Scene14 -3-
イカロスは上空12000メートルを飛行し、日本の陸地に到着したところから急降下を開始。そのまま後部ハンガーのハッチを開いた。
「先に行くぜ。ジェットセイバー発進!」
4基のインパルスドライブに火が入り飛び出したセイバーは、鳥型機械獣に向かって降下していく。エアロジェットによって姿勢を整えつつ東京の2000メートル上空を悠々と飛ぶ機械獣へ迫るセイバーは、接触まであと3秒というところで姿勢を変えた。
「メテオ……ストラーーーーイク!」
高高度から機械獣の背部への強襲するセイバーの蹴りは、急激な加速をみせた機械獣には当たらず。そのまま地面に向けて突っ込んでいく。
「うおぅ」
かわされることを想定していなかったセイバーは慌てて可動する2基のインパルスドライブと姿勢制御用のエアロジェットを全開に減速しつつ進行方向を水平に変えた。
「おいおい、大丈夫か?」
少し呆れ気味のレオンの声。
「いや、まさかあの攻撃に気づいて避けるとは思わなかった。レオンたちも油断するなよ」
「こっちのセリフだ」
続いて降下してきたイカロスからレオンとノエルが飛び出し、ノエルは牽制のために旋回している機械獣を狙撃ながら2体のガイファルドが着地する。
ピピッ
イカロスからの入電。
「やっと決まった」
「何がだ?」
博士の言葉にレオンが問い返す。
「あの鳥型機械獣の呼称はストレニックスだ」
「倒しちまうんだから名前なんてどうでもいいだろ」
「否! 記録に残していく中で名前は必須だ」
確かに記録に残すのに名前はあった方がいいのだが、ホントの理由をセイバーが語った。
「この戦いが全て終わったら本を出したいんだって。それと神王寺の玩具部門でムー帝国側も発売する計画もあるって言うから」
「そいつは商魂たくましいな」
GOTの資金繰りが厳しいという話はないが、資金はあるに越したことはない。
「そのためには負けるわけにはいかないな。とか気合を入れる理由にしてはちょっときつい」
とレオンの口から気合が抜ける。
「その名前の由来はなに?」
エマは話に乗っからず、その名前の由来を博士にした質問した。
「strange birdとPhoenix を掛け合わせた」
「怪鳥……不死鳥……。敵に不死鳥とか付けるのってちょっと抵抗ない?」
ストレニックスを追従しながら不満を漏らすセイバー。
「ガイファルドやセガロイドのネーミングに比べると安易だな」
「適当……」
レオンとノエルも安易なネーミングに否定的な意見を返すと博士は言葉を付け足した。
「今回のネーミングは僕じゃなくて剛田君なんだけどね」
「「「…………」」」
「行くぞ、ストレニックス!」
「Come on! stranix」
「焼き鳥は好き」
各々気合を入れて未知なる機械獣に向かっていく。
鳥型機械獣であるストレニックスは、翼を広げた全幅で30メートルほどあり、飛行速度はジェットセイバーよりも速い。反面ジェットセイバーに比べて小回りは利かないと予想される。
「セイバーは可能な限りストレニックスより上空から牽制。でもあまり高くは上がってはダメ。わたしたちの攻撃が届かなくなる」
この作戦はレオン・ノエルの地上組と飛行できるセイバーとで上下から挟み討つのと、ノエルたちに対する機械獣の攻撃による地上への被害を減らす目的だ。
「どんな攻撃をしてくるかわからな……」
ノエルからの指示のさなかでストレニックスはセイバーに対して嘴を開いて炎弾を撃ってきた。
「ありそうな攻撃だな」
姿勢を傾けながら回避したセイバーの側面を横切った炎弾は海上に向かって消えていく。
「蜂型のエアロバレットに比べて高威力の砲撃。地上に向かって撃たれるのはまずい」
セイバーに追われるカタチで飛行するストレニックスは体を正面に向けて翼を広げ急減速すると、その開いた翼を羽ばたかせて地上のノエルとレオンに向かって何かを撃ち出した。
「フォースフィールド全開」
「おう!」
2体のガイファルドはフィールドの圧力と範囲を広げ、雨のように降り注ぐ攻撃を防ぐ。
ゲリラ豪雨みたいな激しい音を立てながら降り注いだ雨は1秒程度で止んだが、2体の周りはその雨によってズタズタになってしまってた。
「あれもありそうな攻撃だけど、地上への被害が大きい」
ガイファルドたちが戦闘しているあいだに、イカロスはストレニックスの分析をおこなっていた。
「上腕、前腕にあたる部分が浮力を生んでいるようです。初列風切は主に推進力を、次列風切は先ほどの攻撃のようにエネルギー弾を射出機構になっています」
初列風切。鳥の羽の外側から中間あたりまでの羽である、次列風切は中間から羽の根本あたりまでのことだ。
飛行速度がジェットセイバーより速く追いつけないため、セイバーは空中格闘戦に持ち込めない。射撃をしようにもセイバーの射撃の腕前では動く標的を的確に狙うことができず、地上へ被害を出しかねないため使えなかった。
これにより、機械虫群が到着するまでにストレニックスを倒したいというガーディアンズの目論見は崩れた。
「This is not good! 虫どもがもうすぐそこまで来てやがる」
機械獣は悠々と空を飛び回り、ときおり攻撃してくるだけで、ガイファルドと正面から戦う素振りを見せなかった。
「おとり……?」
「時間稼ぎ的な……か?」
押し寄せる機械虫群を標的にヘビーアームズの火力を向けると、ストレニックスは突如方向を変えて加速した。
「そっちに行ったぞ!」
セイバーの声と通信とダブルハートを使ったテレパシーがふたりに届く。見上げたふたりに向かって扇がれた翼から光刃渦巻く竜巻が放たれた。光刃の竜巻はフォースフィールドを切り裂いて2体のガイファルドを吹き倒す。横転するガイファルドに向かって開口した嘴からはセイバーに向かって撃ち出したモノに倍する炎弾が発射された。
「舐めるな!」
叫び声に合わせてレオンが撃ったフルバーストが炎弾をエネルギーを吹き散らした。ほぼ同時にヘビーアームズのミサイルが全弾発射され、弾けた炎弾のエネルギーを貫いてストレニックスに向かっていく。
大きな羽ばたきから生み出されたDゾーンの渦がマイクロミサイルと誘導弾を巻き込んで誘爆させた。
「こいつ、本性を現しやがったな」
背後から殴りかかるセイバーに対し首を向けたストレニックスはその嘴を開くと、今度は炎弾ではなく甲高い快音を発した。
振動する波が連続しセイバーを叩きつける。セイバーは何枚もの壁にぶつけられたような衝撃を受けて減速し、弾かれてしまった。
「さすが機械獣だな。あのスフィンクスに劣らない強さだぜ」
機械虫とは一線を画す強さにガイファルドたちは苦戦する。そうこうしているあいだにも機械虫の群れは視界に入るところまで迫っていた。
「ここは任せた!」
レオンは立ち上がって迫る機械虫たちに向かって走り出す。
「任された」
それを目で追うこともせずにノエルは左腕にマウントしているガトリングガンを斉射。
ガラガラガラという軽い金属音がしてガトリングガンの弾丸が弾かれるのは機械獣が展開するDゾーンが弾速を減衰させてしまっているからだ。距離も遠いことからフォースコーティングされた弾丸であっても大きな効果が得られない。
レオンは先頭を走ってくる機械虫に突進の勢いを乗せた足刀蹴りを入れて突き飛ばし、続けて2匹目を頭部を殴り千切る。
「おらぁ!」
3匹目の顎を蹴り上げてひっくり返すのだが、4匹目、5匹目と迫る機械虫たちはレオンを無視して走り抜けていく。
「こいつら以前と同じように俺に目もくれずに走り抜けていきやがるぞ」
正面からくる機械虫だけをほぼ一撃で屠ることはできても、向かって来ない者たちを止めることはできない。
「ノエル、そっちに行ったぞ!」
「了解」
ストレニックスから素早く照準を切り替えたノエルはヘビーアームズのミサイルコンテナを展開。右腕の大口径ビームランチャーにエネルギーを充填しつつミサイルを斉射した。
その直後、ストレニックスはそのミサイル群に錐揉状態で飛び込み、翼から発する光刃によってすべて撃ち落とす。巻き起こった強風によってガトリングの弾丸も照準も狂わされ機械虫群にはほとんど被害を与えることができなかった。
「調子になるな!」
ストレニックスがミサイルを撃ち落としに向かうことを察したセイバーは側面から接近して錐揉み状態から復帰したところを痛烈に殴りつけた。ようやく一撃を入れたのだが、怪鳥は多少揺らいだだけでセイバーを置いて上昇していく。
「くそっ、戦いづらい」
自分より上空に上がったことで照準に地上が入らなくなったため、セイバーは翼にマウントしたバリアブルガンとミサイルで攻撃。
「こいつはオレがなんとするから、ふたりは機械虫を。奴らの行動から考えると、ウォリアーやウィザードと同じようにまた別のセガロイドを解放させる可能性があるぞ」
セイバーの言葉を受けてノエルとレオンは走り出した。
「我々も機械虫の攻撃に加わる」
イカロスの艦長ヤマトは操舵士のジョーに指示を出した。
「北斗、投下爆雷準備、誘導弾装填だ」
「アイ・サー」
「B級上位以上の機械虫をチェック。エネルギー弾での攻撃に注意。ストレニックスからも目を離すな。後方から撃たれるぞ」
「はい」
旋回したイカロスは先頭を走る機械虫に向かった。




