#16 プライド
ミリエルはミミィによってかなりの重傷を負っている。
「くっ、雷神の完全体になりつつあるのじゃ……。仕方ない、ワシが本気を出す時が来たようじゃ」
ミミィに押されつつあるミリエルはそう呟いた。
そして、ミリエルはありったけの魔力を外部に放出した。
ミミィはミリエルから剥がされる。
「さて、究極の魔法を見せてやろう。ワシの操る最強魔法……」
そう言うと、ミリエルに手のひらを向ける。すると何重にも重複した魔法陣がミリエルの手から広がる。
「《デーモンショック》!!」
ミリエルがそう唱えると、魔法陣が交差を始め、そして……
あっという間だった、恐ろしい紫な妖気を纏ったそれは、見ただけで死を錯覚させるほどの恐怖、吐き気を催した。
「《サンダーアタック》!」
ミミィも俺の知らない魔法で対抗する、しかしあの魔法の前では無力、すぐに取り込まれてしまう。
……今度こそ、終わりだ。俺はただ見ていることしか出来なかった。
そしてミミィもあの魔法に飲み込まれた。
俺も…………。
俺はなにも感じなかった。
身体を起こして周りを見る。
見えたのは倒れるミミィ、そして息を荒げるミリエル。
なぜなのだ何故生きているんだ。
不幸中の幸いかわからないが、ミミィの息はまだあるようだ。
俺はゆっくりと立ち上がる。
ここで俺がやらなきゃ、みんな死ぬ。
卑怯かもしれないが、ミリエルはかなり消耗している。うまくいけば、俺でも……。
「《ヒーリング》」
そのセリフが俺を絶望の底に叩きつけた。
《ヒーリング》、にわかな俺でも知っている、有名な回復魔法。
そしていまミリエルはそれを使い、身体の傷が全身、癒えている。
「さて第二ラウンドと行こうか勇者さんや」
ミリエルはゆっくりと俺の方へ歩みを寄せてくる。
「……くそっ!」
ミリエルに我武者羅に殴りかかるが、すっと避けられ、反撃の光線により腿に深い切り傷が入る。
さっきの戦闘のギャップもあり、明らかにつまらなそうな顔をしている。
「ワシもずいぶん楽しめたのじゃ、もう帰っても構わん」
はっ?
そしてミリエルは当たり前のように背を向け、白の奥の方へ歩き出した。
このまま帰れば二人とも助かる、のか。
…………いいのか、それで?
その行為は自分のプライドを捨てることとなる。それは結果的に負けていないとはいえ、一種の敗北。
これを経験したことで、この世界での足枷となる。
気づいた時には僕は走り出していた。
命よりプライドを選んだ俺はなんてバカなんだ、まるで戦国大名ではないか。
「最後のチャンスを失ったな」
そしてミリエルは光線を俺に放った。
目を瞑り、死を覚悟した。
今日も1日、頑張りました。




