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Scene17 -3-

機械虫の大群の第一波を退け、第二波が到着するまでの時間。謎の黒い球体を発見した部隊がその球体を攻撃するとその球体の中から現れたイミットともセガロイドとも違う新たな敵によって反撃を受けて全滅した。


世界軍事同盟軍の情報開示が遅れたことでGOTの機動重機は出遅れる。彼らが駆けつけ一戦交えたとき、その相手が破壊されたはずのガンバトラーだということが発覚した。


「セガロイドによって? 復讐?」


仲間であったガンバトラーとは結びつかない発現に、機動重機たちは思考の整理がつかない。目の前に立つ敵がガンバトラーであるという事実もいまだ受け止められずにいた。


この情報がGOTを経てガーディアンズに共有されたのは二分遅れ。ガンバトラーだという敵機がナグラックの首を締め上げ持ち上げて、しばらくしてからだった。


隊員もガイファルドたちも言葉がない。新型の人型機動兵器がガンバトラーであり、その体はセガロイドから与えられたものであり、復讐のためにセガロイド側に付いて彼らの前に現れた。


こんなこと誰も予想できるものではなく、驚愕に震えるばかりなのだが、心の片隅ではガンバトラーが生きていたことを嬉しく思ってしまっていた。


ガンバトラーはつり上げているナグラックを投げるように降ろして言った。


「今日はお前たちに挨拶に来ただけで戦いに来たわけじゃない。標的もいないしな」


ガンバトラーは彼らに背中を見せる。


「待てよ。お前は俺たちの敵になったってことか?」


「違う」


ゼトラキャノンの問いをガンバトラーは否定した。


「お前たちが邪魔さえしなければな」


目的、つまり復讐に対して邪魔をしなければという条件があった。


そこまで言ってガンバトラーは空に飛び立ち去っていく。


「待ってくれ。行かないでくれ!」


しかし、こう叫ぶガードロンに振り向くことはない。


突然の出来事が機動重機たちに及ぼす影響は大きい。このあと三十分も経たないうちに、機械虫群の第二波がやってきたのだが、彼らのAIの乱れが戻ることはなく、その動きは精彩を欠き、本来の力を発揮できずにいた。


第二防衛ラインに達した機械虫群。その数は防衛部隊の十二倍。苦戦必至の状況だが、機械虫群の中に人型兵器イミットがいなかったことだけは幸いだった。


この戦況を見てGOT司令官の翔子は思う。C国のエネルギー施設を奪取するために投入された戦力として、数はともかく主力となるような者がいないことに疑問があった。


「A級は確かに脅威だけど、これだけの機動兵器が集まれば倒せないことはないわ。連結型も同様ね。恐ろしいけど連結分数が減る。この広いC国ならば爆撃もできるし」


「イミットが数体いるだけでもかなり違うよね。それってC国の施設を狙うことが本命じゃないとか?」


翔子と舞歌のこの話は的中した。C国の北部に位置するR国のエネルギー施設にイミットとセガロイドであるウィザードが現れる。C国へ戦力を()いてしまっていること、同盟軍も同様であること、そして、その施設が同盟軍にも秘密にしていたこともあり、あっさりと落城して奪われてしまったのだ。


東シベリア海に近い辺境に作られた地下エネルギー施設。そこF国には及ばないまでも大きなエネルギー施設であった。


この報はC国を襲う機械虫郡を殲滅してから半日後に知らされることになる。


「やっぱりねぇ。あれだけの機械虫の大群がたんなる(おとり)だったのねぇ」


ダルそうに、馬鹿げたことだと(あき)れて言う舞歌。


「物量戦において人類はムー帝国に遅れを取っています」


翔子が答えた。


「C国のエネルギー施設も狙ってはいたんでしょうけど、本命はR国の極秘施設だったわけですね。海から出てくる機械虫群が内陸部深くに侵攻すれば、世界軍事同盟軍は迎撃の準備を整える時間がありますが、海に近い場所はそうもいきませんから」


「だよね。それもまた同盟軍内で隠し事なんかしてさ」


A国しかり、C国しかり、そしてR国しかりだ。


「世界のトップを狙う大国ってのはそういうモノよ。ただ、足の引っ張りあいはしないで欲しいわよね」


「それを言ったらあたしらはどうなの? 日本という国でありながらGOTなんて組織で活動してるじゃない」


「私たちはいいのよ。世界軍事同盟軍に所属しているわけじゃないし、日本との関係だってただの一企業に過ぎないわ」


「ただの……?」


「そうただの」


翔子は目の笑っていない笑みを舞歌に返した。


「以前はともかく今は人々を守るために戦う組織。そして、ガーディアンズの支援や隠れミノとなるための存在よ。今はね」


「なによ、その含みある言い方は」


翔子は気品や女性らしさを持ち合わせ、仕事もでき、社交性もあり、優しくて人に頼られる信頼も得ている。だが、それだけではなく少しばかりの腹黒さがある。これが長男の雷翔(ライト)が持ち合わせていない部分であり、司令官という役職に就いている要因だと舞歌は理解していた。


「さぁて、私はこれからガーディアンズの方々と会議があるから行ってくるわ。機動重機たちが戻ってきたら(ねぎら)ってあげてね」


「それってガンバトラーの件?」


少しトーンを落として聞く舞歌に翔子は言う。


「ガンバトラーはGOTの管轄だけど、ムー帝国が絡んでいるとなると我々だけでどうこうする事態ではないわ。次に現れたときにどう対処するか。それもちゃんと決めておかないと、機動重機たちも困るだろうから」


翔子はジャケットを持って部屋を出ていった。


「ちゃんと決めた内容に対して困ることになるんじゃないの? 機動重機たちがさ」

それは、ガンバトラーを敵として認定した場合だ。

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