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#20 半袖、短パン雪の中


 青い大深林を越え、険しい雪原をのしのしと登る3人。


 「ワシは疲れたのじゃ」

 「なんだよ、もうダウンか?」

 「人聞きが悪いのじゃ、……要約すればそういう意味なのじゃが」

 「わたしも、ちょっと休憩……」


 珍しくミミィが弱気になり、深く積もった雪に倒れ込んだ。


 「なんだよ、ミミィ。珍しいな?」

 「獣人は寒さに弱いんだよ……。なんで人間のお兄ちゃんがそんな薄着でこの寒さに耐えられるの?」

 

 そういえばそう、服装は日本からので半袖短パン、その上穴だらけ。確かに寒さを感じないのは不思議だ。


 「なんかよくわかないけど。慣れちゃた、みたいな?」

 「ジンの固有スキルじゃろうな。……全く、便利な力じゃよ」

 「なるほど、寒さに《適応》した、ということか?」


 意外にも適応という言葉は範囲が曖昧で、戦闘面ではまだしも、生活面で見れば便利な能力なのかも知れない。


 「ところで、ジンよ? ワシをヌシの暖かそうな身体に入れてくれないか」

 「はっ? どういうこと?」

 「そのままじゃよ、ジンの体の中に入れて」

 「いや、意味がわからん」

 「人間には穴がたくさんあるからのお、そこに入れろということじゃ」

 「なんだよそのエロい言い方は! そして嫌だよ。俺、胃カメラとか苦手なんだよ!」

 「胃カメラ?」


 ミミィが尻尾をはてなマークにする。

 そっか、この世界には人間ドックはないのか。


 「仕方ないのお。頼むのじゃ! 頼むのじゃ!」


 ああ、出た出た。

 いつものように駄々を捏ね出すミリエル。


 「はいはい、わかった」


 術にかけられたように頷く。


 「ありがとうなのじゃ!」


 その、語尾のじゃのつけ方ホントに正しいのか? と、ツッコミを入れたくなる。

 ……都合の良い固有スキルはどっちなんだよ?


 すると、ミリエルは身体を小さく細長くしながら、ある穴へ。


 「ぢょっ!! そこから!!」


 ミミィは俺の鼻から体内へと入っていく。


 ……水道水で鼻うがいした気分。鼻につぅーんとくる痛み。

 なんか懐かしい苦痛だ!


 そんなジンを見てミミィは痛みを分け合っているかのように鼻を抑えている。


 「ゴホン! ゴホン! うわ……最悪」

 「大丈夫、お兄ちゃん!?」

 「いや、大丈夫なんだけど。……ミリエル次出てきたら鼻に『ウォーターサーブ』ぶち込んでやる」

 「あはは、……あったかいね、なんか」


 突然ミミィがホワホワした温泉帰りみたいな顔をしてジンを見つめる。


 「え、いや。バリバリ吹雪吹いてますけど!」

 「えっ、そうかな、お布団の中みたいにあたたかいよ」

 「いや、全然お布団じゃない、雪のお布団だよ? むしろ冷たいよ?」


 ミミィのねっ転がる、地面にどんどん雪が積もっていき、ミミィが埋まって行く。


 「はぁうぁ。ホットウィンジュースに、カエルの蒸し焼き。……ああ、どんどん美味しそうなものが頭に浮かんでくる」


 大きな欠伸をして、幸せそうな顔をしてそう言う。


 「大丈夫? それ、絶対ヤバいやつじゃない? そして想像するものがあまり美味しそうじゃないんだけど?!」

 「……なんか、眠くなって来ちゃった」


 小声でそう呟き、瞼を閉じるミミィ。


 「寝るなぁ!! それ死ぬやつ!」


 さすがに実の妹(?)を叩くのは気が引けたので優しく、ぽんっと触った。


 ……しかし、ミミィはさらに深く深くへと潜っていく。


 「やべぇ! 優しく叩きすぎた!」


 やむを得ず、容赦なく叩いた!

 

 すると、それに驚いたミミィが飛び起きた。

 

 結構、強すぎたかも知れない。ミミィの白い肌は真っ赤になり、心なしか腫れている。

 そして、寒さも相まって激痛だったに違いない。


 「……ごめん、強く叩きすぎた!」

 「いや! 全然いいよ! むしろ助かっ……」


 と言いかけたところでミミィが、立ったまま寝始める。

 すげぇ! と感心しつつ、容赦なく左頬にビンタをする。


 「はっ! ありがと……」


 と言いかけたところでまた寝始める。


 今度は右頬にビンタする。


 あれ、意外と楽しいぞ? これ!


 新たな性癖が誕生したかも知れない。












 

小学生のとき、真冬でも半袖短パンの猛者いなかった?

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