Scene17 -2-
あらたな敵性人型機動兵器の情報はすぐに世界軍事同盟内で共有されるのだが、同盟軍ではないGOTはその限りではなく、新たな敵に対する対処が遅れることになる。
GOT本部にその情報が届けられたときには世界軍事同盟の後方支援部隊は大打撃を受けており、補給を終えた小隊も順次参戦するのだが、次々に破壊されていった。
「全機動重機隊へ。新型の敵性機動兵器が現れた模様。補給を完了後、ただちに前線へ」
司令官の翔子の指示を受けた機動重機隊が色めきたった。
一番長いエネルギーチャージを要するゼトラキャノンの補給が完了した機動重機部隊が前線に赴くと、そこには破壊された機動兵器の残骸と、生き残ったパイロットたちが逃げていく姿が目に入った。
「僕は同盟軍のパイロットたちの退却を支援する。みんなは新型を牽制して時間を稼ぐんだ」
ガードロンの指示を受けて機動重機隊は動き出す。
砲撃の流れ弾にパイロットたちが巻き込まれないようにとゼトラキャノンとシェンダーは横に回り込み、正面からはナグラックが近接格闘を挑んでいった。
ガードロンは生身を晒して撤退するパイロットたちへ攻撃がされた場合の盾となって身構える。
新型の敵性機動兵器は肩部から伸びる砲塔を背面に畳んでナグラックと格闘戦をおこないつつ、左右からの砲撃者に対して両椀や胸部の射撃武器を使って応戦する。
世界軍事同盟軍のヘリによってパイロットたちが回収され、ガードロンが合流したタイミングで拮抗していた戦いに動きがあった。
敵性機動兵器は突如動きを加速させナグラックを弾き飛ばすと、すぐにシェンダーへと向かって突進。シェンダーの射撃をかわし、接近して三連打を浴びせてひっくり返した。
後方から追いすがるナグラックへと振り向きざまに射撃をおこない弾幕の雨を降らせてその動きを封じる。
「調子に乗るな!」
胸部砲塔から放たれたゼトラキャノンの砲撃を特殊なフィールドによって完全に防ぎきるその性能はは、量産型のイミットとは桁が違う。GOTの機動重機三体を相手に優位に戦いをおこなっており、ガードロンが加わってもそれは変わらない。
「強い。だけじゃない。見透かされているような。それになにか戦いづらい」
ガードロンと同様に機動重機たちはみんなそう思っていた。特にガードロンとゼトラキャノンはその感覚が強かった。
「そろそろ頃合いか」
敵性機動兵器が喋った。それも日本語でだ。
その声は近接格闘をしていたナグラックだけにしか聞こえなかった。
だが、そのことに違和感を感じたナグラックはすぐにデータを処理して仲間たちに共有する。その情報はGOTの輸送機を経由して日本のGOT本部にも転送された。
GOT以外の者が聞いたなら無視されたであろうことだが、彼らにとってそれは捨て置けない事態だった。
次の瞬間、さらに動きを加速させた敵性機動兵器がナグラックとの格闘戦を制して彼の首を掴みあげた。
「ぐおぁぁぁ」
苦しみの声を上げつつ蹴りを見舞うのだが、より力強く締め上げられたことでナグラックは動きを止めた。
締め上げたナグラックを盾にされ、シェンダーもゼトラキャノンも射撃ができない。だが、射撃ができない理由は他にもあった。
「かなりのバージョンアップをしたようだが、それでは奴らとは勝負にならない」
機動重機たちのAIが大きく乱れ、ほんのわずかな時間だけ停止とループを繰り返す。
「お前は……、そんな、まさか」
その声、その雰囲気。そして、機動重機のAIだけがわかるなにかによって導き出された答え。
「ガンバトラーなのか……?」
姿はまるで違う。強さもより以上。そして、その行動は機動重機ガンバトラーとは似ても似つかない。だが、目の前にいる敵性機動重機がガンバトラーであると彼らのAIは認識した。
「生きていたのか? その姿はいったい……? それになぜこんなことを?!」
理解できない事態に全員動きを止めていた。
「ガン……バトラー……先輩」
首を締めあげられるナグラックが蹴りを止めた理由もそれだった。
「よう、後輩。なかなか活きがいいな。そっちの奴は俺の後釜か?」
その会話がこの者がガンバトラーであるという確証を強めた。
「姉さん。あいつがガンバトラーって……」
舞歌の言葉に翔子は返せない。翔真も勇翔も、当然だが光司も驚き戸惑っていた。そのため、この事態はガーディアンズへの報告が遅れてしまい、今の時点では新型のイミットが現れたという程度の情報しか得られていない。
「ガンバトラー。これはいったいどういうことなのか説明してください!」
ガードロンの問いかけを受けてガンバトラーは答えた。
「この体はセガロイドによって与えられた物だ。理由は俺の復讐を達成させるため」
その答えは彼らのAIがフリーズを起こしそうなほど衝撃的だった。




