃん、しっかりして」

「リリー様、しっかりして下さい」



 スミレちゃんの声音とユグドラシルの声音が、俺の記憶にあるコードネームG(ゴキブリ)のノイズに邪魔された。



「「リリーちゃん? しっかり」」



 王と王妃の声音もかすかに聞こえてくるが、やはり俺の記憶にあるコードネームG(ゴキブリ)のノイズに邪魔された。



「リリー、しっかりしなさいよ」

『リリー様、僕とシルクが黒い悪魔を全て倒しました』



 シルクとアイビーの声音で希望の光が見えてきたが、俺の記憶にあるコードネームG(ゴキブリ)のノイズと光りが相まみえ戦いだした。



「リリー様、大丈夫ですぅにゃん?」

「リリー様、起きないと葵が悪戯をしますわよ」



 スノーと葵も、心配して来てくれたんだ。葵、ブレないね……。

 その時、希望の光が俺の記憶にあるコードネームG(ゴキブリ)のノイズに打ち勝った。



 【システム 魂の奥底にある、心的外傷に打ち勝ち耐性を獲ました】



「はっ! 私は……」



 【システム 限界突破LV2が発動 特殊耐性を獲ました】

 【システム 特殊耐性とは、耐性の他にその対象を自身の周りから忌避・敬遠・回避させます】



「「「「リリーちゃん、リリー様、リリー」」」」



 皆から、一斉に声をかけられた。

 システムが何やら耐性を獲ていたが、俺は双眸を開けると皆の覗き込む顔が見えた。



「ごめんね、皆心配をかけて」



 そういって皆の顔を確かめて、アイビーを見ると……



「キィヤァァァァァァ!」



 アイビーの口に、コードネームG(ゴキブリ)の足が見えたのだ。

 早くブレスド ピュリフィケイション セレモニーを放たないとアイビーの口が(ケガ)れる――その瞬間、俺は無意識下で『心情』でユグドラシルに訴えかけていた。



『「ユグちゃん、お願い」』

『「はい、リリー様」』



 ユグドラシルの心情が、俺の訴えに応えるようにシステムが稼働する。


 

 【システム 中偉聖霊第一王女ユグドラシルが世界の精霊と聖霊達に呼びかけを行いました……進化を受託】

 【システム 進化を受託し……範囲と威力が限界突破LV2により限界を突破】

 【システム 威力を大幅に向上し、範囲を国と全領地一体に拡大。更に拡大範囲を継続】

 【システム 中偉聖霊第一王女ユグドラシルにより、範囲拡大継続を止める依頼を受けました】

 【システム 中偉聖霊第一王女ユグドラシルの依頼を妥当と判断】

 【システム これ以上の範囲拡大継続を終了しました。範囲はフォレストムーン王国の全領土となります】

 【システム ブレスド ピュリフィケイション セレモニーが、天をも浄化する、聖なる浄化の光 アルティメット ピュリフィケイション セレモニー に進化しました】

 【システム 進化の過程で、追加能力を新たに獲得】

 【システム 追加能力はリリー・ヴァリーに関わりある大切な者達に、魔法陣が作動している間、自身の魔力の一部を分け与え一時的に急激な能力向上を付与します。同時に、全てに持続的な聖なる浄化の光りを齎します】



 眼前にシステムが畳み掛けるようにログを走らせると、天空を巨大な光りの魔法陣が覆い尽くす。

 目映い光に、シルクが空を見上げる。



「え? この天空の光りは一体何? まさか!」



 シルクは、気がついたように俺を見つめ目線を追う。

 すると、そこにはアイビーがいた。



「キャー! アイビー、口に黒い悪魔の足が付いているわ。アイビー、直ぐに、それぺってしなさい。ぺって」

「フワ? キャイン! ペッペッ!」

『え? うわー! ペッペッ!』



 葵がその様子をみつつ、俺の元に来る。



「先ほどから良くない者がこの地で悪さをしていましたが、ウンディーネが対処しているようですの。ですが、リリー様の力が私達の力を増幅しておりますので問題はないようですね。それにこの魔法は、黒い悪魔同様邪悪な者に打って付けですの」



 葵が、ケモミミをひょこひょこ動かし邪悪なる者を感じとったようだ。



「リリーちゃん、空が綺麗です」



 スミレちゃんが空を見上げてそう言うと



「スミレ、そうね。綺麗だわ」



 王妃も同じように見上げた。



「うむ。王妃の言うとおりだ。王国に光りがさしておる」



 王も王妃と同じように空を見上げた。

 その時、兵士が駆け込んできた。



「何事だ」

「陛下、火急の用件である為ご報告致します。只今、数え切れないアンデットの軍勢が王国を取り囲んでおります」

「何? 今直ぐに騎士団を向かわせろ!」

「王様、大丈夫ですの。リリー様を見て下さいまし」



 葵が、柔らかい表情で王に伝えた。俺はその時、無意識に右手を天に向けていた。



「ん? リリーちゃんか? ……天を刺す手を、振り下ろした」



 刹那、天空より浄化の光りがフォレストムーン王国を全領土を包み込んだ。



「王様、心配いりませんの。リリー様が、全てを終わらせましたわ。元凶であったアンデットエンペラーとドラゴンゾンビ、それにアンデットの軍勢約九百万体。全て浄化させましたの。序でに地獄の門も綺麗さっぱりと……」

「なっ、なんと……」



 浄化の光りで、アイビーを綺麗にしたつもりだが俺が心的外傷を受けた程の黒い悪魔である。

 なので、無意識で放った魔法であるが、あれ位のことで綺麗になったか心配だ。



「ウンディーネちゃん、お願い直ぐに来て!」



 と言って、俺はウンディーネを召喚。

 水色の召喚魔法陣が現れると、ウンディーネは姿を現した。



「はい、リリー様」

「アイビーのお口を、ウンディーネちゃんの綺麗な水で清潔にしてあげてお願いだから」

「はい、喜んで洗浄致しますねリリー様」



 こうしてリリーは、アイビーに光り魔法による浄化を行いウンディーネも召喚して水でも洗浄をおこなった。

 序でに、フォレストムーン王国の危機を無意識のうちに未然に防いだのであった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリーって、黒い悪魔苦手だったのね。気絶したから驚いたわ。私達は

    何度も森で見慣れているから平気なの」

リリー「私は、黒い悪魔が苦手じゃないシルクに驚くけれど……スミレちゃんも

    苦手みたいだし」

シルク「黒い悪魔ね、魔物でも魔獣でもないのだけれど、火や聖属性魔法に極端に

    弱いのよ。それに、火属性魔法で攻撃すると土に返るし、聖属性魔法で

    攻撃すると跡形もなくなるの。不思議ね」

リリー「黒い悪魔って、アンデットじゃないの?」

シルク「それがね、魔物や魔獣でないのに分類はアンデットじゃなくて黒の眷属の

    末裔が落ちた虫なのよ。変でしょ」

リリー「やっぱり、虫なんだ……」

    特殊耐性のお陰で、黒い悪魔に遭遇しなくなったリリーであった。

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