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スノーとアイビー似のデザート

 王妃が城にある食物庫の食材を使っても良いというが、城の者でない俺が何度も頂いていいのか? 

 少し不安になったリリーであった。

 明日、城に来たときでいいのに王妃と王女が俺の手を引いて食材庫に案内してくれる。



「リリーちゃん、こっちよ」

「お母様、リリちゃんの手を引くのは私が致します」

「では、パープルも御一緒する?」

「はい」



 俺は後ろを振り向き、スノーに合図を行い『眷属間テレパシー』を行う。



『「スノー、急にごめんね。王妃とパープルちゃんと食材庫に行ってくるね。シルク達にもそう伝えてて」』

『「うにゃん」』



 料理人達が控える中、王妃と王女が俺の両手を引いて奥に突き進んでいく。

 見かねた料理長が料理人達に、王妃達が通れるように食材庫の奥まで道を開けるように指示をだす。



「王妃様と王女様の御前です。お前達、道をあけなさい」

「「「「はい」」」」



 料理長の指示に料理人達が声をそろえて従った。

 俺は料理人達が狭い通路の端で跪く中、謝りながら王妃達に手を引かれていく。



「皆ごめんね。少し食材を頂くね」



 俺はすれ違うたびに謝罪の言葉を伝えるが、なぜが皆笑顔だ。



「「「「ようこそ、お越しくださいました女神様。お好きな食材を、どうぞ心ゆくまで」」」」



 料理人達の心情が、俺にはよく理解できない。

 普通、城の食材は王族のために厳選しているので貴重だ。

 なのに……寧ろ俺に、食材を是非とも持って行って頂きたいという素振りに思える。

 不思議な光景が、食材庫の最深部まで続いた。



「リリーちゃん、好きな食材を好きなだけ持って行っていいわよ」



 王妃が両手を広げて食材を示した。

 食材庫の食材を物色していき、アイテムボックスに必要だと思われる物を入れる。

 振り返ると、まるで少女の頃に戻ったように笑顔で燥ぐ王妃が



「うふ、ふふふ。次はねー、リリーちゃんこっちよ」



 と言ってドレスを持って走り出す。



「はい、王妃様」



 俺が王妃に返事をすると、王女が



「クスッ。今日のお母様、凄く楽しそう。リリーちゃん、来てくれてありがとう」



 そう言って、王妃を追いかけ俺の手を引いた。

王妃が大きな扉に手をかけると、眩しい日差しが俺を向かい入れる。

 案内された場所は、城の大広間だった。



「えっと……」



 俺はここで一体何を? そう思っていると、王女が俺の隣で



「実はね、お母様リリーちゃんのお菓子の虜なの」

「そうだったのですね」

「リリーちゃんのお菓子を食べてから、リリーちゃんは今度いつ来るの? パープルは、知らないかしら? そう言って、居ても立ってもいられない様子だったわ」



 その事を聞いて、初めてパープル王女と側付きメイドが俺のスキルで作ったお菓子を食べた事を思い出した。

 王女や側付きメイドであれば、自身の大好きな食事を取る時でさえ優雅な身のこなしで食事をしてみせる。

 しかし、俺のお菓子を食べた二人は優雅でも何も無く一瞬にして食べきった。

 そして、もう無いの? と言う目で俺に訴えかけてきた。

 もう無いです。と断りを入れたときの、あの残念な表情がまだ記憶として新しい。



「昨日、副団長からリリーちゃんが今日来ると報告を受けてから、お母様はあの調子なの」



 成る程、数日前までは第二王女の事が心配で俺のお菓子に手を付けていなかった。

 しかし、王様から王女の病は完全に治り城に帰還すると連絡を受けたことで安心した。

 安心したことで、パープル王女が絶賛して残っていたクッキーを食べたと……。

 王妃と王女は、大広間の巨大テーブルの椅子に腰掛けると食事をする準備に入った。

 どうやら、王妃だけでなく王女も俺のデザートをご所望らしい。


 その証拠に、王妃と王女がテーブルの前でナイフとフォークを持って待っていた。

 いや普通王族足る者、いくら好きだとはいえテーブルに料理が運ばれてくるまではナイフとフォークを持たないでしょ? 

 しかし、幼い子供の様な表情の王妃と王女が俺のデザートを待っていた。

 現実を見てみよう……王妃や王女が可笑しいのではない。俺のスキルで作ったお菓子が可笑しいのだ。……駄洒落じゃないよ? ホントに。



「王妃様、パープルちゃん少し待ってね。今から作るから」

「「はい」」



 左右を見ると、王妃と王女だけではなかった。

 固唾をのんで見守っている様に見受けられるが、どことなくナイフとフォークを隠し持っている? いや、そんなはずは無いよね? 

 料理長自らが、皿を運んできた。



「女神様、お皿をご用意致しました」

「ありがとう」



 料理長を筆頭に、真剣な目差しで料理人達が見守っていた。

 どうやら料理人達は、俺が作る料理を見て食して研究したいようだ。

 自身の手に、皿を持っていた。ん? 皿まで持っているよ……。

 恐らく、王妃に料理の研究の為であれば貴方達も残り物でよければ食しても良いと言われたのかもしれない。

 その証拠に、料理人達が自身の手にしている皿を誰も咎めもしていない。

 若しくは、他の者も? いや。まさかね? 

 食材庫での、料理人達の歓迎はそういう事だったのか。納得した。

 確かに、料理人達がこれまでに見たことも食したこともないお菓子を、



「これは、女神様が作ったものよ」



 と言って王女から頂いて食せば、料理人達の行動は理解できる。

 しかし、王族が食している最中は待つことになるだろうな……

 離れた所に、別のテーブルを用意してもらったらそこにもスキルで作ったデザートを出せば王妃様も許してくれるかな? 

 俺はメイドと執事達を見据えると



「王妃様と王女様にデザートを食して頂いている間に、離れた場所に長テーブルを置いて頂いても良いでしょうか?」



 と伝えると、直ぐに用意に入った。

 王妃と王女が不思議な顔をしていたので、



「折角なので……別の席にもお菓子を作っていくので、よくして下さっているメイドさん達や執事の皆様にもと思いまして」

「リリーちゃん、それは良い思いつきね。貴方達、メイド達を手伝いなさい」



 そう言って王妃は、騎士達にも手伝わせていた。

 まあ、今は騎士ではなく俺専用の親衛隊メイドが警護に就いている訳だからね……。 

 俺は巨大テーブルに、次々とお菓子を出していった。

 果物がたっぷりで甘みを抑えた上品な味のフルーツタルト。

 造形美まで考えられた美しい模様の入った上質な味のクッキー。

 そして新たに作り上げたデザートは、朝のパンケーキを俺なりにアレンジした物――大好きなスノーとアイビーを模して作った俺の力作であるフワフワモコモコスペシャルパンケーキだ。


 特にスノーとアイビーをコラボしたパンケーキは、モチモチ食感の増したパンケーキ生地の上に、薄い生クリームと各種の季節のフルーツジャムを乗せて拘り、モチモチのパンケーキでそれを挟み、上と周りに大量の生クリームと各種季節のフルーツとチョコレートで立体的にスノーとアイビーを模したのだ。

 俺が作り終えるまで、王妃と王女だけでなくメイド長と親衛隊に王室料理人達迄ゴクリと喉を鳴らしていた。



「王妃様、パープルちゃん如何です?」

「スノー様とアイビー様がとても可愛く表現されていて素晴らしいわ。モチモチでシットリした生地に、甘さを抑えたフワフワな白い物も美味しいわね。それに、蕩けるジャムも甘みを抑えて美味だわ」



 王妃の感想に、王女も舌鼓をうつ。



「それに、お母様。上に乗せている高級フルーツも、酸味が丁度良くて本当に最高のお菓子ですね」

「お粗末様でした。まだまだ沢山あるのでどうぞ」

「「リリーちゃん、ありがとう」」



 王妃と王女が食べ終わると、次は料理長、料理人、それにメイドや執事達、皆の分である。

 俺は長テーブルの前に行くと、沢山の皿が置いてある前に行く。



「こちらで、皆様の分はお作りしますよー」

「「「「「はい」」」」」



 数々のデザートの中でも、フワフワモコモコスペシャルパンケーキは大好評だった。

 可愛いスノーの顔を模した幼虎キャラスイーツとアイビーの顔を模した幼狼キャラスイーツの各種を用意したので、どうやら動物好きの紳士淑女にも絶大な人気を誇ったようだ。

つまり、ここの行列だけが全然減らないのだ。



「こちらのフワフワモコモコスペシャルパンケーキは、少しお時間がかかります。もう少しお待ちくださいね」



 俺は、皆の分のデザートを一人ずつ手渡ししていった。すると、いつの間にか宰相まで来ていた。

 宰相に冒険者学校の裏に有る宿屋の裏の空き地を頂いても良いか確認すると、直ぐに手続をしてくれた。



「リリー様、我々もお手伝い致します。作ることは出来ませんが、手渡すことなら」



 そう言って、料理長を筆頭に料理人達とメイドと執事達が手伝ってくれた。



「皆、ありがとう」



 しかし、一度に十皿分作っても行列は減らなかった。

 俺は、スノーに『眷属間テレパシー』を行った。



『「スノーごめんね。皆どうしているかな?」』

『「親衛隊の方がご用意頂いたお部屋で、皆寛いでいます。うにゃん」』

『「そおなんだ。こちらは、まだ時間がかかりそうなの」』

『「お手伝いに行きましょうか? うにゃん?」』

『「いえ、いいわ。お菓子作りしているから、シルクが来るとちょっとね……」』

『「うにゃん……」』

『「悪いけれど、先に宿に戻ってもらってても良いかな? でも、シルクにはお菓子の事内緒よ」』

『「うにゃん」』



 俺がデザートを作りつつ眷属間テレパシーを行っていると



「リリーちゃん、ここからは私達がお手伝いするね」



 と声をかけられ、振り向くとそこにはパープル王女と親衛隊のメイド達がいた。



「えっ? いえ、王女……」

「めっ! よ? 王女様って、言ってはダメです! 私も女神様って言うよ?」

「……ごめんね、パープルちゃん」

「いいの。それにね、疲れているはずの宰相がリリーちゃんのお菓子を食べて元気になったの。なので、執務はお母様と宰相に任せてきたわ。お母様はリリーちゃんの後ろ姿を名残惜しく見つめていたけれど、宰相に連れて行かれたわ」



 確かに、甘い物は疲れを取れると言うが……

 不思議に思いつつも、パープルちゃんと親衛隊のメイドの皆様にも手伝ってもらうことにした。



「料理長、皆様、各担当のお仕事をお願い致します。メイド長もメイド達に指示を」

「「「「「はい、パープル王女殿下」」」」」



 料理長や料理人、それにメイド長率いるメイドと執事が各担当部署に戻っていった。



「リリーちゃん、パンケーキ凄く美味しいですよね。私、毎日食べたいです」



 パンケーキはかなり好評で、今借りている宿屋でも簡単な物なら出していると言うと、王女が毎日王城へ届けて欲しいと言ってきた。

 しかし、美しい王妃と王女が太ると王や王子が悲しむと言ってやんわりと断った。



「そうですか、残念です」



 王女が余りにも残念そうな顔をしていたので、前に約束した甘みを抑えた上品なフルーツタルトとパンケーキを交互に十日に一度位なら、俺が作った物を宿屋に迷惑がかからない程度になら提供しても良いと言うと破顔して喜んでいた。



「でも、リリーちゃんの所に行けば……」

「えっ? パープルちゃん何か言った?」

「何でもないです」



 王室料理人達が味を研究させて欲しいと言ってきたので、宿屋の売り上げに貢献して貰う為に宿屋のパンケーキの味の研究なら良いですよと答えた。

 俺がパンケーキの行列を横から覗いてみると、また凄い事になっていた。



「パープルちゃん? 提案なんだけれど、今から女性限定でも良いかな? このままだと明日になるかも?」

「うーん。あはは、凄い行列ね。リリーちゃん、ちょっと待ってね。メイド長!」

「はい、只今! 皆様、此より通達開始!」

「「「「「はい!」」」」」



 流石に城全ての人は無理と思ったので、残りは女性限定でパンケーキを提供する事にした。

 それにしても、メイド長率いる親衛隊の仕事は早い。

 あっという間に通達を終えて、残りは女性の行列のみとなった。

 出来るだけ早くパンケーキを作り、パープルちゃん率いるメイド長と親衛隊で手渡ししていったが帰る頃はもう夕方近くだった。

 城から宿屋に帰ろうと準備をしていると、宰相がやってきて買取りした土地の権利書や土地範囲を示す見取り図をくれた。

 宰相にお礼を伝えて宿屋に戻ると、丁度ライムお姉さん達が宿屋のお客様の食事を終えて片付けをしている所だった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「ねえ、リリー? 私に隠し事してない?」

リリー「シルク、急にどうしたの?」

シルク「リリーが帰ってきたら、甘くて美味しそうな香りがしたの」

リリー「シルクって、鼻も良いの?」

シルク「当然よ! それに、私達が城で待っている間も甘くて美味しそうな

    香りがしたわよ」

    グゥゥゥゥゥゥ! 

シルク「想像しただけで、お腹が鳴ったわ……。リリー、十皿で良いわよ」

リリー「え? ……」

    結局、シルクにスノーとアイビー似のスペシャルパンケーキを

    それぞれ十皿ずつ作る事になったリリーであった。

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