現れた壁
「おいおいおい!ちょっと待て!」
「どうした、いきなり騒ぎ立ておって」
響がなんだこいつウザったい、といったような顔で透に言う。
「今は夜も更けておる、そんなに騒いでは周りに迷惑であろう」
「ぐうぅ…」
押される透、しかし、ここで終わるわけがない。そのまま透も自分の布団を敷き始めた。
そして響に向かって「してやったり!」といった顔で言い放つ
「どうだ!お前がここに寝るというなら、俺と並んで寝るということになるぞ!」
そうして勝ち顔のまま響の敷いた布団をたたみ始める透。しかし、たたみ終わり布団から透が離れた瞬間、響がもう一度布団を敷き始めた。
「…何やってるんだ?」
「何って、お前がせっかく私の敷いた布団をたたんでしまったから、もう一度敷き直しているのではないか」
そのまま放心状態で部屋から出ていき、階段を降り始める透。
(ダメだあの人~何も通じない~…)
そうして茶の間につき、椿の前でテーブルに顔を伏せる。
そのまま、椿に愚痴と思われる言葉をブツブツ連呼し始めた。
「あぁ…どうしてこんなことに…なんてついていないんだ俺は…」
すると、椿が透の頭に手を乗せ左右になでる。
「よしよし、イイコイイコ」
――――――その頃、場所が変わって
屋敷と思われよう大きな部屋の中、明かりをつけずに薄暗い空間が作りだされていた。木造建築風で部屋の奥には鳥居が建てられている。
「本当にくまなく探したのだろうな?」
「えぇ、それはもちろん!ちゃんと探しましたとも”」
そのくらい空間の中、二匹の妖怪が険しい顔をして話をしている。片方は部下か何かであろう鳥の姿をした小物妖怪、もう片方はそれより格上で在ろう姿をしている。
「仕方ない、どれ、ワシが直々に出向くとしよう」
そうして立ち上がると、その獰猛そうな牙で先ほどまで話していた鳥妖怪を喰らった。
◇◇◇◇◇
「んで、どうやって記憶を探すかだが…」
「ふむ、ではお前が椿様に出会ったという神社に行ってみてはどうだ」
あぁ、なるほど。っといった顔で透が頬杖を突く。
「んじゃあ、ちょっくら行ってみますか」
夜更けは暗い、しかも夏ならば更にだ。そんな中、透が安心して神社に行けるのは普通に妖怪と並んで歩いているからだろう。
「ふぅ…ついたついた。」
そうして透が腰を下ろそうとしたその時、地面が揺れるほどの勢いでこちらに向かって来るものがある。
「な、なんだ!?」
姿を現したのはまさに「鬼」だった。
「妖怪か…!」
すぐさま響は腰についた刀を抜き構え、透は背負っていた椿を降ろし自分の後ろに隠す。
『ワシの名は”悪鬼”、娘を探してここへ来た』
「娘…?」
すると大きな手を振りかざし、透に指をさすと、巨大な牙の生えた口を開き話し出す。
『その、お前の後ろにいる娘だ。ワシはその娘を娶りに来た。』
「なん…だと…」
驚いていたのは透ではなく響のほうだった、鬼のほうを見て青ざめていた。
「やっぱりか…俺も思ってたんだよ…」
「何?」
「やはり、幼女を娶るとか言ってるこの鬼って…危ないよな」
一気に刀を持っていた力が抜ける。
「馬鹿者!そうではない!」
「え?」
「よいか?椿様が娶られてはこの世が妖怪で溢れかえるぞ!私とて妖怪と人間が共存できるとは思ってはおらぬ。」
「ということは、あいつを止めなきゃなんねぇってことか…」
すると鬼が近づいて来て、金棒を透スレスレの地面に叩きつけた。
そうして、もう一度口を開く。
『ワシを止めるだと?あまり滅多なことを言うと、小僧…』
『喰らうぞ?』
そう言い放つともう一度金棒を持ち上げ降りなおす。そうして今度は確実に当てるため、ゴルフでもプレイするかの如く金棒を透に向けて前後する。
『ウオォォォォオオオオオ‼』
金棒を透に向けて振り放った!




