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会うは別れの始め  作者: seto
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闇に光る眼

 暗い月夜に髪が揺れる、光り輝くその瞳はどこか残酷な色をしている。

 今宵は満月、人を襲うにはもってこいの夜だ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ノートとペン、向かう先には自分のベッドにちょこんと座った女の子。

 透は自分の椅子に深々と座りこみ、質問を始めた。


「そんじゃあ、まぁ。お前について色々と知りたいことがあるからな。」

「…」

「質問させてもらうぞ?」


 女の子は最初は無言で考え込み、しばらくするとゆっくりと首を縦に振った。


「よし、じゃあまずはお前の名前だ。」

「…」

「自分の名前わかるか?」

「…き。」


 声が小さく、うまく聞き取れない。


「つばき…。」

「…つばきか。いい名前だな!」


 次第につばきの顔が明るくなっていく、おそらくはうれしかったのだろう。


「うーん…ほかに聞くことは。」


 透がつばきの体を見渡す。


「いつ見ても不思議な体してるよなぁ…」


 そう、実際の人間とは違う場所がいくつもある。狐のような耳が生えており、しっぽも九本生えている、瞳も澄んだ綺麗な緋色だ。今は着替えさせたのでぶかぶかのTシャツを着ているが、最初はまだ時期的には早い浴衣を着ていた。


「でもまぁ、妹ができたみたいで可愛いからいいか!」


 そう言って、透はつばきの頭をなでる。

 すると、つばきは次第に顔が赤く染まっていく。やはり、感情というものはあるようだ。


「そうだなぁ、まずはお前について知らないとなぁ…」


 そうしてしばらく考えた後、いいことを思いついた透は椅子から立ち上がり外に出る準備をする。


「やっぱりまずは好物探しだよな!」


 そうして、透とつばきは隣町のスーパーまでつばきの好物探しに行くことにした。おそらく、透の家の近くにあるコンビニでは品ぞろえが悪いだろうからという透の気遣いである。


 時刻は夜、隣町というだけあって意外と距離がある。

 そんな中、街灯の明かりの下を透とつばきは歩いていた。すると…ふと、つばきが立ち止まる。

 それに違和感を感じた透はつばきの緋色の瞳が見つめる先を見た。

 暗くてよく見えないが、次第に人影が見えてくる。暗闇に馴れたのではない、むこうから近づいて来ているのだ。


「何だよあいつは…」


 透とつばきの見つめる先の人影、顔はよく見えないが一つだけはっきり見えるものがある。

 その体から月の光が反射し、伸びるような薄地ろい輝き。


 刀だ。


 そのことに気づいたころにはもう相手も同じ街灯の光の枠内に入ってきていた。

 距離はかなり近い、斬ろうと思えばすぐに斬られるであろう短距離。


「貴様か?連れ出したのは。」


 その相手が話しかけてくる、見た目は街灯の明かりの中に入ってからわかったが…


「…女?」


 すると、透の首元に刃の先が突きつけられる。少しかすったのか、先を伝って血が滴る。


「質問に答えろ。」


 女の表情は依然として変わらない、そう冷たい瞳の輝きもだ。

 よく見ると不思議な姿をこの女もしている。髪は黒くて長く、後ろで結んでいるようだ。服装はくノ一の様な格好をしており、目は青く輝いている。


(外国人とのハーフか?こいつ?)


 するとそこにつばきが飛び出す。

 つばきは透を隠すかのごとく目の前で手を広げ、女の前に立ちはだかる。


「あなたは…もしや…」


(なんだ…知り合いか…?)


「椿様!」

「…え?」


 その女は刀を鞘に納めると、つばきを持ち上げた。


「あぁ、椿様!探しましたよ、どれだけ心配したことか…」

「おいおい…何が何だか…」


 女がこちらを向き睨む。


「貴様、椿様に変なことをしていないだろうな。」

「し、してねぇよ!つうか、今だってそいつの為に好物をだなぁ…」


 するとその女はつばきを肩に乗せると、こちらのほうを向き。


「買い物か、ならば私も手伝おう。」

「はぁ!?」

「椿様の好物は私が一番分かっておる、当然だろう。」

(ま、まぁ…確かにわかってるやつがいたほうがいいけどよぉ…)


「わかったよ。んで?名前は?」

「無礼な、人にものを訪ねる時はまず自分から名乗るものであろう。」

(いつの時代の人間だよ…)


「俺の名前は赤坂 透だ。あんたは?」

「あんたではない、『ヒビキ』。種族『白沢ハクタク』だ。」

「なるほど…」

(…ってあれ?白沢?)


「え~、つかのことをお伺いしますが。妖怪関係か何かのお仕事で?」

「関係ではない、妖怪だ。」

(えええええぇぇぇぇ!?)


「やれやれ、ちなみに言うが。この椿様も妖怪で在らせられるぞ。」

「と…いいますと…」

「九尾だ。」

(やっぱりか…)


 いきなりのことに尻もちをついてしまった透だったが、しばらくして状況を把握したのか立ち上がる。


「まぁ、いいや。んじゃあ、そいつを連れて帰ってくれ」

「それは無理だ。」

「はぁ!?」

 

 思わず怒鳴る。


「大体、椿様に選ばれた時点でお前とは印を交わしてしまわれておる。」

「…はい?」


 すると、響が透に近づいたのち。透の右腕の袖をまくる。


「よく見ろ、これがその証だ。」


 右腕の手首あたりには何かのツタのような見た目の、アザらしきものがあった。


「なんだよこれ…」

「その印の先を見ろ。」


 見てみると、印の先には動物の顔らしきものがついており。逆のほうには動物の尻尾らしきものが九本ついていた。


「九…尾…?」

「そう、それが九尾との契約の印だ。その印が貴様の腕を九周た後、頭と尻尾がつながる。」

「繋がったらどうなるんだよ…」


 透は、恐る恐る尋ねる。


「貴様と椿様が一つになる。つまり、貴様は妖怪と人間の間の存在となるのだ。」

「嘘だああああ‼」


 透はショックのあまり、その場に倒れこんだ。


「まぁいい、お前と椿様が一つになるのは私も気に食わんからな。回避する方法を教えてやろう。」

「方法…?」


 すると、響は肩からつばきを降ろす。


「それは、お前がこれから三か月間の間に約束を果たすことだ。」

「約束!?」

「そうだ。」


 透は”約束”というキーワードをもとに、しばらく考え始めた。しかし、いくら考えても思い当たる節がないのだ。


「貴様、椿様と出会われたところから思い出そうとしていないか?」

「え…?」

「その印の深さからして、かなり昔だろう。私も深くはわからないが…」

「そんなぁ…」

(子供の頃のことなんて覚えてねぇよぉ…)


「そこでだ、その記憶探し。私も手伝おうと思う」

「本当か!」

「言ったであろう、私も気に食わないと。」

「響さぁーん!あんたいい人だー!」


 響に飛びつこうとした瞬間、下から蹴りが飛ぶ。


「ごっふぁあ‼」

「触るな、汚らわしぃ。」

(やっぱりこの人怖え…)


 こうして、透とつばきの約束を知るための記憶探しが始まったのである。

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