囮役
黒い鳥の魔物は奇声を発しながら俺たちの元へと飛んできた。
数は……ざっと三百くらいかな。 多いな。
「戦いは終わりだ! とにかく逃げるぞ! あの数は相手をしてられん! お前らも早くしろ!」
呆然としていたエルフ達は俺の声にハッとすると、ドラゴンに乗って学舎の方へと飛んで行く。
学舎なら先生方がいるから安心だな。
〔クロエ後ろ!〕
「おわっと!?」
レインに言われて咄嗟に頭を下げると、直前まで頭があった場所を鳥が通過していった。
開いた鳥のクチバシの中には不揃いの歯がこれでもかと並んでいた。
立ち上がってレインの元へ行こうするが、すでに周りは鳥に覆い尽くされていた。
鳥は俺の周りをぐるぐる飛びながら時折クチバシを突き出してくる。 弱るのを待っているようだ。
てか、多くね?
レイン、フロース、ミセリアの周りにはほとんどいないように見えるんだけど……
〔今行くからね!〕
レインが口から炎を吹き出すが、鳥の翼からでた謎の液体に消火されてしまう。
これ、どうしよう?
ガアアアァー!
「なんだ!?」
突然の巨大な咆哮に鳥どもが散り散りになって離れて行く。
〔行きますよ、問題児〕
若干楽しそうな声を響かせながら、黒い双角の竜が俺の目の前に降り立つ。
「リガートゥル先生……行くってどこへ?」
〔校長と父さんの所だよ〕
そう言ってリガートゥルは俺をガシッと前足で掴む。
「えっ……ええ!?」
〔大丈夫、クロエ!〕
〔君達は学舎に戻りなさい。 こいつは責任もって守るから〕
〔で、でも!〕
「俺は大丈夫だから、早く行きな」
レインは渋々了承するとフロース達と学舎に向かう。
それと入れ違いに黒い鳥どもが集まってきた。
〔捕まってて〕
リガートゥルは飛び上がると力強く羽ばたき、どんどん加速していく。
「なんで俺が必要なんです?」
〔脇腹〕
「ん?……あっ、痛い」
そういえば槍が当たってたんだった。 気づいたら痛くなってきた。
〔奴らは血の匂いに誘われてくる〕
「つまり、囮ですか……」
〔そうだよ? ほら、見えてきた〕
リガートゥルがそう言ったので腕の中から顔をだして見てみる。
そこはいつもの見慣れた広い草原——の、はずだった。
草原は赤いペンキをぶちまけたような状態だった。
それは水溜りなどと生ぬるいものでは無く、もはや池と化している。
それは池の中心、上空にいるのは一本角の黒いドラゴン。 リガートゥル先生よりもさらにデカイ。 何百年もの歴史が詰まっていそうだ。
その黒い巨体の中で一際目を引いたのはズタズタの右翼だった。
長く広い翼の飛膜は穴が空き、風を受けることができなくなっている。 どうやって飛んでいるんだろうか?
マグニフィカトの背に乗っているのはガロウ校長だ。
その顔はいつもの眠たそうな顔では無く、真剣なキリッとした顔だった。
〔始まるよ——〕
リガートゥル先生に言われてハッとする。
俺たちの周りにはさっきの黒い鳥が集まってきていた。
ガロウ校長が剣を掲げ、マグニフィカトの頭に乗せる。
マグニフィカトが大きく口を開いた。
〔——校長の殺戮が〕
もう少しで一学期終わりです




