冒険者学校に行こう【リリーSIDE】1
俺とスミレちゃんが冒険者学校に着くと、寮の前に大きな掲示板があった。
掲示板を見ると、一番上に大きな文字で説明文が記載されている。
説明文によると【昨日の実技試験の結果クラス分けを行った】と記載されていた。
そして、その下には【一ヶ月後、他国の冒険者学校との交流試合を執り行います。交流試合の代表メンバーは選抜試験にて決定致します。尚、選抜試験は二週間後に執り行うので各自頑張るように】とも記載がされてあった。
「リリーちゃん、クラス分けがされているよ?」
「ほんとだ……」
あれ? 天狐八尾狐のロリ服セット(多彩色)に付いてくるケモミミ尻尾の毛が逆立ってる?
魔法を使用したせいかな?
「ごめんね、リリーちゃん? 人が多くて、見えないわよね?」
「スミレちゃん、大丈夫だよ。ほら、ちゃんと見えているので」
「……リリーちゃん? せっかく私が抱っこして見せてあげようと思ったのに、魔法を使って宙に浮くなんて、私の計画が台無しです」
「えっ?」
スミレちゃんの計画って、一体何だろう。
『「リリー様、スミレちゃんの気持ちがユグには分かります」』
と、ユグドラシルから『心情』が伝わってきた。
同時に、ユグドラシルの心情からスミレちゃんの心情が何となく理解できた。
けれど……
『「【恩返しがしたい計画】って、スミレちゃん気にしなくて良いのに」』
俺がそう心情で考えていると、ユグドラシルから
『「リリー様に、名前を貰った事、使徒にして貰えた事、天啓を授かった事。それらはスミレちゃんにとって、身に余る程の幸せなのです」』
と、心情が伝わってきた。
成る程、だからどんな些細なことでも良いから俺の手助けをしたいのか……。
『「リリー様、その通りです。ユグも、スミレちゃんと同じ気持ちなのです」』
と、ユグドラシルから心情が伝わってきた。
ならば、些細なことでも……
「ごめんね、スミレちゃん。頼めるかな?」
俺が小首を傾けてスミレちゃんに言うと、満面の笑顔で抱っこしてきた。
「リリーちゃん、見えますか?」
「うん。スミレちゃん、ありがとう」
ユグドラシルの心情から、スミレちゃんの心情を読み取った嬉しさが伝わってきた。
小さい幼女であれ重いのではないかと心配したが、勇者の力を手に入れたスミレちゃんは全くもって平気なようだ。
片手で俺を抱いて、掲示板を指さしたりもしていた。
掲示板のクラス分けを見てみると、A~Cにクラス分けがされており実技試験の成績順で決められているようだ。
成績順で上からAクラスに十五名、点数としては55点以上。
Bクラスは二十五名、点数としては54点から41点。
Cクラスは三十三名、点数としては40点以下となっていた。
俺も前の世界で、高校の入学時に数学の点数でクラス分けがされていたがAからEと冒険者学校のクラス分けより細かかった。
三年間常にAクラスだった俺は、工学部の推薦枠を貰い受ける事ができ見事○○大学工学部○○学科に合格できたのだけれどね……。
自慢じゃ、無いよ。
点数によってクラス分けがされていた学校だったので、思い出しただけなのだから。
本当だよ。信じてね。
ユグドラシルから「リリー様、ユグは信じます」と心情が伝わってきた。
「ユグちゃん、ありがと」
「リリーちゃん、どうしたの?」
抱っこしてくれている、スミレちゃんが首を傾けてきた。
「ううん。なんでもないの」
ユグドラシルは邪魔になるからと、姿を消しているので他の者からは見えないのだ。
A~C各担当クラスの教員名も張り出されており、教員達の冒険者ランクまで記されている。
三クラスの教員達の冒険者ランクは、共にBランク。
フォレストムーン王国にとっては、高ランク冒険者の部類に入る。
副教員達の名前と冒険者ランクも記載されていた。
副教員の冒険者ランクは、Cランク。
その他に、冒険者学校に携わる全ての職員はCランク以上で有ることが分かった。
それにしても変だ……。
俺がそう思っていると、スミレちゃんも感じたのだろう。
「ねえ、ねえ、リリーちゃん? 私達の名前が無いよ?」
「変だよね? 確か、カトレア先生が【今回私が担当した人達は優秀で、不合格者はなしよ】って言ってたよね?」
「うん。リリーちゃん、私もその言葉聞いたよ」
俺とスミレちゃんは、カトレア先生に合格と言われた。にもかかわらず、名前が掲示板の何処にも記されていない。しかも、カトレア先生当人の名前も記されていない。
「スミレちゃん。カトレア先生の名前も無いよね?」
「うん……」
えっ、冗談だよね? もしかして、カトレア先生は教員じゃなかったの?
俺は不安に思い、掲示板の隅々まで探した。
すると、本掲示板から少し離れた位置に小さな掲示板がある事に気がついた。
小さな掲示板には、俺とスミレちゃんの名前が記されている。
「スミレちゃん、こっちに書いてあるみたい」
「あっ、本当だ! リリーちゃん、良かったね。私、お父様に相談しようかと思ったよ」
スミレちゃん、今の発言は地味に怖い。
だってお父様に相談は、即ち国王に相談になるんだから……。
冗談だと思うけど、ニコニコした笑顔が余計に怖い。
小さな掲示板にはその他に、エレモフィラ君、アザレアちゃん、バレリアン君、ルビナス君、ブルメリアちゃんの名が記されて有る。
そして、Zクラスと書かれてあった。
担当教員は、Aランク冒険者の資格を持つカトレア先生と名前表記があり、安心した俺とスミレちゃんは校舎に向かう事にした。
校舎内の教室に行くが、Zクラスが何処にも無い。
というか、校舎にはA~Cの三クラス分の教室しかなかった。
同じクラスのエレモフィラ君達と偶然校舎で会ったため合流し、さらに手分けして探すことにした。
手分けして探すが、やはり何処にもZクラスはなかった。
俺達が途方に暮れていると、
ピン、ポン、パン、ポン!
「Zクラスの者は、至急校庭に集まる事! 繰り返します……」
と、カトレア先生の放送が聞こえてきた。
俺達が校庭にやって来ると、国王と王妃が校庭台の上にいた。
そのすぐ後ろに、宰相が控えおり王様達を守るように護衛騎士達が百名整列していた。
そして、宰相の後ろでカトレア先生が苦笑いをしている。
王が校庭台で手を上げると、騎士達が一斉に跪き頭を垂れる。
俺達も騎士達に習うように一斉に跪き頭を垂れた。
「皆の者、面を上げよ」
王の声音で、皆面を上げた。
俺とスミレちゃんも一緒に面をあげると、王妃が笑顔で小さく手を振っていた。
王と王妃が校庭台の上に特別に作られた椅子に座る。
すると、カトレア先生が
「失礼します」
と、礼を述べて校庭台の下に出てきた。
「皆さん、王立冒険者学校に御入学おめでとう。えーと……ご説明致します。本日は、国王様が激励とZクラスの為に専用の教室をご用意して下さいました。今から移動しますが、確認の為しばらくお待ちください。リリーちゃんとスミレちゃん、悪いけれどこちらに来てくれるかな?」
俺とスミレちゃんが校庭台まで行くと、カトレア先生は後ろに下がり、王国騎士団によって完全に囲まれた。
そして、王と王妃と宰相がやって来た。
更に、王が他の皆からは死角になっている場所を指さしゾロゾロと騎士達に囲まれ移動する。
「王様、どうしたの?」
「リリーちゃん、すまないな。宰相、説明してくれるか?」
「申し訳ございません、リリー様。予定していた工事が、間に合いませんでした。途方に暮れてリリー様の自宅に向かっていた所、キノット殿お会いしました。キノット殿にこの件を相談した所、キノット殿曰【リリーちゃんに作って貰った方が早いよ】と、気軽に言われましてな……」
「え? もしかして私に作れと……」
「烏滸がましい願いだと重々承知致しておりますが、怖れながら……」
宰相が騎士達の壁で周りから見えない様にして、俺に頭を下げてきた。初めは30度に腰を折り、話していくうちに90度に、そして恐れながらと言った時には土下座をしていた。
王と王妃も冷や汗をかいて
「リリーちゃん、ごめんね」
と謝ってきた。
一国の王と宰相がここまで謝るなんて、前代未聞だろう。
周りにいる騎士達まで、腰を90度曲げて俺に頭を下げている。騎士さん達、腰を曲げると見えちゃうから……。
スミレちゃんが、若干引いている。うん。スミレちゃん分かるよその気持ち。
別に構わないが、もっと早く教えて欲しかった。
相談してくれればもっと早く手をうてたのに。
俺がもっと早くと、口を開こうとして思い出した。あっ、ああ、そうか。
冒険者学校までの日数が無いのに、宰相は王に改装を任された。
宰相は悩むが、名案が思い浮かばない。
そして、宰相が俺に相談に来る前に――王と王妃が、毎日キノットさんのホテルに交互行く。
宰相の公務が、激務になる。貯まっている公務が有るにも拘わらず、隙を見て王と王妃がキノットさんのホテルに行く。
宰相の公務が、更に激務になる。とどめに、スミレちゃんが冒険者学校の試験に行くと我が儘を言う。
その手続きに追われ、更に更に宰相の公務が激務化する。そして今に至り、昨日は急にスミレちゃんが俺の家に泊まり相談が最後までできなかったと……。
これって、負のスパイラルだな。宰相が、可愛そうに思える。
宰相さん、それは仕方がないよね。俺には、なんとなく想像がついた。
「了解しました。宰相さん、どこに建設すれば宜しいですか?」
「リリー様、感謝致します。建設地ですが、少し行った所に学校の寮がございます。そちらに大広場が有るのですが、できればそちらにお願いしたいのですが……」
そう言えば、学校の寮の近くに大きな何も無い広場があった。
それに、寮と校舎までが異常に離れているんだよね。
恐らく、別々の地にそれぞれ建てた後その間にある土地が空き地となった。
なので、そこを買い取って無理矢理冒険者学校の土地にしたのではないだろうか?
そうでないと、説明がつかない。広い運動場かと思ったが、何も無いしね……。
と、その前にこの寮も何とかしたいな。
近辺マップ表示画面を開けて、確認する……人は誰もいないようだけれど、この小さなオレンジ色の光点は一体何?
寮のゴミ置き場や、調理場にも沢山存在する。いや、寮の至る所にいる。
ユグドラシルが
『「それは黒い悪魔です」』
と『心情』が伝わってきた。
「えっ、ユグちゃん? 黒い悪魔って?」
黒い悪魔と聞けば、俺の思い描くものは背筋がゾッとするコードネームGだ。
しかし、この世界にも存在するのだろうか?
確か、シルクが軍隊で討伐にあたると言っていた。
「リリーちゃん、どうしたの?」
「スミレちゃん、この寮に黒い悪魔がいるみたいなの。私は何なのかは知らないのだけれど、以前シルクが話していたの。なので、聞いてみるわね……」
「えっと……うん」
スミレちゃんが、その名前を聞いた途端にとても気分が悪そうな顔をした。
まさか黒い悪魔とは、そんなにも恐ろしいものだというのか?
しかし、この国には魔獣や魔物等が入れない結界が張られている。では、一体何だ?
それに、先ほどから天狐八尾狐のロリ服セット(多彩色)に付いてくるケモミミ尻尾の毛が逆立つのだけれど何故だろう? 毛を、整えても整えても逆立つんだよね。もぉー、気になっちゃう。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「あれ? あの貴族の子、今日も来てる」
次の日
シルク「あれ? 少し身形が良い子が、一人増えてる。誰か、目当ての子がいる
のかな?」
次の日
シルク「あれ? また、あの男の子達来てる。もしかして私? 私は、アイビー
一筋よ。うふふ」
次の日
シルク「あれ? また、一人増えてる。今度は、ライオン獣人の男の子ね」
次の日
シルク「あれ? またあの男の子達、三人組来てる」
自身に目線が来ない事に苛立ちを抑え、誰が狙いなのか三人組を
窺うシルクであった。




