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羞恥心の限界に挑まされている  作者: 山口はな
第10章 石窯と念話

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211.レベルアップ

『そらね、きさらみたいに、なりたいの』

「グリフォンみたいに大きくなりたいって事?」

『ちがう。きさらは、とおくから、あるじとおはなし、できる。るりも、できる。そらもあるじと、ねんわしたい』

「念話かぁ」

『ルリにそうだん、したら、このせかいのスキル、には、おねえちゃのほうが、くわしいって。おねえちゃに、そうだんしたほうが、いいって。そらは、どうすれば、いい?』


「う~ん。稜真に頼めば、女神様の木の実くれると思うな」

 アリアが知っているだけでも、ルクレーシアから何度も突っ込みをされている。村でも突っ込まれていた筈だ。


『きのみは、ちがう。そらは、じぶんで、おぼえたい』

「そらは偉いなぁ」

 健気なそらを、稜真が可愛がるのも頷ける。

 最初の頃に敵対していたのが嘘のように、そらはアリアにとって、可愛い妹のような存在になっていた。──もっとも、男の人と稜真を見て笑うとつつかれるので、瑠璃に次いで頭の上がらない存在でもある。


「そうすると、レベルを上げるしかないかな」

『レベル?』

「そうだよ。そらは、私を探す為に索敵を覚えたよね。念話を覚えたい!って思ってレベル上げたら、覚えられると思う」


 その人の行いで自然と覚えるスキルもあるが、目的を持ってレベルを上げれば、運が良ければスキルが覚えられる。アリアもその方法で、隠密・千里眼・遠耳のスキルを手に入れた。簡単に手に入る物ではないのだが、そこは『創世神の加護』のお陰かも知れない。


 主と従魔との念話が念話スキルとは違うのはアリアも知っているが、そらと稜真との絆は深いのだ。そらにも創世神の加護があるし、きっとレベルを上げれば、稜真と念話で話せるようになると思う。


『わかった! そら、がんばって、くる!!』

 そろそろ夕方になるのに即座に飛び立とうとしたそらを、アリアはあわてて捕まえた。そらは夜目のスキル持ちだが、暗くなれば危険が増すし、1羽で行かせる訳には行かない。


「駄目だよ、そら!」

『どうして?』

「今から暗くなるのに、危ないでしょ? そらが怪我したら、稜真が泣くからね!」

『…あるじ、なく…、だめ』

「私も念話覚えたいし、明日一緒に頑張ろうよ」

『おねえちゃ、も?』

「稜真と離れていても話が出来るのは、魅力的だもんね~」

 アリアがスキルとしての念話を覚えても稜真と話せるとは限らないが、チートキャラな稜真とならきっと話せると思うのだ。


「明日は稜真、石釜とピザ作りで忙しいし、瑠璃とももも手伝うよね。きさらにつきあって貰って、レベル上げに行こうよ」

『いく!』

「うふふ。そらが念話覚えるまで、稜真には内緒にしようね~」

『あるじに、ないしょ?』

「そらが覚えたら、念話で稜真に報告するの。きっとびっくりするよ!」

『あるじ、びっくり?』

 アリアは驚かせた方が喜びが大きいと、そらを説得した。特に他意はない。稜真の驚いた顔が見たいと思っただけである。


(…あれ? 念話で報告するから、稜真が驚く姿は見れない…? ま、まぁいいか~)




 話も決まり、魚穫りを再開する。

 張り切ったそらが、上空から大きな魚影を探して位置を知らせ、アリアが槍を投げた。アリアから見えない位置の魚でも、そらの誘導で穫る事が出来たのである。誘導だけで槍を当てられるアリアの腕前も大概である。


『いっぱい、とれた。おねえちゃ、すごい!』

「そらのお陰だよ~。大漁、大漁!」


 家に帰り、意気揚々と成果を見せたら、穫りすぎだと稜真に叱られた。

 それでも稜真は、塩焼き・ムニエル・フライ等々、様々な料理にしてくれた。いくらかは料理せずにアイテムボックスにしまったが、獲れたての美味しい魚を堪能したのである。


 ──シプレは今近づいたら不味いと思っているのか、今夜はやって来なかった。


 夕食後は稜真が食器を洗い、瑠璃が食器の水気を流しに移動させ、アリアが片づけをする。

「そうだ稜真。明日は私、そらと一緒にレベル上げに行って来るね~」


 ガシャン!


「…あ…しまった…」

「主、大丈夫ですか!?」

「ああ、俺は大丈夫。お皿が1枚割れたけどな…」

 驚いた稜真が、持ち上げた皿を落として割ってしまったのだ。すかさず排水口から蔓が何本も伸びて、割れた皿を持って行った。


(……そう言えば、排水口の事をシプレに聞こうと思って忘れていた…)


「稜真ったら、どうしたの?」

 稜真はアリアに返事をせず、まずは気持ちを落ち着けて、食器を洗い終えた。残りの片づけを手伝ってから椅子に座る。


「……アリア、そらとどうするって言った?」

「そらのレベル上げに行って来るって、言ったけど?」

「明日は一緒に行けないし、別の日にしてくれないかな。アリアに任せるのが、心配で仕方ないよ…」

「大丈夫だって。どうしてそんなに心配するの~」

「日頃の行いだよ。──ちなみにレベル上げの方法は?」


「えっと、私ときさらが魔物を弱らせてから、そらに止めを刺して貰おうかと思ってた」

「それなら危険はないかな…。でもアリアだし、何が起こるか分からないよね…。きさらもやらかしそうな気がする…」

「大丈夫だって! 何かあったら、きさらに連絡して貰うから、ね!」


 どうしたものか、稜真は腕を組んで考え込んだ。そんな稜真の膝に、そらが飛んで来た。

『あのね、あるじー。そら、レベルあげて、あるじのやくに、たちたい。もっと、つよくなりたい。そらが、おねえちゃに、おねがいしたの』


「そらは弱くないよ。アリアやきさらの強さは別格なんだから、同列に考えたら駄目だ」

「な~んか言い方に引っかかるわ~」とアリアがぼやいている。

「別の日にして、俺と一緒に行かない?」

『……そら、おねえちゃと、がんばりたい』

 何か他に目的があるのかも知れない。自分に知られたくないのだと稜真は気づいた。


「分かった…。でも、絶対に無理をしないと約束して」

『むり?』

「怪我をしないように、気をつけて欲しいんだよ」

『そらが、けがしたら、あるじなく?』

「もちろん大泣きする」

『きをつける。むり、しない!』


「アリアは無茶をしないでくれ」

「そらには『無理をしないで』で、私には『無茶をしないで』? 似てるけど違いすぎる」

「心配には違いないだろう? ──アリア。そらが頑張りすぎないように、注意してやってくれ。頼む」

「任せといて!」

 アリアは力強く請け負った。




 翌朝、稜真はお弁当を用意した。アリアは大量のお弁当をアイテムボックスに入れる。

 夕方前に帰ると約束し、アリアはそらと共に、きさらに乗って出発した。


 上空から、人がいなくて魔物の多そうな場所を索敵で探した。ちょうど良さそうな場所を見つけて降りる。


「よ~し! 頑張ろう!」

『はーい!』

「クォン!」

 きさらもやる気満々だ。


 早速きさらに獲物を追い込んで貰い、アリアが弱らせて、そらがブレスで止めを刺す。


 何度か繰り返したが、手分けをしているからか、思ったよりもそらのレベルは上がらない。そらが言うには、1レベル上がったがスキルは覚えていないそうだ。

 従魔が自分でステータスを確認する事は出来ないが、レベルが上がる感覚、新たなスキルを覚えた感覚は分かるらしい。


「一撃で倒せる弱い魔物をたくさん倒す方が、効率いいのかなぁ」

 そらのブレスは威力が上がっている。弱い魔物なら、1度で倒せるまでになったが、中レベルの魔物相手では、足止め程度にしかならないだろう。


「迷ってても仕方ないよね! ご飯食べて、ひと休みしようか」


 森の中から草原に移動する。

 敷物を敷くスペースが欲しかったし、広々とした場所で気持ち良く食べたかったのだ。

 アリアは稜真から預かった敷物と、それぞれのお弁当を取り出した。稜真が用意してくれたのは、おにぎり弁当だ。


 そらには足で掴めるサイズの丸いおにぎり。

 きさらにはハンドボールサイズの爆弾おにぎりである。


「稜真ったら、すっごくたくさん作ったんだね~」

 きさら用の食器に、アリアは次々と爆弾おにぎりを積み上げた。もう1つの食器にはおかずを積み上げると、きさらの目が輝いた。

「クォルルル!」

『おねえちゃ、きさらが、うれしいって。ドラゴンに、たべられたおかずが、ある。すごく、うれしいって、いってる』

「稜真はきさらとの約束、ちゃんと覚えてたんだよね~。きさらも頑張ってくれたし、いっぱい食べて!」

「クォン!」


 アリアとそらの分は、ワイバーンの唐揚げがついていた。そんなに量を食べないアリア達には、ちょうどいい。

 おにぎりは、海苔でしっかりと包まれていた。そらもきさらも、いつもより食べやすそうだ。海苔はカルロスが置いて行ってくれた食材だ。


 おにぎりの中には、甘辛く煮つけた肉が入っていたり、刻んだ野沢菜のような漬け物が混ぜてある物もあった。魚の身をほぐし、香草と混ぜ込んだおにぎりもある。

 アリアとそらのおにぎりは、1個に1つの具だが、きさら用の巨大な爆弾おにぎりは、様々な具が入れてあるようだ。

 かじる場所によって出て来る具が違い、きさらは嬉しそうに食べている。両前脚で掴んで食べるきさらは、とても満足そうだ。


 美味しいお弁当を食べながら、アリアは効率のいいレベル上げ方法を考えていた。


(そらだけで大きな魔物が倒せたら、レベルも早く上がるよね。そらの武器はブレス。もう少しレベルが上がれば、威力も上がるだろうけど…。ん? 威力を上げる? ──そうだ、あれ使ってみようかな)


 アリアは以前、旅商人のピーターにおまけで貰った魔法薬を思い出した。魔力を上げる薬を飲めば、ブレスの威力も上がるのではなかろうか。


 食事と片づけを終え、アリアはそらに提案した。

「そら、魔力を上げる薬があるんだけど、試してみない?」

『くすり?』

「薬を飲んでブレスの威力が上がれば、魔物を一撃で倒せるかも知れないよ~」

『やってみる!』


 効果時間は30秒。小さなそらには、ごく少量、スプーンで何滴か飲ませる。


「そら、あの岩に向かって、ブレスやってみよう~」

『はーい』

 そらは飛び立つと空気をいっぱいに吸い込み、岩に向かって、ふぅ!と、ブレスを吐いた。


 ゴオォォッ!!と、凄まじい吹雪がそらの嘴から放たれた。


 アリアときさらは、ぽかんとした顔で氷柱になった岩を見つめていた。

『びっくり、した!』

 きさらが、こくこくと頷いている。

「私もびっくりだよ~。うん! これなら大きな魔物でも、そらだけで倒せるね」


 その前にアリアは、そらの体調を確認する。

「そら、気持ち悪くなってない? 体におかしな所はない?」

『だいじょぶ!』

「今からお薬飲んでブレスを使うけど、ちょっとでも気持ち悪いって思ったら、すぐに言うんだよ?」

『わかった』

「稜真に無理しないって約束したんだから、絶対だからね」

『あるじとやくそく、おぼえてる!』


「それじゃ、きさら~。魔物の誘導、よろしく!」

「クォン!」とひと鳴きして、きさらは飛び立った。



 きさらが追い込んだ魔物の距離を測ってアリアが薬を飲ませ、そらがブレスを使う。予想通り、ブレスで全身が凍り、そらだけで倒すことが出来た。


『おねえちゃ! レベル2かい、あがった!』

「やったね!」


 この調子で何度か繰り返したが、まだ念話は覚えられない。


「そら、体調は大丈夫?」

『だいじょぶ!』

 元気に飛ぶ様子からは、特に問題はなさそうだ。

 だが、本当に負担はないのだろうか。アリアは、もう1本の魔法薬を取り出した。力を強くする魔法薬。この薬で倒せるならば、交互に使う事で負担を減らせるのではないだろうかと思った。


「そら、次はこっちのお薬を使ってみない?」

『ちがう、おくすり?』

「うん。力を強くする薬。これを飲んで、体当たりしたらどうかなと思って」

『やってみる!』


 今回きさらが誘導して来た魔物は、これまでよりも大きい。アリアはそらに薬を飲ませると、すぐにそらのフォローが出来るよう大剣を構えた。

 そらはアリアに体当たりした時よりも距離を取り、一気に魔物に突っ込んで行った。


 ズドン! ドスッ! と、鈍い音がした。


「げっ!?」

「クォン!?」

 そらを見守っていたきさらも、嘴を大きく開き、驚きで固まっている。アリアときさらは、しばらく固まったまま、そらが飛んで行った方角を見つめていた。


 バタバタと暴れる羽音が聞こえて来る。

『たすけて、おねえちゃ! きさら!』と、くぐもったそらの悲鳴でアリアは我に返った。

「いけない! そら、大丈夫!?」


 魔物を突き抜けたそらは、そのまま大木に突っ込んで抜けなくなっていた。

 必死に抜け出そうとしているが、体は木にはまり込んでびくともしないのだ。アリアはきさらにそらを支えて貰い、ナイフでそっと木を削って救出した。──ちなみに、そらが突き抜けた魔物は絶命している。


「良かったぁ」

 血まみれのそらを抱えて、アリアはへたり込んだ。

「そら、痛い所はない? 気持ち悪くない?」

『びっくりした、けど、いたくない。だいじょぶ!』

 アリアはアイテムボックスから桶と水を取り出して、そらを綺麗に洗ってやった。


「こっちのお薬は封印しようね…」

『ふういん? そら、やっつけたよ?』

「倒す度に体を洗っていたら、時間がかかるもん。それに、そらが血まみれになったなんて稜真が聞いたら、泣いちゃうかもね~」

『あるじ、なく!? ふういん、する!』


(あはは…。そらに無茶させた私が、叱られる未来が見えるなぁ…)




ピーターにおまけで貰った魔法薬。

登場は18話です(^^;)

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