episode4 零、スキルのチートさに気付く
「私の異世界最強はまさかの"ガチャ"でした」は、17:00に不定期で投稿いたしますのでよろしくお願いいたします!
「……スキル、しょっっっぼ」
ひとしきり枕を濡らした後、零は布団の隣に置かれたスープの湯気に気づいた。
(……せっかく用意してくれたし、飲んどこ)
レンゲもないので器を両手で持ち、ふうふうと息を吹きかけながら一口。
「……うん、おいしい……」
ほんのり塩味の効いた野菜スープ。素朴だけど、どこか優しくて心があったかくなる味だった。
(この世界……悪いことばっかじゃないかも)
心が少し落ち着いた零は、ようやくベッドから起き上がり、ゆっくりと部屋を出た。
階段を降りてロビーに着くと、さっきのふくよかな女性が笑顔で出迎えてくれた。
「まぁまぁ、もう歩けるのね。よかったわ~!」
「はい、さっきのスープもすっごくおいしかったです!ありがとうございました!」
「ふふふ、なら良かったわ。で……あなた、どこの国のご出身なの?」
(うぐっ……そう来るか……)
しまった、転生者であることなんて言えるわけがない。
明らかに変な服装だし、荷物も全てじじい…じゃないや、神に取られたからな…。
(なにかうまく……話をそらさなきゃ――)
と、そのとき!
「――窓が割れたッ!?」
ビシィンッ!!と鋭い音と共に、宿の窓ガラスが派手に粉砕された。
次の瞬間、乱暴に足音を響かせながら、マスク姿の盗賊が1人、ずかずかと入ってくる。
「動くな! 金品を全部出せェッ!」
「ひっ……!?」
女性が怯えた様子で立ちはだかる。
「お、お客さんに手を出すなんて……許しませんよ!」
だがその勇気もむなしく――
バキッ!!
「ぐふぅっ!?」
盗賊の拳が女性を直撃し、そのまま彼女は後ろの棚へ吹き飛ばされてしまった。
「おばさぁぁぁん!!」
「チッ……手間取らせやがって……」
ふと、盗賊の視線が零に向く。
「おや……? なにその服? 見たことねぇな……でも素材が上等そうだな、おい」
じりじりと近づいてくる盗賊。目がギラついていた。
今の私の服装はスーツ。仕事終わりに着替えてなかった
「貴族の令嬢か? なら、身代金でも取れるな……ふひひ……」
「ちょ、ちょっと待って!? あたしただの一般人――」
「黙れっ!」
ナイフを抜き、零に向けて振りかぶる盗賊。零は逃げ場を失い、壁際に追いつめられた。
(やばい……やばいやばいやばい!! って、私の売る…?なら売り返す…?それだ!!)
零の脳内に、閃光が走った。
「――『売却』ッ!!」
盗賊の持っていたナイフに向かって、力いっぱい手を伸ばし叫ぶ!
【アイテム「ナイフ」を売却しました】
【所持金:+300G】
「えっ……? あれ!? オレのナイフが……!?」
盗賊の手元から、武器が一瞬で消えた。
「ええい! だったら素手で……」
「次ィ! 『売却』ッ!」
盗賊の持っていた麻袋に手をかざした。
【アイテム「怪しい麻袋」を売却しました】
【怪しい麻袋:+1500G】
「うわあああああ!!オレの財宝がぁあああ!!」
「まだまだぁ!!私のチート能力を思い知れぇ!!『売却』ッ!」
盗賊のジャケットが光りながら消えた。
【アイテム「ボロジャケット」を売却しました】
【所持金:+50G】
「は、はだかにする気かコラァ!!」
「するに決まってるでしょバカァッ!! 『売却』『売却』!!」
次々に盗賊の持ち物が光っては消えていく。
「まだまだぁ!!」
「うわあああああん! やめてええええええええ!」
盗賊はパンツ一丁になりながら、涙目で外へと逃げ出していった。
「……ふう」
後には、放心状態の零と、薄れゆくスキルエフェクトの音。
(あれ……もしかして、私……異世界チート……なのかもしれない……)
その直後、宿のお母さんがうめき声とともに立ち上がった。
「い、今の……何が起きたの……?」
零は顔を引きつらせながら、必死に笑った。
「な、なんでもないです……盗賊、売っただけですから……」
「……売った?」
「そ、そういうスキルでして……」
「……」
「…………」
「ごはん、おかわりいる?」
「いるぅ~~~っ!!」
――【金雀涙 零】――
所持金:2031G( +1950G)
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