悪夢
僕は茫然と立ち尽くしていた。僕に何ができたのだろう?僕は何をすればよかったのだろうか?
彼女のために、**のために僕は、國木夏之助は何ができたのだというのか?
あの出来事から長い月日が流れた今でも僕は自分に問いかけている。幸せな日々から地獄へと落ちて行ったあの日から僕は毎晩夢を、彼女の夢を見るのだ。
夢の中で彼女はいつも僕に笑いかけてくれる。僕も微笑み返す。昼下がりののどかな天気に僕と彼女は酔っている。二人が手をつなぎ合って佇むのは彼岸花が大量に咲いている庭園。そしてその周りを蝶が優雅に羽ばたく。まるで僕ら二人を祝福するかのように。
....しかし二人の幸せな時は続かない。二人のにぎやかな祭りにはやがて終わりが来る。必ず終わりが来るのだ。
僕は彼女の様子を見る。するとそこにいるのは彼女ではない何か。こっちをじっと見つめ、僕には聞きとれない言葉でしきりに怨嗟の呪文を吐く。
僕は一歩も動けはしない。自分の足は五寸釘で地面に打ち付けられているかのようだ。親指の根元を中心に固定されている。
彼女が、****はこっちを見ながら不気味に笑う。まるでお前が悪いんだと、國木夏之助が存在するから私が苦しんでいるのだと。その報いを受けるのが今であり、私はそれを楽しんでいるのだと。
そして彼女は溶けていく。氷が溶けていくように、ゆっくりと、確実に。
苦しみと、怨嗟の感情がともっていた彼女の目はだんだんと無機質で光を失う。
そして、彼女の体は溶けて消え、赤い液体に変わっていく。
僕は彼女だったものを啜りながら、すすり泣く。みじめな声をして、ただひたすら泣き続けている。
これが私の犯した罪の報いの結末などでは無い。
断じて違う......




