神社と少女
この世には、二つの人種がいる。成功した人と、成功してない人だ。
俺はその後者…になりかけている。
つまりは、もうすぐ俺もダメ人間ってわけだ。 どういう意味だって?
仕方ないから、説明しよう。
俺の名前は『赤坂 透』、中学三年生だ。ちなみに今は夏休み直前、ということは”期末テスト”が終わってしまえば俺も一年の中間の夏休みだ。
ろくに勉強せず、家に帰ったらゲームばかり。成績もほとんど2だからな。
親にも「こんなんで高校に行けると思ってるの!?」とかしょっちゅう言われるよ。
「まぁ、そういいながらもゲームをやってるんですけどねぇ…っと。」
そうして、透はPCの画面に向かっている。
しかし、誰だってお腹は減る。それは透も例外ではない。
『ギュルルルル~』
「…腹減ったな。」
そう言うと、椅子の背もたれに上半身の全体重をかけて後ろに倒れこむ。
「はぁ~あ、しゃあない。コンビニでも行ってくるかぁ…」
そう言うと、すぐに着替えて家を出た。
そして、一番近いコンビニに向かった。そのコンビニは決して品ぞろえがいいわけではない、なぜなら透の住んでいる町は山のふもとだからである。
しかし、わざわざ隣町にまで出向く必要もあるまいて。透はいつもそこで用を足しているのだ。
「ありがとうございました~。」
そんな作り笑いとセリフを聞きながらコンビニを出ると。ふと、子供の頃のことを彷彿とさせた…
「そういえば、子供の頃はこのコンビ二でお菓子を買って近くの神社で遊んでたっけ。」
そう。このコンビ二の近くには山への入り口があり、そこを進んだ奥には古びた神社がある。夏
にはその神社でよくお祭りが開かれるのだ。
「ちょっと寄ってみるか。」
なんとなく子供の頃の思い出に浸りたかったのか、その山奥の神社に向かうことにした。
思えば、ここが分岐点だったのかも知れない…
「ふぅ…久々に来てみると、意外と薄気味悪いなぁ。祭りとかの時には明るいからなぁ…」
そんなことを呟きながら透はコンビニのレジ袋を抱えて石段を登っていく。
そのまま上り続けること5分弱、鳥居が見えてくる。
「ハァハァ…この石段…こんなに長かったっけ…?」
ようやく本殿につく。
「やっとか…」
その後、本殿の縁側に買った物を置き、神社を見て回る。子供の頃によく遊んだ神社、それを考えただけで言葉に表せないような虚しさと懐かしさが腹の底を押した。
「ちっとも変わってないんだなぁ……ん?」
ふと、神社の裏を歩いていた時だ。何かが落ちているのに気がつく。
「なんだ?こいつ…?」
そう、そこには人が倒れていた。正確には女の子だ、背は小学生くらいのようだ。
「女の子がどうしてこんなところに、それに…」
そして透はその女の子の体に目をやる。その女の子は浴衣姿に、しっぽの生えた小学生体形という異様な姿をしていたからである。
「もしもーし、生きてますか~」
少し揺さぶってみる。しかし、女の子は起きない。なのでもう少し揺さぶってみた。
「おーい、こんなとこで寝たら風邪ひくぞ~」
「ん、うぅ…」
少しうめき声をあげた、その後。女の子は目を覚ます。
「おぉ、起きたか。」
「…ほえ?」
その女の子は全く持って何が何だか、という顔をしている。
「にしてもなんでこんなところに…」
『グゥゥ…』
お腹が鳴ったのは透…ではなく、女の子のほうであった。
「お前、もしかしてお腹すいてるのか?」
女の子は首を縦に振る。
「んじゃあ、これ食え。」
そう言うと、透は置いていたレジ袋からおにぎりを一つ出して渡してあげた。
「はむっ…」
すると、その女の子はみるみるうちに食べきる。
「よっぽどお腹がすいてたんだなぁ。」
透がその姿を見て笑っていると。
「…ます。」
「…え?」
「…ありがとうございます。」
その女の子が喋ったのだ。先ほどまで一言も話さなかったがゆえに、透は少し呆気にとられた。
「おっと、そういえばもう日が暮れる。お前、迷子か?」
透が訪ねると、その女の子は首を横に振った。どうやら、迷子では無いようだ。
「じゃあ、自分の家とかわかるか?」
女の子は首を縦に振る。
「じゃあ、俺がお前の家まで送っていってやるよ。一人じゃ危ないしな。」
すると女の子はスッと立ち上がり、そのままトテテテ…と鳥居のほうに走り出した。
しばらくその女の子についていくと、見慣れた住宅街に入っていく。
そして、ある家の前で女の子がピタッと止まった。
「へぇ~、ここがお前の家かぁ~」
…って。
「ここ俺の家じゃん!?」
すると、女の子はそのまま家に入っていく。
「ちょ、おま…」
そして追いかけると、母親がテレビを見ているであろう居間へと入っていった。
「うわ!まずい!」
「あら、お帰り透…あら?」
(うわ!もうだめだ!)
「母さんごめん!それ、俺が拾って来たんだ!」
「透、あんた…」
そう言って、母親はその子を持ち上げる。
(やばい…!)
「可愛いじゃない!この狐!」
(…え?)
「母さん…大丈夫か…?」
「何が?」
母親は振り返る。
「いや、だって狐って…」
「どっからどう見ても狐じゃないの。」
(大丈夫かこのババア?とうとう、頭逝ってしまったか?)
「でも、これはあんたが育てるんでしょうね?」
「え…いや…その…」
すると、女の子が透の足にすり寄ってきた。
「…わーったよ。」
こうして、透とこの女の子の長くて短い中学最後の夏が幕を開けるのであった。
どうも、今回この作品を書かせていただきましたsetoです。
今回、この作品を書かせていただこうと思った理由はまさに”なんとなく”です。そう、つまり。特に理由はありません。
強いて言うならば、思いついたからです。「思い立ったが吉日」とはよく言ったものです、私もこの小説を忘れないうちに書いておこうと思い、書かせていただきました。
というわけで、今後ともお付き合いをよろしくお願いします。