48 悪魔の子の正体
「ママ……、あたし、ママのことを探してたの……。長い間、ずっと、ずっと……」
銀髪の人形のような少女は、やはり私のことを『ママ』だと言ってきた。
「るっルシア様、まさか隠し子がいたのですかぁ?」
「そっ、そんなわけないだろ。大体、私は――」
当然、私は完全に身に覚えがないのでメリルリアの発言を否定した。
しかし、この少女は少女で嘘をついているようには見えない。どうして、そんなことを言っているのかわからないが……。
「あら、あなた見覚えがあるわぁ。あなた、アリスでしょ? リメルトリア共和国の魔導人形の……」
フィーナは少女を知っているみたいで、彼女をアリスと呼んだ。この人ってホントに知らないことないんだなー。
しかし、わからない言葉が二つあった。
リメルトリア共和国なんて国は聞いたこともないし、魔導人形なんて言葉も初耳だ。
「あっ、フィーナちゃんだ……。久しぶり……」
アリスと呼ばれた少女はフィーナをよりによってちゃん付けで呼んだ。
フィーナをそんな風に呼べるなんて、私としてはそっちの方がビックリだ。
「アリス、あなたの保護者はどこにいるのかしらぁ? あなた一人でここに来たわけじゃあないんでしょ?」
フィーナはアリスに共に来た保護者がいるはずだと尋ねた。確かにこんなに小さな子供が一人でっていうのは考えにくいけど……。
「うん、メフィストと一緒に来たんだけど、はぐれちゃったの」
アリスはフィーナの問いかけを肯定した。どうやらメフィストという人と一緒だったらしい。
しかし……、はぐれたとなると探してあげないとな。
「フィーナ様、この子のことをよくご存知なんですか?」
私はフィーナにアリスについて尋ねた。そもそも、私のことを『ママ』と呼ぶ理由もわからないし、他にも不可解な点が多いからだ。
「アリスは人間じゃあないわぁ。昔、天才的な錬金術師が居てね。彼は神の真似事をしようとして、人形に疑似的な人格を定着させたみたいなの。それが魔導人形と呼ばれる生きた人形よ。つまり、アリスは人形なの」
フィーナの話は信じられないようなものだった。生きた人形……。そんなモノを創ることが出来るなんて……。
「うげっ、確かにオレの天眼で見ても魂の形がよく見えねぇ」
ケビンもゾッとした表情でアリスを見ていた。
「それでは、どうしてアリスさんはルシア様を『ママ』と?」
メリルリアは一番気になる点を質問した。
アリスはずっと探していたとか言ってたけど、私は何のことなのかサッパリなのだ。
「妾もその辺は詳しく知らないんだけどぉ。その錬金術師には好きな女性が居て、その娘が婚約をしたことに傷心して、アリスを創ったらしいの。だから、アリスの生命のベースにはその娘の髪が使われてるらしいわ――。つまり――」
フィーナが何が言いたいのか、私にはわかった。いや、すっごく身の毛のよだつ話なんだけど。
「私の前世が関わってるってことですか? その子の誕生に私の髪の毛が使われたから――」
「さすがに察しがいいわね。そうよ、おそらくあなたは前世でその錬金術師に惚れられていたのね。はた迷惑な話でしょうけど……」
フィーナは珍しく同情するような表情をした。89回も人生をやり直してると色んなことがあったが、これはさすがに衝撃的だったな。
「で、間もなく錬金術師は自殺した。理由は惚れてた女性が婚約破棄されて自殺したから――。だから、アリスはひとりぼっちになった……。人間とも違う見た目のこの子は迫害されて行く場所が無くなったの」
「そりゃ、救えねぇ話だ……」
フィーナの言葉にケビンは顔をしかめる。確かに人間同士でも異分子を淘汰する傾向にあるから、必然的にアリスはその人間の負の部分に巻き込まれたのだろう。
「そして、彼女はある男に拾われたのぉ。メフィスト=フェレス……、最高位の悪魔でありながら、暴力や争いを好まない悪魔の社会を追放された変わり者にね……」
「悪魔――ですの?」
フィーナは唐突に悪魔という言葉を口に出した。そういう存在が昔には居たという話は知っていたが……。
「ええ、はぐれ者の彼は同じような境遇のアリスを放って置けなかったんでしょうねぇ。以来、彼はアリスの父親代わりとしてずっと彼女を守ってきたのよ」
アリスとその保護者についてフィーナは語った。
彼女は妙にアリスたちの境遇に詳しいけど、関わりがあるのだろうか?
「妾が妙にこの子たちに詳しいことが気になるかしら? ルシア」
例によってフィーナは私の心を読んでくる。
そりゃあ、もちろん気になる。
「この子たちが最終的に身を寄せた国は、リメルトリア共和国……。そこは妾が生まれた国だからよぉ」
「うぇっ? フィーナ様ってジプティア出身じゃ?」
ケビンは驚いた顔をして、そう反応した。私も勿論そう思ってた。大昔からジプティアに居るって聞いてたから。
「人生の大半はジプティアで育ってきたけど、生まれた国はリメルトリア共和国という国なのぉ。まぁ、あなたたちがこの国を知らないのは無理ないわぁ。魔界にある国だからぁ」
フィーナの言うことに驚くのにも飽きてきたが、またびっくりさせられる。
魔界だって? そんな場所に人って住めるの?
「歴史的な話は省くけど、魔界の中には種族の中で迫害された者たちが集まって自治をしている国家があるの。人間、悪魔、エルフ、ドワーフ、天使……、様々な種族のはぐれ者が集う国家――それがリメルトリア共和国。アリスとメフィストがその国に入ったのは必然よ」
差別を受けて追放された者たちが集まった国が魔界にあるとフィーナは語った。
そんな国が世の中にはあるのか……。随分と長い経験を積んでるはずなのに知らないことって多いんだな……。
そんなことを聞いた折である。コンコンというノックの音がしたので、私は部屋の中に入るように促した。
アリスをメリルリアの後ろに隠すように告げて。
「おおっ、ルシアくん、ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
部屋に入ってきたのはまるまる太った小さなハットを被った紳士――ゼルネアス公爵だ。
あれ? 今朝方にさっき帰ったと思ったけど、なんの用だろう?
「あなた、メフィストねぇ。妾に変身魔法は通じないわよ」
「なっ、コイツ……、人間じゃねぇ……!」
フィーナとケビンが同時にゼルネアス公爵に向ってそんなことを言った。
何だって? 変身魔法……、ケビンが前に私に使ったアレか!?
「これは、これは、フィーナ様ではないですか。ご無沙汰しております。変身魔法は致し方ないとお許し願いたいです。このような見た目の男が歩いていたら、パニックは避けられませんから――」
ゼルネアス公爵の声色と口調が急に変わり、彼は煙に包まれた。
そして、煙が晴れると――中からシルクハットにタキシード姿の男が立っていた。
もっとも肌の色は紫色で耳は尖っており、おおよそ人間には見えなかったが……。
そうか、彼が悪魔――メフィスト=フェレスか……。
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