Scene10 -1-
ガイファルドたちがメディカルプールの中で修復がおこなわれる中、その共命者たちも消耗した体力と精神を回復させるためにそれぞれ療養していた。
帰投から三十六時間が経過し、ようやく回復の兆しが見え始めた頃、いち早くトレーニングを開始したのはアクトだった。
一番未熟であるという自覚もさることながら、自分ができるのはコツコツと努力を重ねることであるという性格。そして、もうひとつの理由、じっとしていることが不安でならなかったのだ。
基本的にガイファルドでどんなに激しく戦っても肉体的ダメージはないのだが、体力や精神力の低下はトレーニング効率を下げるので、アクトも十分な休養を取るべきであるとは知っていたのだが、飛行型や大型といった特異型械虫に続き機械獣と呼称すべき手ごわい新たな敵が現れた矢先、ガイファルドに似通った人型の巨人が現れてはじっとしてなどいられなかった。
すでに1時間以上自身の能力向上と不安を拭い去るためのトレーニングに黙々と励んでいた。
コンコン
壁を叩く音に気が付き振り向くと、そこにはルークが立っていた。
「もう大丈夫なのか?」
「心身の疲労という意味ではまだまだだけど、肉体的には問題ない。レオンは酷いもんだけどな」
今回の戦いで一番ダメージが深いのは灰色の巨人にやられたレオンだ。セイバーの初戦ほどではないにしても修復に数日は必要だとわかる。
それに、肉体的には問題ないとは言っても共命体が受けたダメージ箇所に幻痛といったような感覚がある。ルークの見えないダメージが想像ができるのは、アクトが同じようにボロボロになったことがあるからだ。当然アクトも手刀で斬られた胸が少々疼いていた。
「お前も精が出るねぇ。いつもそうだが頑張り過ぎじゃないのか?」
「それは俺が」
「一番未熟だからとかそういうことだろ?」
「そ、そうだよ。それに元々ガイファルドとの適性が低いんだからこれくらいやらないと」
理由のひとつを先に言われ、もうひとつの理由を付け足して答えると、ルークは人差し指を立てた。
「それだよ」
「それ?」
アクトはトレーニングの合間の休憩に息を整えながら首を傾げる。
「お前みたいになりたいって言った話を覚えてないのか?」
前回の出撃前にそんな話をしたことを思い出した。今思えば、「帰ってきたら教えろ」なんて約束したことが『フラグ』にならなくて良かったと思えていた。それくらいきわどい戦いだったからだ。
「で、それってなんだよ」
改めて聞き返すと、ルークは腕を組んでこう答えた。
「ほら、俺って天才肌だからさ、肉体的にも格闘術もガイファルドの適性も高いわけよ。最近まで機械虫に苦戦したことないしな」
「自慢か!」
突っ込むアクトに手のひらを向けて話を付け足す。
「目標に対して計画を立てて取り組んで、まぁちゃんと達成して結果も出してきたしな」
「自慢か!」
再び突っ込むアクト。
「だけどな……見えない壁とか不可能なこととか、知らされた限界とかそういったことに対しての挑戦、いや違うな、挑戦心はあるんだけど、上手い言葉が出てこないな」
「努力と根性か?」
ルークの背後から助け舟が入れたのはチーフメカニックの剛田だった。
「俺は努力してきたことが努力と感じなくなるくらい普通になったときに初めて努力したのだと言えると思っている。その努力に至るまで苦しく思えたことを乗り超えるまで頑張る力が根性か? 人それぞれかもしれないがな」
「おやっさんの言う通りだ。アクトはまさにそれだろ。俺は精神的に疲れるのが苦手でさ。瞬間的には燃え上がるんだけどそんな風に先が見えないことに一歩一歩踏みしめて登っていくなんて……。たどり着けるかもわかならな途方もない道を選んだりはしてきてない」
「それって褒めてるのか? 無駄な努力にエネルギー使って大変なって言ってるように聞こえないでもないけど」
「そんなニュアンスも含まれているけど」
「おい!」
「だけどお前を見ててそういうのもやってみる価値があるのかなって思ったわけ」
アクトは何が良いのかわからなかったが、きっと無いものねだりなんだろうと思った。アクトもルークの超楽観さとエマの冷静さに対して思っている。
「自分の個性で相手の足りない部分を補うってのが仲間ってもんさ!」
この人の個性である『相手にそうだと思わせる力のある大きな声』が部屋に響いた。
「どうだ、少し元気になったか。飯の前で悪いがミーティングだ。この間の戦闘やら新たな敵やらについて早急に対策を立てないといかん」
「何かわかったんですか?」
見えない不安をひとつでも解消したく、アクトは剛田に問いかけた。
「戦いが有利になるわけじゃないがわかったことはある。作戦室で博士が待ってる」
ふたりは剛田を追い越して博士の居る作戦室に走って向かった。
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