秘密の理由
「どうして、その名を・・・。」
加奈は唖然とした。そしてハッとする。
「眼鏡!」
部屋に入ったいつもの癖で眼鏡を外していた。
(しまった。いつもの癖で。)
「どういうこと?」
勇二は聞いた。
「そ、の・・・。」
(ばれた。)
「なんで加奈の部屋に信濃夏帆がいるんだい?」
「えっ?」
「それに加奈と同じ格好して。」
「・・・。」
「それに加奈と同じ声・・・あれ?」
「・・・。」
「どういうこと?まさか。」
「今気づいたの?」
「えっ?!もしかして。」
「そうよ。私は信濃夏帆として、グラビアアイドルしているわ。」
「えーっ。」
勇二は驚いた。
そして、二人は加奈の部屋に入った。
「驚いた。まさか、加奈がグラビアアイドルの信濃夏帆だなんて。」
「まあね。」
「どうして隠してるんだい?」
「それは、中学生の話なんだけど、私はよくもてたの。」
「まぁ、そんなに綺麗かったら。」
「有難う。それでよく女子から苛められてさ。」
「あぁ、よくある話だね。」
「それで実家から少し離れた場所に引っ越ししてこの高校に来たの。」
「成る程。グラビアアイドルは?」
「それは一度少し芸能界でデビューしてみたかったの。」
「成る程。」
「小遣い稼ぎにもなるし。」
「小遣い稼ぎどころじゃない気もするが。」
「それで男子って見た目良い女子が好きじゃない。」
「まぁね。」
「だから、地味に静かに暮らしてたの。」
「成る程。」
「けど、貴方は違った。」
「?」
「地味な私にも優しく接してくれた。」
「・・・。」
「それから初めて話しかけたら、話返してくれて、嬉しかった。」
「・・・。」
「暫く話しかけても、嫌がらず接してくれたから、この人は見た目で判断する人じゃない、と思ったわ。」
「・・・。」
「私は恋愛するなら、私の外見ではなく、中身と思っているの。」
「そ、そうだね・・・。」
「嫌いになった?」
「まさか!僕は君の内面に惚れたんだ。けどまさか胸の写真が加工だなんて・・・。」
「逆よ逆。さらしを巻いてるの。胸はあるわ。」
「あっ、そうなんだ。後、実は美人さんなんてビックリしたなぁ。ちょっぴり嬉しいけど・・・。」
「貴方に美人って言われるのは嫌いじゃないわね。寧ろ嬉しい・・・。」
「加奈・・・。」
「勇二君・・・。」
その時、着信音が鳴った。
「げっ、母さんからだ。」
「あら、もうこんな時間。」
「急いで帰らないと。」
「勇二君。」
「何?」
「私の秘密、周りには言わないで。」
「あ、うん。分かった。じゃあね。」
「うん。」
勇二は母と話し終わった後、ふと思った。
(加奈が信濃夏帆だなんて。学校でバレたら大騒動になる。)




