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#22 ゾンビの血は何色だ?


 人だ! 人がいっぱいいる! 人だ!


 山岳地帯を越えると、小規模な街を見つけたのだった。


 やっばい、泣きそう、懐かしい……。

 ……いや、懐かしくはないか。何故ならここにいる人々は皆、鼻が高くて堀が深い。日本人顔は全くと言って良いほど見当たらない。異世界顔と、表現した方がいいか。


 話は変わるが、先日孵化させた破壊竜のアカネはスクスクと急成長を遂げ、肩に乗れるいわゆる相棒と言えるほどの大きさとなった。

 食事に関して言えば、基本的にカエルで良いらしく、生で与えている。



 ……しかし、妙だ。ここまで大きな建物が建てられている割に、住人は痩せ細っていて生活が困難な状態に見える。

 きっと何かが起こったに違いない。


 ミリエル……は俺のお腹の中だし。



 「なぁ、ヘルサ? この街について詳しく教えてくれないか?」



 ミリエルが仲間になって以降登場が著しく減ったヘルサに問いかける。



 『ハイ、正シクハ、ルルルル国トイウ小規模ナ小国デアリ街デハアリマセン。カツテゾルディエード王国ニ多大ナ支援ヲ受ケ、建国サレ、ゾルディエード王国ニ最モ近イ国トナッテイマス』



 なるほど、わからん。



 「なんか、ここらへん臭くない?」

 

 

 鼻をつまみながら籠った声でミミィは呟いた。

 言われてみると確かに臭い、腐敗臭というのだろうか。



 「確かに臭いな。また俺たちの匂いとかじゃないよな」


 「わからない」



 確実にはい、と言い切れないのが少し気にかかるが否定できない現状である。


 しかしこの村にもう用がないのは確か、一晩だけここら辺で、野宿をして明日にでも出発しよう。




◆◆◆◆





 辺りは真っ暗で闇に包まれ、3人と一匹は寝付きの用意をしていた。

 不思議なことにアサキは暗くなると、赤色の目が発光するのだ。

 まるで定期的に発光する、ミミィの宝石のようだ。



 「あまり寝れそうにないのじゃ」


 「そりゃそうだろ、ずっと俺の体の中で寝てるようじゃ寝れるわけないだろ」


 「はうぁ……。おやすみ」


 「ああ、おやすみ」



 俺も何か嫌な予感を感じつつ、それを薙ぎ払うように目を閉じた。

 すっかりジンに懐いてしまったアカネはジンに包まれる形で眠りについた。

 夜になると、日中では聞こえない、虫やカエルの鳴き声が聞こえてくる。

 


 「ゲコゲコ、しぃーーん、ゲコゲコ、しぃーん、ガァウァ、ゲコゲコ、ガァアヴェ……」



 ……なんか鳴き声違くないか?

 カエルと虫はなんとなくわかった。しかしなんだガァヴェってなんだガァヴェって。知らないよそんな気色の悪い鳴き声は、まるで発声の仕方を忘れたようではないか。



 「ガァヴェアァ!!」



 ついに鳴き声はそれだけしか聞こえなくなった。それどころか声が段々大きくなってきている。

 そして、なんとなく汚臭が押し寄せてくる。それも街で体感した腐敗臭が強くなって。

 絶対にまずいと本能的に、いやここまでくると本能関係なしに察知し、皆を叩き起こす。



 「おい、お前ら起きろ!」


 

 目を擦りながら寝惚ける一同。



 「なに? もう朝なの……?」


 「いや違う、見て分からないのか? なんだこの人型モンスターは」


 

 彼等の目の前に現れたのは、ジンと背丈はそう変わらず体型も人並み。ただし違うのは体の色そして全身が腐っていること。

 そいつらは、奇怪な声を上げながら魂ある者になりふり構わず襲いかかる。カエルも虫も鳴き声がぴたりと止まったのも、きっとこいつらの仕業であろう。

 このモンスターはかの有名なモンスター、ゾンビを彷彿とさせる。いや、ゾンビなのだろう。



 「ほう? これはアンデットのゾンビじゃな」



 ミリエルは睡眠を再開しつつ淡々とそう呟く。



 「なんでそんな呑気なことを」


 「魂のない悪魔にとって、ゾンビなど置き物に過ぎぬからじゃ」


 

 ミリエルはパタリと睡眠を再開した。



 「おい! たすけろよ! ……仕方ないミミィ一緒になんとかするぞ!」


 「え、え?? うん?」



 ミミィはまだこの状況に理解が追いついていないようだ。

 ゾンビはか弱そうなアカネに向けて襲いかかる。



 「『空槍』ッ! アカネ、俺の肩に乗れ!」



 アカネに襲いかかるゾンビを『空槍』で吹き飛ばした。そしてぎこちなく羽をバタバタとさせ、アカネはジンの肩に掴まる。

 『空槍』によって吹き飛び、脳が貫通したが、ゾンビは数秒もすれば頭が欠けているのにも関わらす起き上がりジンに襲いかかる。

 これがアンデットの能力、身体のどこを失おうが死を知らず、ただ本能のまま襲い続けるのだ。



 「ヘルサ! コイツらに弱点とかないのか?」


 「ハイ、ゴザイマス。ゾンビノ唯一ソシテ最大ノ弱点、日光デス。彼等ハ日光ニ照ラサレルト、ソノ身ハ焼キ尽クサレマス」


 「なるほど、朝まで待てと? ……そんなの無理だよお! もっと他にいい手はないのか?」


 「……アナタガ以前手ニ入レタ、ソノ《聖剣サンライトソード》ハ、文字通リ太陽ノ光ノ性質ガ宿ッテオリ、アンデットヲ物理攻撃デ殺スコトガデキマス」



 なんというか、ラッキーという言葉に尽きる。その場のノリで手に入れた剣がまさかの聖剣で今の状況で超役立つとは。子供の悪戯だと思っていた。


 捨てようにも捨てきれず、そこら辺にほつぽいてあった一応聖剣である剣を拾い上げ、一応勇者であるジンはそれっぽいポーズを取りカッコつけて構える。


 そして、



 「面っ〜!!!!」



 剣道のルールについてよく知らないが適当にゾンビの頭目掛けて剣を振り下ろす。

 

 切った感覚はまるでなく、外したかと思われたがゾンビを見ると綺麗に真っ二つに割れ、切り口からゾンビが蒸発して行く。

 切った感覚がないということはそれだけの切れ味があるということ、まさにギコギコはせず一度刃が入ればすぅーと、というような感じだろう。


 とんだ剣を拾ってしまった。この剣で、もしかすると異世界無双系に路線変更できるかもしれない。

 聖剣が予想以上で驚きを隠しきれない勇者。



 「ひゃおぅ! お兄ちゃんやりぃ!」



 ジンではなく剣がチートにも関わらず、それに気づかず無邪気に褒め称えるミミィ。

 それに自分の力だと言わんばかりの顔でグッドのポーズをとる。

 


 「さあ、どんどん来い! 今の俺は何にも負ける気がしねぇ」



 ジンは調子に乗って大口を叩く。一人や二人に留まらず100や200に数を増すゾンビへ向けて。

 本来自我を持たない筈のゾンビも何かを察したのか、ミミィを無視し揃いも揃ってジンに向けて襲いかかる。



 「いや……あの、ちょっと調子乗りました……すんません!……いやぁ! くんなぁ!」








 





サンタさん、三億くらいください。

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