表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

20章 ローズノワール

「思ったより警備(けいび)がザルだな。おかげで助かったぜ。」

 パーカーのフードを目深にかぶった(わか)い男がミンチン学院に入ってきました。この男こそがミンチン学院に脅迫状(きょうはくじょう)を送った「ローズノワール」です。


 セーラとローラ、クリスフォードさん、カーマイケル弁護士(べんごし)、ラムダスは応接室(おうせつしつ)でミンチン先生と話をしていました。

「まさか、あの子たちにお金持ちの親戚(しんせき)がいらしたのですか?」

 (おどろ)くミンチン先生に、カーマイケル弁護士が言います。

「驚かないでくださいよ、ミンチン先生。この方はクルー大尉(たいい)のご友人で、3ヶ月もセーラさんとローラさんを(さが)していたのです。ダイヤモンド鉱山(こうざん)経営(けいえい)に失敗したかと思われましたが、後に回復(かいふく)莫大(ばくだい)利益(りえき)を生んでいます。父クルー大尉が()き今、莫大な財産は彼女(かのじょ)たちのものです。」

「おい、マリア・ミンチンはどこだ!」

 突然(とつぜん)、応接室の外で大声が(ひび)いたので外に出ると、ローズノワールがハリーにナイフを()きつけています。たまたま近くを通っていたハリーは、ローズノワールに運悪く人質(ひとじち)にされてしまったのです。

「一歩も動くんじゃねぇぞ…こいつの命が()しければな!」

 ローズノワールはナイフを持った右手を前に出して言います。ローズノワールに左腕(ひだりうで)で固定されたハリーは動くことができませんでしたが、セーラに気付くと大声で(さけ)びました。

「セーラ、()げろ!」

(さわ)ぐんじゃねぇ!」

 人質に騒がれるとまずいと感じたローズノワールは、ハリーにナイフを向けました。その騒ぎを聞きつけたニコルがかけつけてきました。

「待て!どうしてこんなことをするんだ!」

 ミンチン先生の制止(せいし)無視(むし)して近づこうとするニコルに、ローズノワールがナイフを向けます。

「動いたらその端正(たんせい)なお顔に(きず)がつくぜ、白薔薇(しろばら)様。」

「待ってくれ、なぜ(おれ)が白薔薇だということを知ってるんだ?」

 ニコルの()いに、ローズノワールはナイフを持っている右手の(こう)でかぶっているフードを(はず)して言いました。

「俺はな、金を(はら)えなくてこの学院を追い出されたフランク・パーカーだ!」

 フランクの言葉に、セーラが言いました。

「何があったのか知らないけれど、逆恨(さかうら)みをするのはよくないわ。」

 セーラは近くでもめごとがあると、すぐそこに飛び()んで仲裁(ちゅうさい)しようとするような人でした。

「ほう、いい度胸(どきょう)じゃねえか。でも、女だからって容赦(ようしゃ)しねえぞ!」

 フランクがそう言って、セーラに切りかかろうとナイフを持った右手を()り上げたときでした。音もなく後ろに回り込んでいたラムダスが投げた手裏剣(しゅりけん)がナイフに命中し、ナイフは(ゆか)に音を立てながら落ちました。

「え?どうなってるんだ?」

 ハリーは刃物(はもの)同士がぶつかる音を聞いたと思えば、自由に動けるようになっていました。フランクは床に落ちたナイフを探していたのです。ハリーには何が起こったのかわかりませんでしたが、身の危険(きけん)を感じたのかすぐに走っていきました。セーラもニコルに連れられて、フランクから(はな)れました。

 フランクがナイフを見つけて取ろうとした時、ラムダスがフランクをおさえつけ、クリスフォードさんがフランクの前に出ました。

「チェックメイトだ。」

 クリスフォードさんがこう言うと、フランクは叫びました。

「ふざけるな!何がチェックメイトだ!」

「もうすぐ警察(けいさつ)到着(とうちゃく)する。学院の関係者がこっそり通報(つうほう)していたからな。もうすぐ君はこの(おろ)かな行いのせいで逮捕(たいほ)されるだろう。」

 クリスフォードさんが言い終わると、数人の警察官(けいさつかん)がやってきました。

「フランク・パーカー、脅迫罪(きょうはくざい)未遂罪(みすいざい)現行犯(げんこうはん)で逮捕する!」

 警察官の1人がフランクに手錠(てじょう)をかけて連れて行こうとした時、セーラが言いました。

「きっと更正(こうせい)してください!あなたを愛する人がずっと待っていてくれます。」

 その言葉に、フランクはふと自分の恋人(こいびと)だったアーメンガードを思い出しました。そして、消えそうな声で言いました。

「もっと早くあんたに出会っていたら、俺の人生は変わっていただろうな。」

 そう言い終わったのを確認した警察官は、フランクを連れて学院から出てパトカーに乗りました。アメリア先生とカール先生、マルク先生は現場(げんば)にいた全員が無事でよかったと言っていましたが、防犯(ぼうはん)対策(たいさく)について考える必要(ひつよう)があるとも話していました。


「セーラ、君もけがをしていなくてよかった…!」

 緊張(きんちょう)()けたハリーは安心して、()き出してしまいました。

「これで一件落着ですね。ですが、今回のようなことが二度と起きないように学院側でも対策を練ってください。お金が払えなくなった生徒を下働きにするのはどうかと思いますよ。それと、犯罪(はんざい)()き込まれるような面倒(めんどう)ごともごめんですよ。」

 カーマイケル弁護士は、ミンチン先生に向き直って言いました。クリスフォードさんもこう言いました。

再発(さいはつ)防止策(ぼうしさく)検討(けんとう)してくれるなら、10万ポンドをこの学院に寄付(きふ)し、彼女たちを復学(ふくがく)させようと思っています。」

「わかりました。検討いたします。」

 ミンチン先生がうなずくと、クリスフォードさんとカーマイケル弁護士は安心しました。そして、となりのお屋敷(やしき)(もど)ろうとした時でした。

「待ってください!」

 ハリーは気が付いたら、セーラを追いかけていました。セーラに自分の想いを(つた)えたかったのです。

「セーラ、おいらはずっと君のことが好きだったんだ!だからさ…。」

 顔を赤らめたハリーがそう言いかけると、セーラは(やさ)しくハリーの手を(にぎ)りました。

「ええ、知っていたわ。」

 そして、セーラはハリーをじっと見つめながら、ほほを赤く()めてこう言いました。

「愛してるわ、ハリー。」

 こう言い残して去って行ったセーラの後ろ姿(すがた)を見て、ハリーの心臓(しんぞう)は高鳴っていました。セーラに手を握られたこと、「愛してる」とささやかれたことが(うれ)しかったのです。

 この日、セーラとローラはとなりのお屋敷に()まることになりました。屋根裏部屋(やねうらべや)にあったバニーユとフレーズのぬいぐるみもラムダスが回収(かいしゅう)してくれました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ