この行動が何を意味するのかは
こうしてバドがメンテナンスと消耗品の補充を受けていた一方、その留守を受け持つように派遣されたドーベルマンMPMが、蛮の様子を窺っていた。
しかし、夜なので基本的には樹上で体を休ませているはずの蛮が、何かを察したのか、地上に降りてきた。しかも、バドの代理として派遣されたドーベルマンMPMの潜んでいる辺りを睨む。
さらには、夜行性ではなく、夜目はパルディアほどは利かないはずの蛮なのに、なぜか、闇の底に潜んで見えていなかったはずのドーベルマンMPMに迫ってきたのだ。
まるで、
『バドではない何者かが成りすまして自分を見ていることに気付いた』
かのように。
するとドーベルマンMPMは、全力でその場を離脱し、距離を取った。蛮の姿がギリギリ確認できる程度の位置まで。性能はバドと同じなので、バドができることはこのドーベルマンMPMにもできる。<薄汚れた姿>以外は、バドとなにも変わらない。最初期に作られたものとは、マイナーチェンジによって一部の仕様がわずかに変わっていたりするものの、それすら、メンテナンスのたびに最新の仕様に更新されていくので、言われなければ分からない程度の差異しかないはずなのだ。
なのに、蛮はひどく不機嫌な様子で、<バドの代わりのドーベルマンMPM>が潜んでいる辺りを睨み付けていた。しばらく睨むと、また走り出す。それに合わせてドーベルマンMPMも下がって距離を取る。これを数回繰り返し、蛮の縄張りの端まで来たところで、ようやく、蛮は追うのをやめた。やめて、休むために樹上へと姿を消した。
ドーベルマンMPMの方は、敢えて蛮が見える位置まで移動はしなかった。代わりにドローンが蛮の姿を捉える。
この行動が何を意味するのかは、分からない。おそらくは蛮自身にしか分からないし、もしかすると蛮自身にも分からないのかもしれない。しれないが、間違いなく<バドじゃない何か>に対して強い警戒と嫌悪感を向けていたことだけは事実だろう。
何しろ、夜明け前にバドが戻ってきて、パラシュートで降下、代わりに蛮を観察していたドーベルマンMPMがそのパラシュートと自身が降下した際に使ったパラシュートも回収し、バドがそうしたように河へと向かって去り交代すると、夜が明けて活動を開始した蛮が、<ギリースーツをまとったバド>の姿を確認して少し近付こうとした素振りを見せ、バドがそれに合わせて動くと、
「……」
興味が失せたかのように向きを変えて、歩き出した。そんな蛮をバドが追うものの、やはりそれには構うことはなかったのだから。




