透明な人形
その、<巨大なクラゲのようにも見える透明な何か>は、完全に動きを止めていた。が、しばらくすると、表面がゆらゆらと動き出す。
『生き返った』というのとは何か違う、不可解な動き。どちらかと言えば、
『溶けて崩れ始めている』
という印象さえあるだろうか。さらに、雨が強く打ち付け、泥と一緒に溶けた部分が流れていくようだ。が、ある程度流れたところで、それ以上は形が崩れなくなった。
それは、河岸に打ち上げられた透明な人形のようにも見えた。そう、<人形>だ。明らかに生き物の形をしていたのだ。
しかも、三体。
それぞれ形は違うが、確かに三種類の生き物の形をしていた。
一つは、クロコディアだった。完全に透き通って透明ではあるものの、間違いなくクロコディアの形をしている。
もう一つは、やはり透明ではあるものの、形はまぎれもなくアサシン竜だった。
さらにもう一つは……
最後の一体は、こちら側の密林では見かけない姿をしていた。クロコディアに似ているようにも見えるが、尻尾がない。また、体の表面は<鱗>状にはなっていなかった。滑らかで、どこか細身の鎧にも見える。頭部はそれこそヘルメットのようにつるりとしている。
そして、一番、特徴的なのは、腕だった。両腕に、カマキリの鎌のようなものがついているのだ。よく見るとそれは、小指が変形して長く伸び、鎌のような形になっているのが分かる。
<カマキリ人間>
こちら側の密林では見かけないが、そう仮称される生き物であった。
さらに雨が打ち付ける中、まず、<透明なクロコディア>の尻尾がピクリと動いた。生きている。<人形>ではない。尻尾に続いて手の指が動き、河岸の泥を掻いた。そうして目が開き、頭を起こす。
「……?」
体は完全に透明であるにも拘らず、その透明なクロコディアはゆっくりと体を起こして立ち上がり、周囲を見回した。そして普通にクロコディアがそうするように、河へと入っていく。何事もなかったかのように河へと戻っていったのだ。
すると次に、<透明なマンティアン>が起き上がる。
「ギ……?」
こちらもおもむろに立ち上がると、周囲を見回した。プロポーションは人間のようにも見えるのに、完全に透明で反対側が透けているのに、どこか昆虫のような印象のある造形をしていた。まさに<カマキリ人間>ということなのだろうか。
胸が、乳房を思わせる形に膨らんでいるので、雌なのかもしれない。
その<透明なマンティアン>も、しばらく周囲を窺うと、思い出したかのように密林へと入っていって姿を消した。
だが、残った<アサシン竜>は、まったく動く気配がなかった。
<蘇生>に失敗したということなのかもしれない。




