#19 異世界に平穏なんておかしい
あれから、荷物が一つ増えた。
ミリエルという、元魔王軍幹部にして悪魔なのだが、見た目は幼女でしかない。
しかし、ミミィと違い食べ物を必要としないのでそういう面では問題ないのだが。
問題はこいつがいると、多大な魔力でモンスターが寄り付かないのである。
結局、あの戦いではレベルが上がったわけじゃないし、その上変な奴が付いてきて大損したわけだ。
もっと優秀な奴なのだと期待してたが、そんなことはなかった。
「二人とも、獣の匂いがするのだ」
ミリエルが鼻を摘み、俺たちをゴミを見るかのような目で見る。
「「えっ?」」
「でも、わたし獣人だし、名前の通り獣の匂いがして当然なんじゃない?」
「まあ、そうだな、獣っていのは実は毛のものって言葉で哺乳類のことを指すから人間もして当然じゃ?」
当たり前のような顔をする俺たちにミリエルは
「そういう意味じゃないのだ! 全くポジティブなのか、バカなのか……。要するに臭いってことじゃ!」
「「えっ!」」
「いやいや、わたし獣人だし匂いには人一倍敏感だよ!」
「あまりの汚臭で自慢の鼻も麻痺したのだろう」
「……ヌシら水浴びをしたのはいつじゃ?」
いつだったけな、1番よく残っている記憶は獣人村の時だが……。あれ、二週間前かそれは。
思い出せ、思い出せ、他にいつかあった筈だ…………。
思い出した。そう風邪を引いたとき、風邪をひいたとき、あの時にミミィに水をかけられたのだった。
あれ、でも、それも一週間前、か…………。
えっ! 俺一週間も風呂入ってないの⁈
不潔やん、毎日外にいるのに風呂入らないの不潔やん。
ヒキニートしてるならまだしも、外で冒険擬きをしてるんだぞ、不潔やん!
俺は温泉大好き日本人失格だ……。
「ああ………」
「その様子だとしばらく入ってないのじゃな?」
落胆するジンの姿を見てミリエルはそう言った。
「とにかくだな、今日はヌシら二人に水浴びをしてほしいのだ」
◆◆◆◆
「ついたのだ! ここがカンザキ滝!」
「うわあ、綺麗だな!」
聖剣のように真っ直ぐな滝のふもとにある川はとても透明度が高い川だった。
「カンザキ滝??」
滝の名称にミミィが耳をぴくりとさせる。
「ミミィ、何か知っているのか?」
「いや、雷神様の……」
「そうだ、雷神! ミミィって雷神なをだよな! っで雷神ってなんだ?」
「雷を司る神というが……よく知らん」
物知りなミリエルも深くは知らない様子。
「まあ、とにかく。身体を水でながすのじゃ!」
ミリエルは二人を川へ押し入れた。
「「わぁ!!」」
冷たい……。服もびしょ濡れ。
……って、俺とミミィのとこだけ、水が茶色く濁っているのだが。
よっぽど汚れていたのだな。
滝の方に行き、滝をシャワーのように使い頭を洗おうとしたが、あまりの滝の勢いに首がゴキっという、1番聞いちゃまずい音が鳴った。
いてて、勢い調整ミスっているって。
「ほれぇ!!」
ミミィがジンに向かって水をかける。
「なるほど、そっちがその気なら容赦しないぞ……。『ウォーターサーブ』!!」
するとその魔法は水鉄砲のようにミミィに激突。
「やったなぁ! 『サンダーアタック』」
「えっ、ちょ。電気系は違うっ……! あだだダダダだ」
ミミィの流し込んだ電気によって俺の筋肉はビンっと力んだ。
「えへへ。やりすぎちゃった」
「やりすぎにも限度があるわ!!」
「『ウォーターアタック』!!」
そこにミリエルがジンに向かい魔法を放つ。
「戦闘なら、ワシも混ぜてくれ!」
「ちょっ、いてぇよ戦闘狂」
やっぱり、異世界に来たのちょっぴり後悔している……! うわぁぁああ
「こっちに撃ってくんな‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
外寒い。冬眠したい。




