1話 同様のきっかけ
「暑っ……日差しに当たってなくてもこれか……」
夏真っ只中の金沢駅で、僕は521-98の前面チェックをしていた。これから富山駅まで向かう予定だ。
北陸の夏はフェーン現象でめちゃくちゃ熱くなる。乗客は扉を開けたらすぐに閉めるくらいだ。こういう時だけ、半自動ドアで良かったなと思える。
「誰だって涼しいほうがいいよね~」
まあ僕には『聴く冷房』があるから問題ない。いや、曲名には『冷凍庫』って書いてあるけど。
前面チェックをし終えて運転室に戻った。ふと車内を見てみると、珍しく乗客がいなかった。まあ発車まで30分はあるし、気長に待ちましょうか。
フワッ
「ん?」
窓の外が緑色に輝きだした。そんなライトなんてないはずだ。
そして、落ちる感覚に陥った。
「あ、今きれいに韻踏んだな…いやそうじゃなくて、これマズくね?」
前に経験したときとは比べ物にならないほど、長く感じられた。
これが『異世界召喚』みたいなやつなんですか、ねえ!
———Change Viewpoint———
「いやあ、面白かったねぇ! まさか本物の24系客車だったとは!」
「そんなに凄いのか?」
「分からないのかい!? 引退したはずの客車が残っていた。それだけでも大事さ!」
金沢駅の改札口を通り抜けたところで、巡先輩が熱弁し始めた。ついさっき、バスに乗って24系客車を見たときからこんなにハイテンションになっている。
私も興奮はした。したけれどここまでではなかった。
「あっ」
肩から提げていたカバンを見て青ざめた。
「ん? どうかしたかい?」
「どこかでキーホルダー落としちゃったみたいで……! ちょっと探してきます!」
「焦りは禁物だよ」
「ちゃんと発車の時間になったら来いよ!」
「は~い!」
巡先輩と怜太さんには先に新幹線に乗っていてもらい、私は改札口に向かって階段を駆け下りていた。
焦りは禁物、まさにその通りだった。
「うわっ」
うっかり階段を踏み外した。急いで腕を前に出そうとしても間に合わない。
私の人生、短すぎるなぁ。
そう思っていたら緑色の魔法陣が目の前に現れた。
「……何これ」
慣性の法則は止められず、私は魔法陣に吸い込まれるように突っ込んだ。
<とあるネットニュースの見出し>
『金沢駅で二人行方不明。さらには521系一編成まで…いったい何が起きているのか』




