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攻撃対象

こうして若いヒト蜘蛛(アラクネ)を惨殺したヒト蛇(ラミア)だったが、今度は食べようとしなかった。食べるには大きすぎたのか、それとも消化器官の一部が破れて食べたものが体内に漏れ出していることが影響しているのか、それは分からなかったものの、とにかく酷い有り様となった若いヒト蜘蛛(アラクネ)をそのままにして、さらに移動する。


途中で遭遇した鳥や小動物を改めて殺害しながらも、やはり食べようとはしなかった。その様子を見る限り、破壊衝動攻撃衝動そのものがこのヒト蛇(ラミア)の在り方であって、<食欲>や<生存本能>は行動原理には大きく影響しないという可能性が高い。


そして遂に、出遭ってしまった。


「グルルルルルルッッ!!」


恐ろしい形相で殺気を漲らせて、自身の縄張りに土足で踏み入った不埒な輩に激しい怒りを見せる<彼>に。


(ばん)に。


しかも、その前にはバドの姿もある。例の<電磁パルス攻撃>を受ければあの三機のドーベルマンMPMらと同じ運命を辿る可能性は高いものの、どうやら逃げるわけにはいかなかったようだ。


バドにとって(ばん)は重要な観察対象であり、かつ、ヒト蛇(ラミア)の存在は本来のこの密林に存在する外敵ではなかったからだろう。元々存在する外敵が相手ならあくまで自然な成り行きに過ぎないが、このヒト蛇(ラミア)はそうではなかった。


<埒外>の存在なのだ。だから敢えて加勢する。


(ばん)も、勝手にさせるつもりのようだ。


それはまさに、


<自身の国に侵攻してきた強大な敵を迎え撃つ覇王とその従者>


といった風情だった。


ヒト蛇(ラミア)も牙を剥き、これまでと同じくただ蹂躙するつもりのようだ。特に、バドに対しては激しい感情を向けているようにも見える。


すると、


「ガアアッッ!!」


ヒト蛇(ラミア)は返り血で何とも言えない色になった体を奔らせ、(ばん)ではなくバドに向かっていった。普通に考えれば明らかに(ばん)の方が先に対処するべき強敵に見えるだろうに、(ばん)に比べれば少なくとも見た目は取るに足らない存在でしかなさそうなバドに襲い掛かったのである。


確かに、バドは(ばん)の攻撃を凌ぎ切るだけの能力は持っているものの、ドーベルマンMPM三体と戦ったことでその力は承知しているであろうものの、それにしたってこの状況で優先すべき相手だろうか?


例の<電磁パルス攻撃>を使えば確実に勝てる相手のはずなのだが。


しかし、ヒト蛇(ラミア)は<電磁パルス攻撃>は使わなかった。もしかすると『使えなかった』のかもしれない。ここまでに受けたダメージで、特に消化器官が破れ内容物が体内に漏れ出るほどのダメージを負ったことで、電磁パルスを発生させるほどの電磁バーストを起こすことができなくなっていたのかもしれない。



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