捨て桜の証言
私の足元に埋められた子。
何十年も前に引き取られて、また私のもとへ戻ってきた子。
可愛い柚子。
無言の帰宅、というのだろうか。
幸せに暮らしているだろうと思っていたのに、最悪の形だ。
やはり私は死者を引き寄せてしまうようだ。
だれか。
早く私を斬り倒してくれないか。
これ以上見たくはないよ。
柚子は安らかに眠っていた。
しかし昨日、妹である鹿尾菜が掘り起こしてしまった。
そうだよ、柚子と鹿尾菜は実の姉妹だ。
同じ女が、ここへ捨てに来た。
その母親はいつも泣いていた。
誰も知らない。
この二人が姉妹であることは。
最悪の形での初対面だということも。
きっと鹿尾菜は、雛菊が家出した人、つまり柚子を殺したことしか気づいていない。
柚子と同時期に引き取られた姉妹とも言える存在の雛菊という女はひっそりと、鋭い目で鹿尾菜を睨み付けていた。
そして一目散に逃げ出す鹿尾菜を、これまた一目散に追いかけた。
鹿尾菜は蔦のようなものを持って、木の上に登った。
そして鹿尾菜を探してうろつく雛菊の首めがけてその蔦を降り下ろし顎を引っ掻けた。
細身の雛菊の体は用意に持ち上がった。
太い枝に蔦を巻き付け固定する鹿尾菜。
バタバタと苦しそうにもがく雛菊。
しかし首の蔦は離れない。
そしてしばらくして。
なんの音もしなくなった。
少し涙ぐんだその色違いの目は。
人殺しの目だった。




