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色彩魔法学校-11[冒険]

島の冒険はスリリングで楽しかった。

プロフェッサーの助手が桃に医療指導をしたり、レッドグローブのスリプルが活躍したり。中でも一番すごかったのは蒼先輩だ。まさに無敵。覇王色の覇気みたいにバッサバッサと敵を倒していた。


やはり、一番狙われていたのは俺、蜜柑だったらしい。リコリス先生はやっぱりね…と暗い顔をしていた。


呪骸が黒獣に呪印を施してこちらを襲わせていた。若葉に色々教えてもらったのか、リコリス先生が呪文で黒獣を弱めて手なづけたりもしていた。


一番討伐数が多いのは蒼だ。二番は当然、俺。


テントをはって野営。はじめての野営で飯が来るのを待つ。


(俺は攻撃するのが仕事だし、そういう雑事は女の仕事だろうな)


振る舞われたご飯は今まで食べたことがないくらいに美味しかった。

「うめーーーー!」

「桃おまえ料理上手だったんだな!?」

「わたしじゃないけど…」

「グローブさんかあ!」

「私こんなに上手につくれまセーン」

「レモンちゃんとメロンちゃん?」

「ううん」

「若葉さん?」

「いやいや」

「リコリス先生!ありがとう!!!」

「…んー?蒼、美味しいわ。いつもありがとうね?」


「うそ……」

蒼先輩は無言だったが、俺はショックを受けた。強くて、家事もできてって、なんだよ、それ。


「毎年の夏期合宿が非常に厳しくつらいのに、生徒が楽しく来てくれるのは、蒼がご飯を美味しくつくってくれるおかげなのよ♡グローブは配膳を手伝ってくれるわ」

「ああ、あの、味見とか、こう、あれあの、味付け?うるさそうだもんな?」

俺はごまかした。

「買い出しからしたごしらえ、盛りつけまで、いつもやってくれマスヨ」

黙々と食べる蒼をみる俺。


食べ終わる。レッドグローブが食器を回収しにくる。

「食器を洗い場までさげるのは私の仕事デス。洗うのはいつも蒼がやってくれマスヨ」


俺は言葉を失った。

(蒼先輩……大人だ…)




翌日の朝


プロフェッサーの弟子、若葉が退却した。凄惨な現場に耐えられなかったらしい。もともと、指導に来ただけだと言って逃げ帰ったようだ。


リコリス先生は呆れていた。

「行かせなさい。大人がズルイのには慣れっこなのよ。むしろ、私たちの士気を削がれる前に行ってくれてよかったわ。あと少し遅かったら私が追い出していたわよ」


敵が強くなってきた。

強い敵を狙うのが役目とはいえ、つらくなることもある。


あるとき、蒼先輩が精神攻撃でダメージを受けた。


蒼先輩は油汗を滲ませて苦しんでいる。桃はとりわけ心配そうだ。

「先生、これって蒼先輩の…」

リコリス先生は苦い顔をしていた。

「カウンターをくらったのね。蒼の精神攻撃は、自分と相手の心の境界を越えて、攻撃する。相手に自分の闇を見せて圧倒できる一方、相手の闇に飲み込まれるリスクもある」


次の日の朝も、蒼は目を覚まさなかった。






蒼は夢うつつの世界で戦っていた。蒼本人が呪躯や黒獣、他の生徒や教師から精神にダメージを受ける攻撃を受けたのは、はじめてのことだった。


(なんだこれ…俺が…喰われてる…?攻撃したのは俺のはずだったのに…!)


蒼は白と黒と灰色の世界にいた。ゾッとするほど色が無い。


俺は、生き地獄を味わってきたつもりだった。だから、怖いものなんてなにもないと思っていた。なのに、なんなんだこの感覚は…


ねずみ色の幹にダークグレーの葉がついている。鬱々とした出口のない森。

コウモリがあちこち飛んでいる。

「あは 生きてていいなんて思ってた?」

「あはは 肯定されているって思っていた?」

「笑える それ全部、演技だから」


うるさいゴミ共だ。俺は強くなった。あの頃とは違う

「あははは 本当?」

「あははは 強くなったつもり?あははは」


風が吹いて木の葉がざわめく。

「ねえ じゃあなんで、あの頃のこと思い出しているの?」

「大事な思い出だから忘れられないんじゃないの?」


思わず立ち止まった。

「あなたが忘れられないことこそが、真実」

「あなたの心に燻るものこそが、あなたのするべきこと」


思わず口に出した。

「あれ、俺、どうして生きているんだっけ」


ざわっと木々が揺れる。風は吹き続ける。

潔白と確固たる意思を呼びかけるような、モノクロームの風


なんだろこれ。生きているのが気持ち悪い


動けないでいると、どこからか川が現れて蒼を流していく。

あぁ、流される。身動き一つとれないうちに流される。

滝壺に落ちそうだ。なんとか、その辺の葉っぱや石につかまろうとする。けど、それらはスルリと逃げてしまい、落ちてしまう。水からあがる蒼。

川の流れと滝壺があって、水は確かに流れているのに、音はなにもしなくてらとっても気持ち悪い。

水の生暖かい完食はあるのに、流される恐怖はあるのに。


ああ、そうだ。ここには色も無い。水墨画のような世界で、俺だけが色を持って……?

蒼は自分の手足を見た。あれ、俺に色、ついてる?


誤字報告ありがとうございます。おかげさまで続きを投稿することを思い出しました。見切り発車で投稿している部分もあり、なにより小説初心者である私の小説を読んでくださいまして、ありがとうございます。最終話までなんとかがんばって、投稿していこうと思います。

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