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Scene9 -11-

  四体の巨人が砂地に倒れて動かない。

  謎の巨人を相手に三体のガイファルドの連携によってどうにか倒したのだが、それまで静かにしていた機械獣が吠えたことでこちらの状況が圧倒的に不利なのだとイカロスの隊員たちは把握する。


  「セイバーとレオンのダメージが深そうだ。ノエルも意識が飛びかけている。回収して戦線を離脱する」


  「ガイファルド、戦線を離脱します。回収のため高度を落としますのでイカロスに戻ってください」


  イカロスは下方の戦況を見ながら旋回して高度を下げていく。謎の巨人もダメージは浅くないはずだが、その横に駆けつけた機械獣は目立ったダメージは見受けられない。このまま戦闘が再開すればもう勝ち目はないだろうと判断し、撤退の判断を下した。


  「いてててて」


  全身傷だらけで渾身の一撃を放ったレオンが立ち上がる。続けて拳を打ち合ったセイバーも体をふらつかせながら立ち上がったが、ダブルハートの強い輝きはすでに静まっていた。


  「セイバー、ノエルを連れて先に行け。奴らが動いたら俺が食い止める」


  「でも、もしそうなったらひとりであいつらを止められっこないだろ」


  「言い合ってる時間はない、早く行け」


  ためらいながらノエルのそばに駆け寄って肩を抱えたセイバーは、レオンの背後で降下してくるイカロスを待った。

  唸る機械獣の横で紫の鎧をギラつかせゆっくりと上体を起こすその巨人の胸には、深々と傷跡が刻まれていた。

  傷からは青い液体が流れだし、時折バチっと火花が走る。胸を押さえながら立ち上がった巨人が自分を睨みつけているようにレオンは思えた。それは何かしらの感情が自分たちに向けられていると感じたからだ。


  『来るか?!』


  レオンも生体装甲が激しく損傷するほど打ちのめされている。正直立っているのさえ苦痛に感じるほどだ。レオンにこのほどのダメージがなければ、先ほどの攻撃でもっと深手を負わせていたはずだったのだが、それでもダメージ的には相手の方が大きいとレオンは手ごたえを感じていた。


  軋む音を立てながら謎の巨人が構えを取ると右腕の肘から下が崩れ落ちた。

  セイバーとの打ち合いによるものであろうが、普通に考えれば不自然なダメージの表れ方だ。


  「(目覚めたばかりで状態が万全ではなかったか)」


  崩れ落ちた右腕を見ても前に出ようとする巨人に対して、機械獣はそれを止めるように進路を塞いだ。


  「お前が相手か」


  初めてみる獣型に警戒しつつ、腰を落として身構える。

  ピラミッドを丸々覆うほどのDゾーンはすでにないのだが、謎の巨人と機械獣が発する何かしらの意志や存在感が同等の力となってガイファルドに向けれていた。だがその実、巨人と機械獣が放つ力はガイファルドに向けられたモノではなく、ただ漏れ出した余剰圧なのだった。力の差か幻覚か、ガイファルドたちには驚異的な力として感じていた。


  精神をすり減らす長大な数秒の後に、何かしら機械獣に声を掛けて構えを解いたその巨人は、翼を広げた機械獣の背中に飛び乗る。


  「(勝負は預ける。万全の状態になったらもう一度勝負だ。そのときはもっと上位のバドルを連れて来い)」


  と何かを告げで飛び去った。


  巨人を乗せた機械獣が見えなくなるとやっとそこでレオンは握り込んでいた拳を緩め、ノエルを担いでいたセイバーも膝を付く。


  「これは……見逃してもらったってことなんだろうな」


  「たぶんね」


  「強かった」


  いつの間にか意識を取り戻していたノエルが悔しさを込めて言った。


  「他の機械虫たちも引いていきます。同盟軍は残存勢力を掃討中です」


  「それは助かるな。今から助勢に行くのはちょっと……、いや正直かなり辛いぜ」


  アクトは出撃の度に心身共に疲れていたのだが、このところルークは出撃して辛いと思ったことはなかった。そのルークが「辛い」と言うほどの戦いだったのだ。


  『これが本当の戦いってもんか』


  「しっかしあいつは何者だったんだろうな。どうやら俺たちと違ってガイファルドってわけじゃなさそうだぜ」


  「なんでそう思ったんだ?」


  「俺が付けた傷、損傷した部位がメカだった」


  ガイファルドの体は生きた金属といったもので、細かく見れば人間の細胞のような構造をしている。かなり塞ぎかけているが、セイバーの胸の傷は人が斬られたのに近い状態だったのを考えると、メカニカルな構造をしている謎の巨人は、ガイファルドとは違う個体だということがハッキリとわかる。


  謎を残したままガーディアンズ隊員たちはピラミッドが消えて更地となったこの場所をあとにし、共命者たち三人はイカロスの中で眠りながら帰投した。

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