強者
眼前に現れた母さんから離れる為に後ろに下がる。
俺と母さんとの僅かな間に土の壁が迫り上がる。
おそらくフロースの作ったものだろう。
これで足が止まると思ったが、母さんはそこまで甘くない。
一瞬にして土の壁が砕けて母さんが進んで来る。
それを両脇からレインとアティアが挟むように攻撃する。
二人の姿は人化した状態だが、手足を竜の鱗が覆い、背中には身長の二倍ほどの翼がある。
ちなみにミセリアも同じような姿をしている。
これが夏休みの間に三人が得た力だ。
人化の状態でもドラゴンの時と力はほとんど変わらないが、それをより表面化することで、より一層強くなれる。
かなり早かった二人の攻撃を母さんは平然と対応した。
レインの腕を掴んで宙に投げ飛ばし、アティアの蹴りを躱すと逆に蹴り返す。 それを両腕で受けたアティアだが、衝撃を殺せずにひっくり返る。
母さんは真っ直ぐに俺に向かってきた。
俺はレインとアティアが生み出した少しの時間でシルバードを呼び出していた。
両手で持ったシルバードを思い切りふる。
母さんが死ぬなんて危惧はしない。 この程度で死ぬはずがない。
母さんは握り拳でシルバードを止めた。
剣の刃に血が流れる、が母さんの手の皮が切れただけだ。 骨は切れることはなく、指も落ちていない。
「ははは……さすがに常識はずれだなぁ」
母さんの左の貫手が俺の左腕に刺さる。
だが、それに続きは無かった。
見れば母さんの腕に地面から鎖が巻きついていた。
一瞬の隙に後ろのフロースとミセリアの場所まで下がる。
それと交代するようにミセリアが前にでる。
俺はポケットから銀色の飴を取り出した。
これはもちろんアティアが調理した父さんの血だ。
着色の技術については不明だが、効果は確かなものだ。
飴を口の中に放り込むと、すぐに傷口が痒くなってきた。
痒みが最大に達すると傷口を銀色の宝石が覆う。 それはどんどんと広がっていき、左腕全体を包む。
宝石をシルバードで叩いて砕けば、下から銀色の竜の腕が現れる。
俺が腕を変えている間、母さんはミセリアに足止めされていた。
驚いたことにミセリアは母さんの猛攻を受けきっていた。
無論母さんも全力ではないだろうが、それでも素直に凄いと言わざるをえない。
「フロース、援護頼むぞ」
「任せて!」
俺はフロースに一声かけてから、母さんに向かって走り出した。




