#13 命と命は同価値?
強化魔法をかけたこともあり、ミミィと並走できている。
そして堂々と仁王立ちをするミリエルに向けて拳を振るうが、さっと後ろに避けられてしまう。
ミリエルは動作のないまま、
「《暗黒光線》」
と詠唱すると、ミリエルの背中から右往左往へと飛び交う黒い光線が飛び出した。
不意をつかれ、魔法攻撃耐性Ⅰがあるにしても脇腹にもろに食らい身体を貫通した。脇腹だけではなく腕や脚の節々に擦り傷をつくった。
ミミィは持ち前の反射神経で傷一つないようだが避けるので手一杯に見える。
助けてやりたいが、俺は避けるのすらできていないのでそんなことはまず、できない。
反撃をする隙がまるでない、常に動き続ける《暗黒光線》により、一歩も進めない状況、身体は擦り傷だらけ、腹からは血がダラダラと垂れている。
このまま、俺とミリエルとの体力と魔力の勝負のままだと勝つ気がしない。
それに万が一ミリエルが魔力が底を尽きたとしても、ここまでのやつが体術が弱いとは思えない。
強さは見た目で測れない、これがこの異世界で学んだ教訓である。
「ミミィ、ここは一旦引くぞ!」
「うん、わかった!」
ミミィが振り向いたのも束の間。よそ見をしたミミィに光線が襲いかかる。
「おっと!」
ギリギリのところでミミィが咄嗟に反応して避ける。
「ふむ、あれを避けるとは……」
なにかを呟いたミリエルは攻撃を続くけたまま、紫色の瞳を見開き、ミミィを凝視した。
「おもしろい! 雷神の末裔!」
今度は俺の方を見る。
「それに勇者! 豪華な面子じゃ。しかしまだ経験が足りない、ワシの足元にも及ばぬ」
さらにミリエムは攻撃のスピードを速めた。
着地すると足下を、飛び上がると上を狙われる。
くそ、手も足も出ないとはこういうことか、
「ミミィ、耐えろ! きっと何かが見えて来るはずだ」
多分見えて来るものなんて何もない、かと言って今逃げれる状況でもない。
体力が底無しと思われたミミィも随分と呼吸が荒くなっている。
「がぁぅ!」
ついに俺より先にミミィがへばり、今まで当たっていなかった攻撃も微かに当たるようになってくる。
「雷神の末裔は勇者に比べ、余計な動き我多い、このままお終いか……」
ミリエルはまた何かを呟いていたが光線の音で何も聞こえない。
ある時、ミミィは少し着地の時に足を滑らせたのか、上体が前に倒れた。
それを狙うようにミミィの肩を光線が貫通した。
「あガァ!」
ミミィは悲鳴を上げ肩を抑える。
するとミミィの動きがだんだん遅くなり、次々に身体を貫通していく。
俺はそれをただ見ている事しか出来ない。
ついに胸を貫かれた、宝石がピカんっと光った。ミミィは、ばさりと身体の力を抜かれたように倒れた。
すると俺たちに向けて放たれた光線が止んだ。
慌てて倒れたミミィの元へと駆け込む、血だらけで猫耳か垂れている。
「なあ、おい」
……息がない…………
…………………。
「ミミィぃぃ!!!!」
笑顔をしないミミィ。開いた瞳はどこを見ているのかわからない。
身体中、血が流れ出ていて、特に胸からは沢山の出血をしている。
「ミミィ! ミミィ! 返事をしろミミィ!」
生き物はなんて脆いんだ、今まで生きてきた時間も全て短い時間で一瞬であの一撃だけで全てを無くしてしまう。
何度呼びかけてもミミィはあの笑顔で俺を見つめることはない。
泣き崩れ、何度もミミィの胸で泣きじゃくれる。
「ごめん、ごめん、ごめん!」
何度も謝罪をする、当のミミィには届かないことは知っていても。
それでも謝りたい、ミミィを村に帰してやれなかった事、こんな危険に巻き込んでしまった事。
「人間はわからんのー。なぜそんなに悲しむ勇者さんや?」
呆れたように悪魔は言う。
ミミィを殺したのはコイツ、なぜそんな平然としているのかわからない。
殺したんだ、殺したんだぞ、人を!
「いま、ワシに人を殺したのに何故、こんなにも平然としているんだ、と思っただろ」
涙でびしょびしょになった、目を拭い、悪魔を睨みつける。
「理由は簡単だ、命など全て平等だからだ。逆に聞くが、ヌシは肉を食ったことはないのか? 鬱陶しい虫を潰したことはないのか? 生き物はどんな形であろうと必ず死ぬ、それが早まっただけじゃないか。それにもし生きていてもこれから苦しいことが沢山あるだけだろ」
言っていることは間違っちゃいない、でもコイツは人生というものがまるでわかっちゃいない。
「あのな、人生っていうのはだな……」
「まあ、条件を飲めば、そやつを生き返らせてやらんでもない」
…………。
「特別だぞ、久々に暇つぶしにはなったからな」
暇つぶしという言葉に少々引っ掛かったが、それどころじゃない。
「それで条件って……」
唾をごくりと呑んだ。
「もちろん命じゃ」
命、か。
「わかったすぐに、そこら辺の動物を狩ってくるから……」
「間に合わんじゃろうな、残念ながらこの魔法は死んでから5分以内に使わんと意味がないのじゃ」
…………………。
「じゃあ、俺の命で構わん」
決心した。
「本当に良いのだな?」
「……ああ」
1ヶ月、いや2ヶ月くらい経ったのかな? わからないや、ヘルサも何も言わないヘルプサービスシステムなら、ちゃんとヘルプして職務を全うしろよ(笑)!
まあ、いろいろあった、便利な地球の生活より不便だが自由なこっちの方が好きだ。
まあ、要するに。悔いはないということだ。
「さ、契約の儀を始める。こっちへ来るのじゃ」
俺は目を瞑り、考えるのをやめた。
ミリエルは僕の頭の上でも早口で呪文を詠唱している。
この呪文が聞こえなくなった時、俺は死にミミィは蘇るのだろう。
そしてミリエルの呪文が聞こえなくなった。
……なんともない。まさか失敗したとかではないだろうな? 5分経ってしまったわけではないよな?
驚いて、目をあける。
そこには、俺以上に驚いた顔をするミリエル。
「なぜじゃ、なぜなのじゃ、なぜ魔法が効かぬ、まさか……」
ミリエルの視線が俺の背後に移る。
「ありがとう」
ちょっと遅れました!




