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人気の秘密

「……」


結果的に自分を助ける形になった(ばん)を、バドは、ただ静かに観察するだけだった。


ぞぶりぞぶりと猪竜(シシ)に喰らい付き、血塗れになりながら貪る(ばん)を。


なお、以前にも触れたように、人間のようにも見える部分の器官の多くは休眠状態か、精々補助的な程度にしか機能していない。なので、その部分の<胃>も、消化の初期段階として、食べたものを胃液で溶解はするのだが、十二指腸の部分へと送られると、膵液によっていったん胃液を中和し弱アルカリ性の<ゲル>にして小腸に当たる部分、大腸に当たる部分を通過し、ヒト蜘蛛(アラクネ)の本体側へと送られ、そちらで改めて消化・吸収を行うという形になっているのが判明している。


一応、人間のようにも見える部分の小腸でもある程度の吸収は行われるらしいが、それもあくまで補助的な役目でしかなく、本格的な消化・吸収は本体側の消化器官によって行われるようだ。


加えて、ヒト蜘蛛(アラクネ)は、排泄器官が一つに統合されており、他の動物の場合は<尿>となるものも大腸に当たる部分に送られまとめられる。また、<糞>は基本的に水分をあまり含まない固形状で、獲物を生で食べ、血液で水分補給もするからか、色は<限りなく黒に近い茶>である。そのため、知らなければ<糞>だとは気付かないかもしれない。外見は、ゴキブリの卵鞘(らんしょう)に似ていると言えるだろうか。


ちなみに、この密林には、動物の糞を主食とする節足動物(ヤスデに似た虫やゴキブリに似た昆虫)がいて、特にヒト蜘蛛(アラクネ)の糞は人気があるらしい。それらの節足動物は、<柔らかい糞>よりも<固い糞>を好む傾向にあるともみられている。


動物の糞は、水分を別とすればその重量の大半が<腸内細菌の死骸>や<古くなった腸壁等>であることが多い。<食べたものの残滓>は実はごく一部にすぎないのだ。そして、<人間のように見える部分>と<蜘蛛のように見える部分>とが生物的に結合しているというヒト蜘蛛(アラクネ)の特殊な肉体がもたらす、


<糞に含まれる成分の特徴>


が、人気の秘密であるとも推測される。


これは、また別の地域に生息する、


<カマキリやクワガタといった昆虫の特徴をもつ脊椎動物>


の糞が同じように好まれることからも蓋然性が高いだろうと見られている。そちらは、尿は別に排出されるが、鹿の糞に似た球状でコロコロと固い。


などという余談はさておいて、猪竜(シシ)を喰らって満足したらしい(ばん)は、バドのことは無視して密林の中に消えていく。


バドは、それをただ見送ったのだった。



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