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そのくっく★くっく~♦♫♦・*:..。♦♫♦*゜¨゜゜・*:..。♦

相変わらず?ですが、今回は別の意味で、飛んでます


しかし、R指定は全年齢ですよ✽(*´∀`*)



 誰かが、酒樽を抱えて真の家に向かって歩いている。

 歩くたび、ほろほろと樽の中で酒が歌う。

 ガニ股歩きでそれでなくとも着古した褲褶こしゅうをさらにだらしなく着崩して、無精ひげとぼさぼさの頭でもまるで頓着しない大柄な男、といえば、界隈では一人しかいない。

 勿論、琢だ。


「せっつぶ~ん、せっつっぶ~っん、たいしょーんちでは、ごっちそ~う、ごっちっそ~うっ」


 上機嫌な琢は、酒の唄に合わせて下手くそな鼻歌をふんふんふんふんを沿わせてやってきた。


「お~い、大将! 大将、居るかぁ~?」


 みっともなくくつろげたの衿の隙間から、琢は腕を突っ込んで脇腹あたりをぼりぼりと引っ掻いている。


 今日は雑節の一つ、節分の日である。

 様々な行事があるのだが、その一つの『恵方巻き』と呼ばれるものがある。

 七福神にみたてた七種の具の太巻き寿司を、無病息災などを願いながらつくる。そしてそれを恵方、つまりその年の縁起の良いとされる方角に向かいながら食べるのだ。

 この時、願い事を胸の内で唱えながら、しかも食べきるまで一言も発せなければ成就する、とされている。


「お~うぃ、たいっしょ~うぅ!」


 肩の上に酒樽を担ぎ直して、空いた方の手で今度はへそのあたりをボリボリと音を立ててかく。

 

 独り身の琢は、基本一人で食事を取る。

 当然といえば当然なのだが、こういう、何かご馳走が振舞われそうな節会的な日は、呼ばれもしないのに真の家にやってくるのである。

 手土産に持ってきている酒は、勿論、自分で消費する分だ。


「大将、居ねえのかあ~!?」


 どんなに声を張り上げても、ウンともスンとも反応がない。

 もしかしたら、家族総出で買い出しに行っているのかもしれない。

 真の家族は現在、真と薔姫、真の母親であるこうと妹のあい、そして芙をはじめとした蔦の一座の者、合わせて10人ほどだ。さほど大所帯ではないが、幼いながらも良妻である薔姫も真の母である好も、料理の腕は特筆に値する万金の価値ある女人だ。

 節会の祝膳となれば、毎回、競い合うようにご馳走が作られており、そのおこぼれを狙った琢のような人物が暇を見つけてはホイホイとやってくるようになっていた。


「ま、買い物ならしゃあねえな。そんなら、ちょっくら、上がって待たせてもらうとすっか」


 勝手知ったる上に遠慮のない琢は、真の部屋に近い庭から屋敷内に侵入し、縁側から上がり込んだ。


 汚れた足の裏をふき清める事もなく、どすどすと音を立てて歩いていると何処からかぼそぼそとした声らしきものが聞こえてきた。

 耳をすませると、確かに真と、そして薔姫の声だ。


「ん? 何でえ、大将、いるんじゃねえか……」


 方向転換をすると、担いだ酒樽の中身が耳元でたぷたぷと音を奏でる。

 たっぷんたっぷん、と酒が踊り波打つ音を聞きながら、琢は声のする方へと声を掛けようとし――


 ――ん!?


 とボソボソと聞こえてくる声に耳を欹てた。



 ★★★



 ねえ、我が君、これでいいの?


 ええ、はい、大丈夫ですよ。姫はやはり手つきが上手いですねえ。いい感じです。


 やん、我が君の、なにそれ、おっきい!


 え? そうですか?


 うん……だって、それじゃお口に入らないわ。


 そうですか? 気にした事はなかったのですが……そんなに私のは大きいですか?


 うん、お義理兄上あにうえ様のより、うんと大きいわよ? それに、もっと黒くて、太くて……。



 ※ ※ ※


 ――な、なにぃー!? な、なななななな、何が起こってるんでぃ!?


 克は真の部屋のと口付近の壁に張り付た。

 胸がドキドキと高鳴り、目がキラギラとしてくる。


 ――な、な、な、何してんだ大将!?



 ★★★



 やだ、なんだか我が君の触るとベタベタする……なあに、これ?


 これですか? いや、今にこれほど美味しいものはない、って思えるようになりますよ。というより、そんなに指で撫でないで下さい、流石に恥ずかしいです。


 やん、もう。私は思わないもん――や、いた!


 ひ、姫!? すいません、無理させすぎましたね、痛かったですか?


 う、うん、先を入れる時、ちょっと……で、でも、大丈夫だから……。


 先が固くてコリコリしてる方が具合が良いはずなんですが……。


 うん……でも、なかなか入らなくて……。



 ※ ※ ※



 ――い、いいい、入れる!? 入れるって何をよ!? マズイ! ひっじょーにマズイ!


 壁に喰い込むほど耳を押し付けてみたが、その後の会話はさらにもそもそと小さく窄んでいくばかりで、全く聞き取れない。


 ――ココで聞こえなくなりってアリか!? アリなのか!? ちくしょー、気になるじゃねえか!


 はあはあと息が上がって胸が苦しくなるなか、やっと聞き取れる声が聞こえた。



 矢張、私がやりますよ。姫はこう、気持ちを楽にして下さっていればいいんです。 


 いや、私がやりたいの! ちゃんと入れられるもん!



 ※ ※ ※



 会話から、部屋の中で行われている、であろう、真と薔姫の姿、を想像して、琢はブバッ! と鼻血に塗れつつ叫んだ。


「まったー! 大将、待った! い、い、幾ら二人が祖霊に認められたちゃんとした夫婦といってもだ! いけねえ! そりゃいけねえ! 姫奥さんはまだ子供だろ!? いっくらたまりにたまってるとはいえ、手ぇ出しちゃいけねえ! せめてあと、4~5年我慢しときな大将!」



 

 酒樽を放り出し、琢は勢いよく戸口を開けた。

 廊下に酒がぶちまけられて、濃厚な甘い酒気が一気にむわりと漂う中、仲良く太巻き寿司と柊鰯を作っている最中だった真と薔姫が、何事かとぽかんと口を開けて動きを止めていた。




ええ、恵方巻きと柊鰯を作ってただけですが、なにか?

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