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ロカシオン・マギ  作者: じょん-ドゥ


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第44話:境界の街の安らぎ

 空間の裂け目が完全に閉じると、荒野を支配していたあの異様な冷気は、

嘘のように霧散していった。かいさんは水晶の針を収めると、

何事もなかったかのような足取りで、結界の中にいた私の方へ戻ってきた。


「……終わりましたよ、つむぎさん。これでこの『場所』の歪みは

 正されました。驚かせてしまいましたか?」


「……うううん。……ただ、すごすぎて言葉が出なかった。

 櫂さん、本当にかっこよかったよ。本当にお疲れ様!」


 私は、目の前で繰り広げられた神業の余韻に浸りながら声を弾ませた。

大仕事を終えた直後だというのに、櫂さんの背筋には一点の揺らぎもなく、

その瞳には、すでに次の予定を見据えた穏やかな光が宿っている。


「さて、これで今回の仕事の片方は片付きました。今夜はここから一番近い、

 境界の街にある宿に泊まりましょう。もう一つの目的である

 『魔法の補充』……つまり備品の買い出しに向かうのは、明日ですから」


 私たちは再び迎えの馬車に乗り込み、夕闇が迫る荒野を走り出した。

一週間かけて来た道を戻るのではなく、この近くにあるという魔法都市を

目指す。車窓を流れる景色は、薄紫色の夜のとばりに包まれ始めて、

遠くには宝石を散りばめたような、見たこともない街の灯が見え始めた。

 揺れる車内で、私は櫂さんに、ずっと気になっていたことを尋ねた。


「……ねえ、櫂さん。魔法の補充って、やっぱり魔法そのものを

 どこかのお店で買うの? それとも呪文の書いた紙とか?」


「ふふ、いえ。魔法そのものを買うわけではありませんよ、紬さん。

 あちらの世界で魔法を維持するためのエネルギー源……いわゆる

 ポーションや、指輪の土台となる特殊な金属素材を仕入れるのです。

 術式自体は私が組めますが、素材だけは専門の店が一番ですから」


 私は、自分の指に嵌まった二スロットの指輪を見つめた。

あんなに壮絶な世界の調律がある一方で、魔法を支える「材料」が

商品として棚に並んでいる光景を想像すると、ワクワクが止まらない。

見習い店員として、仕入れの現場を見られるなんて。

 一時間ほどで、私たちはつたの絡まる石造りの宿に到着した。

案内された部屋に入り、私はようやく一息つく。


「ふぅ、やっと一息つけるね。……あ、そうだ」


 私は右手の指輪に意識を集中させ、『虚空のストレージ』から

自分用に持ってきたお気に入りのパジャマを取り出した。

重いトランクを開ける手間もなく、イメージしただけで手元に届く

魔法の便利さに、改めて感動してしまう。


「(……明日は魔法の備品ショップがある街へ向かうんだ。楽しみ!)」


 私は、窓の外に広がる魔法の光で彩られた街並みを眺めながら、

明日への期待で胸を膨らませた。長旅と大仕事の心地よい疲れが、

新しい街の柔らかな夜風と共に、私を深い眠りへと誘っていた。

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