↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/11

episode10 金稼ぎは効率よく!!

 冒険者ギルドの朝。


 今日も元気に(?)異世界を生きるレイは、依頼掲示板の前にいた。


「うーん、今日は何があるかな~!」


 その横には、腕を組んで静かに見守るセナの姿。


「……その前に、ひとつ確認してもいいかしら?」


「ん? なになに?」


「あなた、昨日もらった銀貨5枚、ちゃんと持ってる?」


「もちろん! ほら!」


 レイはポケットから銀色のコインを取り出した。


 ずっしりとした重みのある、5枚の銀貨。


「……そういえば、セナさん。」


「なに?」


「これって、どのくらいの価値があるの?」


「…………。」


 セナの動きが止まった。


「……え、あなた、お金の価値知らないの?」


「……あ。」


 しまった。


 レイは思わず口を押さえた。


(……そうだよね!? 普通、大人がお金の価値知らないとかおかしいよね!?)


「い、いやぁ~! ほら! 私、遠い異国から来たばっかりで!!」


「……異国?」


「そうそう! 私の故郷では通貨が全然違うからさぁ! こっちのお金、まだよく分かんなくて!」


 嘘ではない。


 実際、日本円とこちらの通貨は違う。


 ただし、異国どころか異世界なのだが。


「……そうだったの。」


 セナは少し考え込んだあと、納得したように頷いた。


「それなら、最初に教えておいた方がいいわね。」


「おぉ! お願いします先生!!」


「……先生って。まぁ、いいけど。」


 セナは指を一本立てた。


「まず、銅貨10枚で銀貨1枚。銀貨10枚で金貨1枚よ。」


「ふむふむ……。」


「つまり、金貨一枚は銅貨100枚分ね。」


「……なるほど!」


 レイは手元の銀貨を見つめた。


(……でも、これって日本円だといくらなんだろ。)


 そう思った瞬間、あるスキルが頭に浮かんだ。


「……『鑑定』!」


 ピコン!


――――〈銀貨〉――――

・この世界で使用される通貨。

・銅貨十枚と同等の価値。

・日本円換算:約1000円

―――――――――――


「……おぉ!」


 レイの目が輝いた。


(……銀貨1枚で1,000円!?)


 ということは。


(銅貨1枚で1,000円! 金貨1枚で一万円!!)


「……えっ、じゃあこれ5,000円!?」


「……ごせんえん?」


「あっ! なんでもない!!」


 レイは慌てて銀貨をポケットにしまった。


「……あなた、さっきから何を計算してるの?」


「い、いやぁ! 故郷のお金に換算してただけ!」


「……そう。」


 セナは少し不思議そうな顔をしたものの、それ以上は追及しなかった。


(……なるほどねぇ。)


 レイはひとり納得したように頷いた。


 銀貨5枚で5,000円。


 昨日の報酬としては、正直そこまで大きくない。


(……まぁ、私には4万G以上あるし!!)


 もっとも、ポケットマネーはガチャ専用。


 この世界で買い物をするには、現地のお金が必要なのだ。


(……つまり、こっちのお金も稼がないといけないってことね!)


「よーし! じゃあ、さっそく依頼探そ!!」


 レイは掲示板へと向き直った。


「で、で! 今の私におすすめの依頼は……?」


「そうね。薬草採取や荷物の配達あたりかしら。」


「……えぇ~。」


 レイは露骨に顔をしかめた。


「地味だなぁ……。」


「地味でも確実よ。あなたはまだG級なんだから。」


「でもさぁ、もっとこう……一気に稼げるやつないの?」


「……またそんなことを。」


 セナは呆れたようにため息をついた。


 だが、レイはすでに掲示板を物色していた。


「……おっ!」


 一枚の依頼書に目が留まる。


「これなんかいいじゃん!!」


 レイが勢いよく手を伸ばす。


 その依頼書を見た瞬間、セナの表情が険しくなった。


「……ゴブリン討伐依頼!?」


「うん!」


「あなた、昨日のこともう忘れたの!?」


「え? でもゴブリンだよ!? 雑魚じゃん!!」


 レイは当然のように言い放った。


(……ゴブリンなんて、ゲームじゃ最序盤の雑魚モンスターでしょ!)


 しかも今回は武器もある。


 最低レアではあるが、ショートナイフだって持っているのだ。


「バブルヒポポス相手に、何もできなかったじゃない……。」


「あれよりはマシでしょ! いけるいける!」


「……何を根拠に。」


「ゲームの経験!!」


「……は?」


 セナは眉間を押さえた。


 どうやら、昨日の一件から何も学んでいないらしい。


「……忠告しておくけど、次は助けないからね?」


「はいはい! 助けてくれなくてもいけるって!」


「……本当に分かってる?」


「大丈夫大丈夫!!」


 そう言って、レイは依頼書を引き剥がした。


「行ってきまーす!!」


「ちょっと!? まだ話は――」


 セナの言葉が終わるよりも早く、レイは受付へ向かっていた。


「すみませーん! これ受けます!!」


 受付嬢は差し出された依頼書を確認する。


 そして、困ったように眉を下げた。


「えっと……レイ様。こちらのゴブリン討伐は推奨E級なのですが……。」


「えぇ~! そこをなんとか!!」


「ですが、レイ様はまだG級ですので……。」


「大丈夫です!! ギルドの依頼って自己責任ですよね!?」


「そ、それはそうなのですが……。」


 受付嬢はちらりとセナへ視線を向けた。


 セナは無言で首を横に振っている。


「……えっと、本当に危険ですよ?」


「分かってます!!」


 ――分かっていない。


「……はぁ。」


 受付嬢は困り果てたように息を吐いた。


「……では、規定上受注可能な依頼ですので、詳細をご説明します。ただし、危険だと判断した場合は、必ず撤退してくださいね?」


「はーい!!」


 レイは満面の笑みで頷いた。


(ふふふ……ゴブリンなら楽勝っしょ!!)


 そして何より――。


(……魔物の持ち物とか、売れたりしないかなぁ。)


 すでに討伐以外の金策まで考え始めていた。


 その背中を、セナはじっと見つめていた。


「……はぁ。」


 深いため息が漏れる。


(……どうせ、また私に頼るくせに。)


 昨日、危険な魔物に襲われていたばかりだというのに。


 今日も懲りずに格上の討伐依頼。


(……この依頼が終わったら、一度距離を置こうかしら。)


 セナは静かにそう決意した。


 だが――。


 このあと、レイの想定外すぎる行動力に巻き込まれることになるとは、まだ知る由もなかった。


 ――――――【 レイ 】――――――

 所持金(ポケットマネー):46,035G(±0G)

 現地通貨:銀貨5枚

 ―――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。