初めてのデート
「勿論だよ。人間だから秘密ごとくらいあるよ。」
「良かったわ。有難う。宜しくお願いしますね。」
そして二人は無事に付き合うことになった。
とは言っても、別に変わること無く、教室で小説談義をするくらいだった。ただ星野の距離感はかなり近くなった。
ある放課後。
「ねぇ。小林君。」
「どうしたの?」
「『白壁の山』を読んだことある?」
「いや、ない。」
「これ、ファンタジー小説なんだけど、面白いのよ。」
「そうなんだ。ファンタジー小説はあんまり読まないから。」
ふふ、と言いながら、小林に寄り添った。
地味な女子と小林が仲良くなっても、別に妬かれることも無かった。
そして、付き合って一ヶ月が経つ時、小林は思った。
(星野さんとデートがしたい。)
小林は星野さんを今週の土曜日にデートに誘ったが、
「ゴメンなさい。その日は用事で。」
小林は星野に断られた。
「けど、来週なら大丈夫よ。」
で来週、二人は公園でデートをした。
相変わらず星野は服も地味だった。
「素朴な私服だね。」
「えぇ。」
二人はくっ付いて歩いた、と言うか星野がぐいぐい寄ってきた。
「星野さん、近い。」
「良いじゃない。恋人同士なんだし。」
星野は鼻歌を歌っていた。
腕が胸に当たっているのだが、まな板のような感じで、少し痛かった。
二人して幸せそうだった。
「ねぇ。ボート漕がない?」
「うん。いいよ。」
池にあるボートを小林が漕いだ。
池の真ん中辺りに差し掛かった時、
「ねぇ。私の秘密知りたい?」
「知りたくないって言うと嘘になるけど、星野さんが話したい時で良いよ。」
「有難う。小林君。」
小林は漕いでいたら、
「下の名前で呼びあわない?」
星野は言った。
「えっ?」
小林はドキッとした。
「えっ、良いけど・・・。」
「有難う。勇二君。」
「加奈さん。」
「私には加奈って呼んで。勇二君。」
「加・・・奈。」
小林、もとい勇二は赤面した。
「有難う。勇二君。」
加奈は微笑んだ。
喫茶店に行って、二人でご飯を食べた。まだ時間があったので、漫画雑誌を見ていると、
「あっ、えーと、信濃夏帆だ。」
勇二は言った。すると、加奈はドキッとしたが、勇二は気づかなかった。
「最新、男子の間で人気なんだよなぁ。」
勇二は独り言を言っていると、
「この子どう思う?」
加奈は勇二に聞いた。
「どう思うって?まぁ、可愛いとは思うけど?」
「へぇ。そうなんだ。」
加奈はしょぼくれた。
勇二は、?となった。
「どうしたの?」
「男はやっぱり顔を言うんだ。」
「えっ?」
勇二はドキッとした。
「可愛いけど、現実的じゃないというか、高嶺の花というか。」
何一つフォローになっていなかった。
「私は地味だもんね。」
勇二は引きつりながら、目を反らした。
「でも君は性格が魅力的だから、僕は外面より内面かなぁ。」
「そうね。勇二君はそういうタイプだもんね。」
「勿論、そうだよ!」
勇二は強く意志を持って言った。




