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ライムお姉さん達に恩返しをしたい1

 宰相にお礼を伝えて宿屋に戻ると、丁度ライムお姉さん達が宿屋のお客様の食事を終えて片付けをしている所だった。



「リリーちゃん、お帰りなさい」

「ライムお姉さん、ただいま」

「うふふふ。シルクちゃん達が首を長くして、待っているわよ」



 俺はライムお姉さんに笑顔を向け、食事処の入口に入る。

 そして、いつものように奥の席まで行くとスノー達が待っていた。



「ただいま。皆遅くなってごめんね」



 俺が顔を出すと、一番初めにスノーが俺の元に擦り寄ってきた。



「おかえりなさい。うにゃん」



 スノーに続き、アイビーも足下に来た。



「ワン、ワフ。ワン、ワフワフ。クウーン。」

『リリー様、おかえりなさい。スノー様に、お城でのことお聞きしました。大変でしたね』

 

「あははは。まあ、色々とね」



 スノーとアイビーを抱き上げて、テーブルの方に向かうと



「ふぇ? リリー、帰ったの? おかえり」



 と、何処からか聞こえてきた。テーブルの上を見渡すが、誰もいない。



「え? シルク、どこ?」

「ここよ、ここ、ここ。私、今日はアイビーに乗らずに飛んでいたから、もうお腹ペコペコなの」



 声のする椅子を、後ろに引くとシルクが仰向けになってお腹を出して大の字で寝ていた。



「シルク、そんなところでお腹出して寝ていたら風邪引くよ?」

「リリー、違うわよ。お腹空きすぎて、お腹摩ってたの。もう、音もしなくなったわ」

「ワフ? ワオーン、ワンワンクウーン」

『シルク? お城で、スノー様と僕のお菓子箱全部平らげていたよね』


「そんなの遠い過去の話よ」



 シルク専用に、お腹がかなり膨れるお菓子なんだけれど、どうやら改良が必要のようだ。

 まあ、シルクのお腹に見合うお菓子は無いかもしれないが……。



「ワフワフ、クウーン。ワオーン、ワンワン」

『最近太り気味で、今着てる服もピチピチだよ。毎日運動の為に、もっと飛んだ方が良いよ』



 シルクのお腹周りは、ピチピチには見えないがアイビーなりに心配しての事なのだろう。



「レディーの体形を観察しているなんて、アイビーはエロ犬ね、エロ犬!」



 俺はいつものシルクとアイビーの喧嘩するほど仲が良いと、和む会話に微笑ましくしていた。

 シルクのお腹の状態は不明であるが、今日はお城で色々と食材を貰えた。

 お菓子作りが終わった後に、料理長達が気を利かせて食材を沢山持ってきてくれたのだ。



「今日は、食材をたっぷり貰ったので豪華な夕食にしましょうか。皆も、どうかな?」

「うにゃん」

「ワンワン、ワオーン」

『リリー様の料理、僕大好きです』


「リリー、賛成よ!」



 俺はスノー達と会話しながら、テーブルに沢山の料理を作り皿に盛っていった。

 キノットさん達も、片付けを終えて奥に来たので一緒に食べることにした。

 それに、俺が作り置きしていた昨日の夕食の分があるのでそれも持ってきたようだ。



「キノットさん、ライムお姉さん、お仕事お疲れ様です。レモンちゃんも、お手伝いお疲れ様。皆で食事しながら、色々と宿の事も話がしたいですけど良いですか?」

「リリーちゃん、勿論だとも。宿の改装の件は、俺達家族の生活の話に繋がる重要な事だからな」



 俺は以前より考えていた改装の件と、キノットさん達に自身のスキルを授ける重要な条件を満たすために話すことにした。



「少し理解し難い事柄が多いが、俺達家族はリリーちゃんを信頼している。それに、大浴場の件もある。宿屋まで改築してもらうとなると……いや、温泉の恩すら俺達は返す事すらできないでいる。なのに、俺達はリリーちゃんの好意に甘えても良いのか?」

「いいえ、私達はキノットさん達の宿屋に来ることが出来て本当に幸せなのです。シルク、スノーやアイビーにも、よくしてもらっていますし……」



 キノットさんとの話は長く続いたが、俺が良ければとキノットさんが納得してくれた。

 と言いますか、キノットさん達家族から何度もお礼を言われ感謝された。

 それに、宿屋の裏に有る広大な空き地も宰相に言って購入した事も伝えた。

 キノットさん夫妻は、驚愕の連続で少し疲れた顔をしていたが……。

 で、ここからが本題だ。どう話をしよう? 

 俺の浅はかな考えでは、お伽話として話を進めるしか方法が浮かばない。

 いや、もう既に俺自身の頭はてんやわんやしていた。



「これはある地域で信仰されている女神様の話なのですが、その女神様が信頼し絆を深め、強い信仰心を持った信者は、その女神様の一部の力を授けられるというお伽話があるんです。それが、おかしな話で私と同じリリー・ヴァリーと言う名なんですよ。なので、その女神様を信じ信仰して頂ければ、私も同じ名を持つ者として嬉しいのです」



 実は、スキルを授ける条件が曖昧で色々と試してみて、キノット夫妻には強い信仰を持った信者になってもらいたかったのだ。

 強い信仰を持った信者になる事で、何かの条件に当てはまればと――取得した下位の能力(スキル)の一部を伝授し一定期間の時間制限がある条件に当てはまるか――若しくは信頼、縁、絆、刎頸の交わりが強く、信仰の強い信者が使徒で無い場合に当てはまれば、劣化した職やスキルを授けられるかもしれないと考えたからだ。

 但し一定期間の時間制限があるものに当てはまった場合は注意が必要だが、自身の神級シェフのスキルを伝授できればパンケーキやカレーライスなど、食事処に新たな風を吹かせることができる。

 劣化したスキルを詳しく調べていくと、神級シェフの場合はレシピを伝授する事によって完全再現は不可能ではあるが、限りなく似た味などを再現可能である事をがわかったのだ。



「やはり、リリーちゃんは女神様だったか……」

「薄々は感じていましたが、リリーちゃ、いえ、女神リリー様が気づかれない様にされていましたので……私達親子は、もしかして恐れ多い事をしていたのではないでしょうか?」



 キノットさんが両膝を付いて頭を垂れて女神様と言って震えており、ライムお姉さんは涙を流して両膝を付き、祈るような眼で訴えかけてきた。

 シトロンちゃんをあやしていたレモンちゃんは、両親の異常な状況を見てシトロンちゃんを抱きながら狼狽えていた。



「キノットさん、ライムお姉さん、レモンちゃん違うけんね。女神様は、お伽話での話ばい。それに、うちと名前が同じだから共感しただけばい」

「「と、とんでも御座いません。女神様!」」



 キノット夫婦の動揺は晴れず、俺の方が逆に狼狽えて



「あの、えっと……私が……私がね、女神という話じゃないの」



 と言ってオロオロしてしまった。

 俺が右に左にと移動して、キノットさん達の前で狼狽えていると



「リリー、もう観念しなさい。貴女ね? 大浴場とか温泉とか、この世界に存在しない物を一瞬で作ったでしょ?」

「だって、あれはお風呂にどげんしてん入りたかったんやもん」

「入りたかったんやもん、じゃないでしょ! 普通はね、温泉をスキルで意図も容易く一瞬にして創造するなんて出来やしないわ。つまり、神や女神の中でも創造を司る神以外には不可能な事なのよ?」

「そうなの?」

「はぁぁぁぁぁぁ……私、リリーの天然について行けないわ」



 俺はスノーを抱いて肉球をプニプニしながら、シルクに叱られてシュンとしていた。

 すると、ライムお姉さんが撫でてきた。



「女神様を撫でるなんて、本当は恐れ多い事ですけれど……リリーちゃんが叱られている姿を見ていると、滅入ってしまいそうになるわ。やっぱり、リリーちゃんは笑顔でいるのが一番ね」

「ライムお姉さん、ありがとう。私、女神やけど根がこんな感じやけん。前みたいに接してくれた方が嬉しいばい。グスン……」



 俺はライムお姉さんに撫でられて、一気に感情が高ぶり少し泣いてしまった。

 シルクが俺を見てから、キノットさん達を見据える。



「リリーたら、仕方が無いわね。キノットさん、ライムさん、レモンちゃん、私からもお願いよ」

「お願いします。うにゃん」

「クウーン」

『お願いします』



 キノット夫妻とレモンちゃんが、顔を見合わせる。

 シルクが佇(タタズ)まいを正して、改めてキノットさん家族に伝える。



「まだ混乱しているかもしれないけれど、リリーの性格がこんな感じだからね。キノットさん、ライムさん、レモンちゃん、私も改めて言うわ。女神リリー・ヴァリーの従者として、以前同様にとは難しいかもしれないけれど……。リリーと普通に接してあげて。お願いよ。その方が、私も助かるし……」



 キノットさんはまだ少し緊張していたが、ライムお姉さんが俺を膝の上に乗せて食事を一緒に食べだした事で段々と落ち着きを取り戻していった。

 俺は、キノットさん夫妻に真実を伝えた。

 すると、唐突にシステムが起動した。



 【システム 女神システム起動】

 【システム キノット・ライム・レモン・シトロンの家族愛が、リリー・ヴァリーに大きく影響を及ぼしました】

 【システム 隠しステータス、信頼と親密度が一定量を超えました】

 【システム 先の四名が、リリー・ヴァリーへの強い信仰を持った信者となりました】

 【システム 先の四名の正式認可を、リリー・ヴァリーに承諾として確認致します……】

 【システム 【はい】 【いいえ】を選んでください】



  システムさん、勿論【はい】を選びます。



 【システム 承諾を確認致しました】

 【システム 信頼と親密が限界突破スキルにより、限界突破しました】

 【システム 信頼と親密が絆へと進化を試みています……成功しました】

 【システム 強い絆と強い信仰を持った信者として、キノット・ライム・レモン・シトロンが認められました】



  唐突にシステムが起動したのは驚いたが、キノットさんの家族全員がリリー・ヴァリーに強い絆と信仰を持った信者となった。

 強い絆と信仰を持った信者となった事で、レシピを伝授する事によって完全再現は不可能ではあるが、限りなく似た味などを再現可能である。

 レシピ伝授は、味は落ちるが材料を俺が一旦途中の工程まで用意する事で良質の材料に変化し、それをキノットさん達がレシピ通り調理する事で美味しい料理が出来る。


 味は落ちるというのは、表現が可笑しいかもしれない。

 特殊な能力である、蓋を開けて食べるまでは丁度良い温度であり、料理として一切劣化せずに新鮮で、特別な効能がつかないだけである。

 効能と言っても、俺が知っている効能は美味しすぎて中毒のように依存性が少しだけあるだけである。

 それに、レシピ伝授はキノットさん達自身の力で、一から作る事に近いと言えるだろう。


 明日からは、しばらく俺が暇な時にでもスキルで材料を良質な物に変化させ、キノットさん達の味でパンケーキを作る事となった。

 料理も工程はかなり違うが、出来たてであれば少しは俺が作った物に近い味はしたのでお客様が慣れれば……恐らく、問題はないだろう。

 皆で食事を楽しみ、宿屋の改装の件と裏の広い空き地の件は改めて話をする事となった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー、私って妖精の王女よね?」

リリー「うん」

シルク「でも、リリーの従者よね?」

リリー「うん」

シルク「この国って、女神の従者と妖精の王女……どちらが凄いの?」

リリー「私に聞かれても……」

    この国の特性として迷いの森の妖精王も女神同様崇められている為

    結局分からなかったリリーとシルクであった。

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