モンスターが現れた
やっぱりセリフだけです。
「おかげであたたかいベッドにありつけました」
「ありがたい事だよ。知らない世界で野宿はつらいしね」
「ところでふと疑問に思ったのですが」
「何だい」
「どうして旅人さんと私が同じ部屋なのでしょう」
「触れまいとしてきたところをいきなり突いてきたね。カップルと間違えられたんじゃないかな」
「そこは案内された時に訂正しておいてくださいよ」
「ホニャ子だって何も言わなかったじゃないか」
「ぐうの音も出ません」
「ところで、明日からどうする? あの程度の働きでずっと居座り続けてたんじゃ、ちょっと居心地が悪いと思うんだ」
「そうですね。私も地上というものをもっと探検してみたいですし」
「決まりだね。明日はここを出立して新しい町を探そう」
「床好きな町とかじゃなければいいですね」
「まったくだ」
「おはようございます。今日もいい天気ですよ」
「絶好の旅日和だね。町の人にお礼を言って、ついでに近くの町を聞いてみよう」
「手の能力、便利ですね」
「この町から出られるというだけなんだけどね。しかし、町の人はどうやって外に出てるんだろう」
「深く考えてはいけないと思います」
「まったくだ。町の人の話によると、道沿いに進んでいけば水の町があるらしい」
「やっぱり水が好きなんでしょうか。三度の飯より水が好き」
「ありがたい水を売りつけられたら困るね」
「大丈夫です。そもそも買うお金がありません」
「そういえばそうだった。安心だね」
「前向きで何よりです」
「さあ、水の町目指して歩こう」
「いきなりモンスターに遭遇しました」
「すっかり存在を忘れていたね」
「ケルベロスですね。序盤に出てはいけないタイプだと思います」
「考え方を切り替えよう。たまたま頭が三つある、熊ぐらいのわんちゃんだと思えば」
「まったく勝てる気がしません」
「まったくだ。とりあえず尻尾を巻いて逃げよう」
「旅人さんには尻尾が生えているのですか?」
「慣用句というやつだよ。そんな事はいいから早く逃げよう。壁の町まで戻れば手の能力でとりあえずは逃げ切れる」
「回り込まれてしまいました」
「襲われなかっただけマシというものだね」
「頭が三つあるから合理的な考えができないのかもしれませんね」
「よく分からないけど、ピンチなのは確かだ」
「間違いありません」
「ホニャ子は地底人的な能力はないの?」
「耳がいいです。地底人だけに」
「今は役に立ちそうにないね」
「いつかお役に立てる日が来ると信じたいです」
「とりあえず助けを呼ぼうか。誰か助けてー!」
「旅人さんびっくりするぐらい大きな声出しましたね!」
「耳がいいのが裏目に出たね」
「ケルベロスも敵とみなし、アップを始めた模様です」
「そいつは困った」
「あっ、襲いかかってきますよ」
「とりあえず手の能力でやり過ごそう。ていやっ」
「華麗に投げるかと思いきや、旅人さんの方が移動しましたね」
「どう見ても僕より重いからね。仕方ないね」
「しかし、おかげでケルベロスも混乱した模様です」
「無駄に頭が三つあるから混乱しやすいんだろうね」
「しばらくこれで翻弄しつつ逃げ回りましょう」
「壁の町まで戻れればひとまず僕らの勝ちだ」
「壁の手前でまた回り込まれてしまいました」
「ここで手の能力を使えば町の中に逃げ込めるね」
「あっ、火を吹いてきましたよ! 熱いです!」
「火は困るね。手の能力を使っても防げない」
「万事休すですか」
「いや、そうでもないみたいだ」
「モンスターが俺達のアートに近付くんじゃねえッ!」
「すごいです! カノくんの槍で一撃です!」
「空から槍を投げるとは恐れ入ったね」
「何だお前ら、水の町に行ったんじゃねえのか」
「ケルベロスに遭遇して逃げ帰ってきたんです」
「あんな雑魚に頼りねえなあ。仕方ねえ、俺が付いてってやるよ」
「本当かい。それは助かるよ」
「しかし、絵の方はいいんですか?」
「これだけでかい作品だ、有翼人みんなでやっても何年かかるか分からねえ。お前らには借りもあるしな」
「助かります」
「心強い仲間ができたね」
「水の町だったな、さあ行くぞっ!」
三人に増えてますますの混乱が予想されます。