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(ばん)が噛まれたのは、左の手(触角)だった。小指の下辺りに小さな傷がある。しかもそれは、みるみる赤く変色し、腫れていった。


そんな左手(触角)を右手(触角)で掴み、(ばん)は険しい表情に。かなりの痛みがあるようだ。


すると、バドが近付いてくる。


「!?」


(ばん)は明らかに警戒したが、逃げたり攻撃を加えようとはしなかった。しかも、バドがすぐ前に来て、脚を目いっぱい伸ばして体を持ち上げ、さらに手を伸ばして(ばん)の左手(触角)に触れた。


「ギッ!!」


痛みがあったのか、(ばん)が歯を剥き出してバドを威嚇する。が、それさえそこまでだった。襲い掛かるわけでもない。


その後、バドは後ろに下がり、距離を取った。


実はこの時、バドは自身が備えていた<血清>を(ばん)に投与したのである。今回の<毒ヘビ>の存在はすでに知られていて、血清も用意されていた。何種類もいた場合にはすべてを揃えることはできなかったかもしれないが、まだ種類が少なかったおかげで、助かったのである。


とは言え、その血清が本当に効くかどうかは、実は今回が初めての臨床例となるため、分からない。効けば(ばん)は助かる可能性もあるが、効かなければもう手の施しようがないだろう。


バドが血清を投与したのは、(ばん)を助けるという以上に、<治験>の意味があったのかもしれない。


本来、バドは、ヒト蜘蛛(アラクネ)である(ばん)の生態そのものを記録するのが目的だった。だから毒ヘビに噛まれて死ぬのなら、それも記録するべき事象の一つでしかなかった。


しかし、だからこそ、<血清の臨床試験>という目的があればこそ干渉したのだと言える。


それを<冷酷>と言う者もいるだろう。さりとて、この毒ヘビの毒はかなり強いものであり、理論上はヒト蜘蛛(アラクネ)でさえ死に至る可能性が高かった。


ましてや、毒を知らないことで耐性も獲得していないであろうヒト蜘蛛(アラクネ)では。


もうこの時点で(ばん)は、安全を確保するために木に登ることさえできなかった。


「グエッ!」


毒により肉体が過剰反応したのかその場で突然嘔吐。立っていることもできなくなり、地面に腹を着いた。どうやら意識も朦朧としてきたらしく、目の焦点が合っていない。顔色が明らかにおかしい。


バドが打った血清が効果を発揮するのか、しないのか、したとしても、それは(ばん)の生命力が届くほどのものなのか。


彼の<人間のようにも見える部分>自体が地面に膝を着いた形になり、さらにその場に蹲る。


するとバドが再び近付いてきて、ドローンと共に彼の周囲を取り囲むように位置取った。


まるで、王の危機に臣下が駆け付けたかのように。


そう。まさに、完全に無防備な状態になっている(ばん)を、外敵から守るためであった。



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