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泉の精
おとぎ話シリーズ その6
泉の精は両手にズボンを持ち言った。
「あなたが落としたのはこの汚いズボンですか?それともこちらの……」
「汚いズボンです!」
僕は自慢のヴィンテージ物のジーンズを指差して叫んだ。世界に10本もないと言われている僕の最高の宝物。
「なんて素直な人でしょう。あなたにはこちらの綺麗なズボンを差し上げましょう…」
泉の精は消えた。ピッチリとアイロンの効いた純白のスラックスを残して。
僕は無言で立ちつくした。
これを…一体どうしろと?
神様といえども、センスだけはどうしようもないのです(涙)




