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第1話 「絶対零度の剣」

### 前書き — 最後の力を巡る物語


誰もが、平凡な日常の中で生きている。


少なくとも、ゲイリー・ツキナワはそう信じていた。


十四歳。人付き合いが苦手で、学校では孤独な時間を過ごすことの多い少年。彼の毎日は退屈で、特別な出来事など何一つないように思えた。


しかし、ある日、彼は一本の不思議な刀と出会う。


その出会いをきっかけに、少年の日常は少しずつ変わり始める。


青く変わった瞳。

謎めいた老人。

そして、世界各地で発生する不可解な異常気象。


それらはすべて、やがて訪れる大きな災厄の前触れだった。


これは、伝説の剣に選ばれた少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、未知なる敵に立ち向かっていく物語。


まだ自分の運命さえ知らない少年が、最後に手にする力とは何なのか。


そして、彼を待ち受ける未来には、いったい何が隠されているのか。


さあ、物語を始めよう。


これは、ゲイリー・ツキナワと、最後の力を巡る冒険の記録である。

ゲイリー・ツキナワ、十四歳。


一見すると、どこにでもいる普通の中学生だった。


留年しており、もう一度、中学一年生をやり直している。


毎日は単調で、変化がなく、そして何より――ゲイリーにとっては、とても退屈だった。


しかし、彼には他の生徒とは少し違うところがあった。


極度の人見知りだったのだ。


自分から話しかけることが苦手で、新しい友達を作ることも得意ではない。


クラスの中で自分の居場所を見つけることも、彼にとっては簡単なことではなかった。


別に、周囲から嫌われていたわけではない。


ただ、いつもそこにいるのに、誰からも気づかれない。


そんな存在だった。


以前は、親しい友達が二人いた。


一人は女の子。


もう一人は男の子。


休み時間には三人で話したり、好きなことについて語り合ったりしていた。


だが、前年――二人は進級し、別の学校へ進学してしまった。


ゲイリーだけが、その場に取り残された。


それからというもの、休み時間は静かなものになった。


会話もほとんどなくなった。


そしてゲイリーは、以前にも増して俯きがちになり、一人でいることに慣れていった。


そんな彼のその日の朝は、特に退屈だった。


「では、このグラフを見てください……」


教壇の前で教師が淡々と説明している。


授業は――**気候学**だった。


ゲイリーは片手で頬杖をつきながら、教室の時計を見つめていた。


時計の針が、まるで止まっているように感じる。


教師は、地球の気候が近年になって急激かつ不規則に変化していることについて説明していた。


異常な熱波。


季節外れの暴風雨。


そして、これまでとは明らかに異なる大気の変化。


そうした現象が、世界各地で頻発しているという。


しかし――さらに奇妙な現象も確認されていた。


本来ならば、激しい気象現象が起こるとは考えにくい場所で、異常な嵐が発生しているのだ。


砂漠地帯で、猛烈な豪雨と無数の落雷が観測された。


極地では、これまでにないほど激しい嵐が発生した。


ある地域では数日間にわたって空が厚い雲に覆われ続け、別の地域では、わずか数時間のうちに気温が急激に変化した。


「専門家たちも、これらの異常現象を完全には説明できていません」


教師は黒板に新しい資料を貼りながら続ける。


「一部の研究者は、これまでに例のない地球規模の気候現象が発生している可能性を指摘しています」


ゲイリーは大きくあくびをした。


「……へえ。すごいね」


興味のなさそうな声で呟く。


このときのゲイリーは、まだ知らなかった。


教師が話しているその異常気象が――やがて自分の人生を大きく変える出来事と繋がっていることを。


その日の午後、ゲイリーたちのクラスは市立博物館を見学することになっていた。


他の生徒たちにとっては、学校から離れて楽しめる絶好の機会だった。


だが、ゲイリーにとっては、ただいつもの日常に少し違う出来事が加わっただけだった。


――このときまでは。


その博物館見学が、自分の人生で最も重要な一日になるなど、彼は知る由もなかった。


---


博物館は多くの人で賑わっていた。


生徒たちは教師に引率されながら、長い廊下を歩いていく。


古い絵画。


彫刻。


甲冑。


そして、歴史的な価値を持つ数々の品々。


ゲイリーはいつものように、クラスメイトたちから少し離れて歩いていた。


そのときだった。


あるものが、彼の目に入った。


展示室の中央に置かれた、大きなガラスケース。


その中に一本の古い刀が収められていた。


――日本刀。


美しく、そしてどこか異様な雰囲気を漂わせている。


ゲイリーは足を止めた。


刀身には、わずかに青白い光が宿っているように見えた。


もちろん、ガラス越しに触れることなどできない。


それなのに――


なぜか、その刀から目を離すことができなかった。


胸の奥が、妙にざわつく。


まるで――刀そのものが、自分を呼んでいるようだった。


「……なんだ、これ……?」


ゲイリーは無意識のうちに展示ケースへ近づいていった。


心臓の鼓動が少しずつ速くなっていく。


そして、何かに導かれるように手を伸ばした。


指先が、ガラスに触れる。


その瞬間――


**ピィィィィィッ! ピィィィィィッ!**


館内にけたたましい警報音が鳴り響いた。


「えっ!?」


ゲイリーは驚いて、慌てて手を引っ込めた。


「ちょっと! 何をしているの!?」


教師が駆け寄ってくる。


周囲の生徒たちも一斉にこちらを振り返った。


「ゲイリー、刀に触ろうとしたんじゃないの?」


「やばいじゃん!」


「何やってんだよ!」


笑い声まで聞こえてくる。


「違う! そういうつもりじゃ……!」


ゲイリーは必死に説明しようとした。


だが、誰もまともに聞いてくれない。


教師から厳しく叱られ、クラスメイトからも責められる。


ゲイリーは俯いた。


――まただ。


自分はいつも、こうだ。


そんな騒ぎを、少し離れた廊下から一人の老人が見つめていた。


博物館の清掃員らしき男だった。


老人は動かなかった。


ただ、ゲイリーだけをじっと見つめている。


怒っているわけではない。


むしろ――驚いているようだった。


まるで、長い年月を待ち続けていた何かが、ついに現れたことを確信したかのように。


---


見学が終わると、ゲイリーは家へ帰った。


彼は父方の祖母と二人で暮らしていた。


しかし、その日の夜、祖母はミサへ出かけていた。


またしても、ゲイリーは一人だった。


家に帰った彼は、今日一日の出来事を思い返していた。


頭から離れない。


あの刀のことが。


なぜ、自分はあの刀に惹かれたのか。


そして――なぜ、あの刀が自分を呼んでいるように感じたのか。


考えても答えは出なかった。


「……もういいや」


ゲイリーは考えることを諦め、浴室へ向かった。


シャワーを浴びようと服を脱ぎ、ふと鏡を見る。


その瞬間だった。


「……え?」


ゲイリーの動きが止まった。


鏡の中に映っていた自分の顔。


そして――


その目。


「……嘘だろ?」


ゲイリーの目は、それまで茶色だった。


それは間違いない。


だが、今は――


**青い。**


氷のような、透き通った青。


ゲイリーは鏡に顔を近づけた。


何度も瞬きをする。


目をこすってみる。


しかし――


何も変わらない。


「なんで……?」


しばらくの間、彼は自分の目を呆然と見つめていた。


最初は不安だった。


病気なのではないか。


何か深刻なことが起きているのではないか。


だが、視界そのものには何の異常もなかった。


見えるものは以前と変わらない。


結局、ゲイリーはこう考えることにした。


「……明日、病院で聞いてみよう」


今は、それ以上考えても仕方がない。


ゲイリーはシャワーを浴びて、今日の奇妙な一日を忘れようとした。


風呂から上がると、カップ麺を作ってリビングへ向かった。


ソファに座り、テレビをつける。


今夜は大好きな特撮番組――


**『電撃戦隊・エレクトロセブン』**


の放送日だった。


ゲイリーは画面に釘付けになった。


特にお気に入りなのは、ヒーローたちが繰り広げる迫力満点のアクションシーンだ。


数分もすると、彼は刀のことも、博物館で怒られたことも、奇妙に青くなった自分の目のことも忘れていた。


――そのとき。


**コンコンコン。**


玄関からノックの音が聞こえた。


ゲイリーはテレビから目を離した。


時計を見る。


午後八時。


「……誰だ?」


こんな時間に訪ねてくる人など、思い当たらない。


ゲイリーは立ち上がり、玄関へ向かった。


そして扉を開けた。


「……え?」


そこに立っていたのは――


昼間、博物館で見かけた老人だった。


老人は七十歳くらいに見えた。


背は低く、頭の上はほとんど禿げている。


残った白髪が、頭の両側にわずかに生えていた。


どこか映画『ベスト・キッド』に登場するミヤギ先生を思わせる風貌だった。


老人は穏やかな声で言った。


「……入ってもいいかな?」


「え?」


「君と、少し話がしたい」


ゲイリーは眉をひそめた。


「博物館のことですか?」


「それもある」


ゲイリーは警戒した。


「すみません。でも……祖母は家にいません」


「知っている」


「……え?」


その一言で、ゲイリーの警戒心はさらに強くなった。


「じゃあ……帰ってください」


ゲイリーは扉を閉めようとした。


しかし――


次の瞬間。


老人の姿が、ゲイリーの視界から一瞬消えた。


「え?」


気がついたときには――


老人はすでにリビングの中央に立っていた。


ゲイリーは目を見開いた。


「ちょ、ちょっと待って! どうやって入ったんだ!?」


老人はその質問には答えなかった。


背中には、古びた布で包まれた何かを背負っている。


老人はそれをゆっくりと下ろし、テーブルの上に置いた。


そして、静かに言った。


「君は――その剣に選ばれた者だ」


「……は?」


「君には、あの剣を手に取り、これから迫り来る災厄から人類を守る使命がある」


ゲイリーは老人を見つめた。


完全に頭のおかしい人だと思った。


「……はいはい。分かりました。もう帰ってください」


しかし老人は動じなかった。


布をゆっくりと解いていく。


その中から現れたものを見た瞬間――


ゲイリーの表情が変わった。


「……それ……!」


青白い刀身。


見覚えのある柄。


間違いない。


「博物館の刀だ!」


ゲイリーは後ずさった。


「まさか……盗んだの!?」


「違う」


「じゃあ警察を呼ぶ!」


老人は再び刀を布で包みながら答えた。


「私の名は、長門ヒムラ」


老人は静かに名乗った。


「私は守護者だ」


ゲイリーは黙り込んだ。


「我が一族は、代々ある聖なる武器を守ってきた」


老人は刀を見つめる。


「その名は――**絶対零度の剣**」


「この刀が博物館にあったのは、私がそこに置くことを許したからだ」


「……なんでそんな大事な刀を博物館なんかに?」


「選ばれし者に見つけてもらうためだ」


ゲイリーは首を横に振った。


あまりにも現実離れした話だった。


長門は続ける。


「これまでにも多くの戦士たちが、この剣を手にしてきた。戦争や世界規模の危機が訪れた時代に、彼らは人々を守るために戦った」


そして、老人はゲイリーをまっすぐ見つめた。


「だが、この剣は強い者を選ぶわけではない」


「剣が選ぶのは――その力を必要とする者だ」


長門は懐から一枚のカードを取り出し、ゲイリーに渡した。


「準備ができたら、ここへ来なさい」


ゲイリーはカードを受け取った。


「私が君を鍛え、本当の力を引き出してやろう」


長門は玄関へ向かう。


そして、最後に一度だけ振り返った。


「それと、ゲイリー君」


「……何?」


「今日、学校で聞いた気候の異常現象――あれは自然現象ではない」


「……え?」


ゲイリーが聞き返した。


だが、そのときにはもう、長門の姿はなかった。


---


その夜。


ゲイリーはなかなか眠れなかった。


やがて眠りに落ちると――


奇妙な夢を見た。


戦争。


戦闘。


剣を手にした戦士たち。


炎を纏う刀。


雷を放つ剣。


巨大な嵐。


大地を揺るがすほどの力。


次々と現れる理解不能な光景。


そして、その中に三つの人影が現れた。


一人は――神父。


一人は――若い先住民族の女性。


そしてもう一つは――


空を覆い尽くすほど巨大な嵐。


その嵐が、まるで生き物のようにゲイリーへ迫ってくる。


そして――


夢の中のゲイリー自身が、一本の剣を握っていた。


その剣から、次々と氷の武器や道具が生み出されていく。


だが、その背後には――


巨大な黒い影が広がっていた。


地平線すべてを覆い尽くすような、真っ黒な何か。


そして、その闇の中に――


笑っているような何かがいた。


「……!」


ゲイリーは飛び起きた。


心臓が激しく鼓動している。


しばらくベッドの上で呆然としていた。


「……ただの夢だ」


そう呟いた。


だが、不気味な感覚は消えなかった。


---


翌朝。


ゲイリーは土曜日であることに気づいた。


学校は休みだ。


そして――


ベッドの横に置いたカードが目に入った。


長門から渡されたカード。


ゲイリーは数分間、それを見つめ続けた。


忘れてしまえ。


そう言う自分もいる。


だが――


行ってみたい。


確かめたい。


もしかすると、これが――


長い間、何も変わらなかった自分の人生で初めて起きた、本当に面白い出来事なのかもしれない。


ゲイリーはカードをポケットに入れた。


そして自転車にまたがると、そこに記された住所へ向かった。


---


目的地に到着したゲイリーは――


言葉を失った。


「……何だ、これ……」


目の前にそびえ立っていたのは、巨大な日本風の城だった。


四階建ての壮大な建物。


古い日本の寺院を思わせる造りでありながら、驚くほど美しく保存されている。


ゲイリーは自転車を降りた。


「ここ……家なのか?」


門の前には、長門が立っていた。


老人はゲイリーを見ると、静かに微笑んだ。


「来ると思っていたよ」


ゲイリーは城の中へ案内された。


しばらくすると、長門は彼にお茶を出した。


ゲイリーは待っていたと言わんばかりに、次々と質問をぶつける。


「この場所を建てたのは誰?」


「我が一族だ」


「何年前から剣を守っているんだ?」


「長い間だ」


「今まで何人くらいが剣を使ったの?」


「何人かだ」


ゲイリーはため息をついた。


「……おじいさんって、いつもそんな答え方なの?」


長門は小さく笑った。


「すべては時が来れば分かる。ゲイリー君、君は少し焦りすぎだ」


「……」


「忍耐と心の平穏を学びなさい。それも修行の一つだ」


「そんなの、簡単に言わないでよ!」


ゲイリーが不満そうに言い返した、そのとき――


襖が開いた。


一人の少女が部屋へ入ってきた。


日本人の血を引く少女。


そして、自然な金色の髪。


ゲイリーは一瞬、言葉を失った。


その反応を見た長門は、わずかに笑った。


「紹介しよう。私の孫娘だ」


「ガヤ・ヒムラです」


少女は優しく微笑んだ。


「よろしくお願いします」


ゲイリーは急に緊張した。


「えっと……よろしく」


長門は改めて名乗った。


「私は長門ヒムラ。聖なる『絶対零度の剣』を守護する一族、その八十代目の継承者だ」


「我々の一族は、選ばれし者を支え、助けるために存在している」


ゲイリーは腕を組んだ。


「仮にその話を信じたとして……いや、信じてないけど」


ゲイリーは長門を見る。


「どうして僕なんだ?」


「僕は剣なんて握ったこともない。世の中には、子供の頃から剣道をやっている人だっている。僕よりずっと強い人なんて、いくらでもいるだろ」


長門は穏やかに答えた。


「剣は、強き者を選ぶのではない」


一拍置いて――


「剣が、選ばれし者を強くするのだ」


ゲイリーは黙った。


長門は続けた。


「そして君は、ゲイリー君――」


「生涯の最後の日まで、この剣に選ばれた者なのだ」


ゲイリーは目を見開いた。


「……嫌だよ」


「僕は、こんなもの望んでない!」


声が大きくなった。


「僕の人生を変えたくない!」


ガヤが静かに近づいてくる。


「怖いんだよね」


ゲイリーは視線を逸らした。


ガヤは優しく続けた。


「でも、おじいちゃんが言うには、これまで剣に選ばれた人たちは、みんな心の優しい人たちだった」


「自分たちの時代で、多くの人を助けた人たちだったって」


ガヤは微笑んだ。


「私たちの家族は、選ばれた人を支えるためにあるの」


「だから……怖がらなくても大丈夫」


「私たちが、あなたのそばにいるから」


その言葉を聞いて、ゲイリーは迷った。


帰りたい。


そう思う自分もいる。


だが――


ほんの少しだけ。


この少女の言葉を信じてみたいと思った。


ずっと一人だった自分に――


初めて「そばにいる」と言ってくれた人だったから。


ゲイリーはしばらく黙っていた。


そして、ゆっくりと息を吐いた。


「……じゃあ、始めよう」


長門は微笑んだ。


「よろしい」


---


ガヤが白い着物と、初心者を意味する漢字が書かれた腕章を持ってきた。


こうして――


ゲイリーの修行が始まった。


長門はゲイリーに剣を持たせ、二人の間にどれほどの同調性があるのかを確認した。


その後、屋敷の裏に広がる森へと彼を連れていく。


森の中には、小さな開けた場所があった。


長門はそこで立ち止まる。


「ゲイリー君。頭の中で、何かを実体化することを考えてみなさい」


「実体化?」


「君が作りたいと思うものを想像するのだ」


ゲイリーは目を閉じた。


何か簡単なもの。


そう考えて――


「……車!」


集中する。


すると、ゲイリーの目の前に白い霜が生まれた。


少しずつ。


少しずつ。


氷が形を作っていく。


「おお……!」


だが――


完成したものを見て、ゲイリーは固まった。


それは確かに車だった。


ただし――


ものすごく小さい。


数センチほどしかない。


まるで玩具のようなサイズだった。


「…………」


ゲイリーは肩を落とした。


ガヤは笑いをこらえようとしている。


「……今、笑っただろ?」


「わ、笑ってないよ」


「絶対笑った!」


ゲイリーの顔が赤くなる。


「僕ならもっとできる!」


「うん。きっとできるよ」


ガヤが励ますように微笑んだ。


――その瞬間だった。


何かがおかしくなった。


風が止まった。


森の鳥たちが、一斉に鳴くのをやめた。


長門が空を見上げる。


その表情から笑みが消えた。


「……?」


ゲイリーも空を見上げる。


黒い雲が、ものすごい速度で空を覆っていく。


「何だよ……これ?」


雨が降り始めた。


激しい雨だった。


だが――


風はない。


雷鳴もない。


それなのに、空気だけが異様なほど重く感じられた。


ゲイリーは空を見つめる。


そして――


黒い雲の中に、何かが浮かび上がった。


人の形。


いや――


人間ではない。


雲の中から、まるで何かが這い出してくるように、巨大な人型の影が姿を現した。


それは空中に浮かんでいた。


長門は拳を強く握りしめる。


「……こんなにも早く来るとは思わなかった」


「……え?」


ゲイリーの声が震える。


「誰が来たの?」


長門は空を見上げたまま答えた。


「君の――」


一瞬の沈黙。


「最初の敵だ」挿絵(By みてみん)

### あとがき


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


今回のお話では、主人公ゲイリー・ツキナワの平凡だった日常が、一本の不思議な刀との出会いによって大きく変わり始めました。


孤独を感じながら学校生活を送っていたゲイリー。


そんな彼が突然、世界を守る使命を背負うことになるなんて、本人にとっては思いもよらない出来事だったでしょう。


そして、謎めいた老人・長門ヒムラや、その孫娘であるガヤとの出会いも、彼の人生に新たな変化をもたらしていきます。


しかし、修行が始まったばかりのゲイリーに、休む暇はありません。


空を覆う黒い雲。

異様な気配を漂わせる巨大な人影。

そして、ヒムラが口にした「最初の敵」という言葉。


果たして、ゲイリーは迫り来る脅威に立ち向かうことができるのでしょうか?


まだ未熟な少年が、どのように成長していくのか。


これから彼を待ち受ける冒険を、ぜひ見守っていただければ嬉しいです。


今後もゲイリーたちの物語を楽しんでいただけるよう、少しずつ書き進めていきたいと思います。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


次のお話で、またお会いしましょう!

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