40話 生放送の後で
「はぁ〜緊張した〜〜」
「お疲れ〜」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
私の配信が終わり一息つくと、すぐにお兄ちゃんが肩に手を置き声をかけてくれて、アーヴァさんエドヴィンさんがお茶とお菓子を用意してくれた。
お茶を飲んで渇いた喉を潤す。
学校が休校した後の週末に2525の超議会があった。
それにマリアちゃん麗華ちゃんと出演する約束を2525さんとしていた。
私が1人で喋ってるところは生放送、マリアちゃん麗華ちゃんと一緒に映っているところは事前に撮影した映像だ。
2人も一緒に生放送する案もあったんだけど、危惧していた通り練習の段階で名前を呼んじゃうことが何度もあってお蔵入りに。
でも中々良さそうな宣伝になったんじゃないかな?みんな私達アニマルシスターズに興味もってくれたと思うんだけど。
あ、ちなみにこの名前ね、グループ名を決めるときに全員の共通点をグループ名にしよう!ってなったんだけど、中々いいのが思いつかなくて。
ふと麗華ちゃんが2人は動物よね?私も動物になれば動物で統一できるんだけど…と言ったのがきっかけで全員動物になりました。
麗華ちゃんは耳尻尾を生やすのに恥ずかしがってたけど、何気にすごく気に入ってるよ!耳や尻尾動かしてニコニコしてるから!可愛い(*´ω`*)
2525への出演は人によっては「宣伝出演かよ、2525利用しやがって!」とかヘイト買うかなとちょっと心配してたけど、なぜかそれはなくて。
でも思ってた通りまだまだマリアちゃんへの悪口は多くて、それを無くせるかは私達の努力次第だよね。
麗華ちゃんもそれを見てしまってすごく怒ってて、1人1人調べて潰すとか怖いこと言ってたから必死で止めたよ!
NO権力!言論統制だめ絶対!!
……とまぁ色々あるけど精一杯頑張る所存です!
それとこれからのメイの活動は、YTubeと2525の同時生放送になる予定です。
他にも配信サイトは色々あるけど、私が主にお世話になってるのはその2つなんで。
ちょっとだけ優遇してます。
「本当に女性3人で配信するつもりですか?」
「メイ1人でも狙われたりすんのに3人全員狙われるようになる危険もあるんだ。
その辺分かってるのか?」
心配そうに声をかけてくれるエドヴィンさんにお兄ちゃん。
本当にみんなに迷惑をかけるようなことをしてるのは理解してる。でも……
「ごめんなさい。みんなに迷惑かけるって分かってる。
でも私はやりたいんだ。マリアちゃんと麗華ちゃんと3人で」
頭を下げて言うとアーヴァさんと時雨さんは笑って言う。
「いいよ!私は応援するよ!花美のしたいことなら手伝うよ!
愛しい人の願いを叶えるのが男でしょ?」
「いいよ俺も。また花美が注目されることになるのは嫌だけど、上手くいけばファンが分散するだろ?」
「ありがとう2人とも!」
笑顔で応援してくれるアーヴァさんに、照れたように首の後ろに手をやりながら応援してくれてる時雨さん。
笑顔でお礼を言えば2人も笑ってくれる。
体育祭の後から時雨さんも私の護衛&夫候補に加わっている。
「お前家?それとも寮に住んでる?」「家です」「今日から女子寮に引っ越しできるか?」「できます!」「んじゃ荷物運ぶぞ」ってお兄ちゃんに言われてその日のうちにこっちに来た。
荷物運びとか色々お兄ちゃんやアーヴァさん達も手伝ってたみたいだけど、女の私は手伝わせてもらえなかった。
不良みたいな見た目でぶっきらぼうな言葉遣いだけど礼儀正しい時雨さんは、最初ちょっと緊張気味だったけど女子寮に来てからは落ち着いてる。
気さくに話しかけて誰とでも仲良くなれるアーヴァさんのお陰かな?
「あ〜!もう反対はしてない!心配してるだけだ!
くっそ、2人ばっか花美の好感度が上がってくじゃねーか!」
「私も同じです。花美に何があっても必ず守ります。でも貴女の心が傷付けられることがないか心配なんです。
物理攻撃ならいくらでも守ることはできるけど、心への攻撃から守ることはできませんから」
「2人が心配してくれてるのは分かってるから。ありがとう2人とも!」
悔しそうに髪をグシャグシャにするお兄ちゃんと、私の手を握って祈るように額につけるエドヴィンさん。
2人にお礼を言うとちょっと拗ねたように見詰められる。珍しいね。
「やっぱり素直に応援する方が花美は喜ぶんだよな」
「ズルいですね。2人は」
「そんなことは…」
「ある!」「ありますね」
「うぅ」
お兄ちゃんとエドヴィンさんの言葉に反論すれば、2人揃って一蹴され縮こまる。
心配してもらってるのに申し訳ない。でも確かに、応援してもらった方が嬉しいかも。
「ハァ〜〜。花美はズルいな。俺達ばっかどんどん好きになるんだから」
「そうですね。でも見返りを求めないのが男の誠意ではないですか?…でも、花美から愛して欲しいと願ってしまいますが」
「その通りなんだけどな……何だろ?花美からも好かれたいって欲張っちまうんだよな」
「分かるよ!好きって言ったら好きって言われたい。女性が少ないのだから気持ち返してもらえなくて当たり前なのに、花美には欲が出る。なんでだろうね?」
「これが恋ってやつ、か」
手で顔を覆って疲れたようにソファに座り込むお兄ちゃん。それに続いて愛を返して欲しいなんて言い出したエドヴィンさんとアーヴァさん。そして深々と呟く時雨さん。
うぅ…恥ずかしい。でも、これはその、私も素直になるべき、なのかな?
「あ、あの!」
椅子から立ち上がり4人の側に寄って声をかけると、全員から視線を向けられ緊張から全身が硬くなってしまう。
でも、今思っていることだけでも正直に伝えたいと思ったから、頑張ろう!
「わ、私は……アーヴァとエドヴィンが好きです。
まっ、まだまだ若輩者なのでその、上手く言えないけど、いつも感謝してるし、毎日思いを伝えてもらえて嬉しくて……ですね。
あっ、あの、恥ずかしくてうまく言えないけど、そのっ、好き……なので。そこは知っておいてほしいです」
茹でダコのようになってそうな熱い顔で、緊張から上手く言葉が出て来なくて震える情けない声で何とか言ったけど。
部屋はしんと静まり返って誰も言葉を発さなくて死にたくなってくる。
い、いきなり2人を好きってヤバいよね。二股女とかキツいよね??でもこっちではそれは普通だから、でもいきなりこんなこと言われて引かれた?二股OKでも同時に告白とかないよね、ヤバすぎた。思いを返して欲しいなんて言われてちゃんと伝えようと思ったけど、やっぱり迷惑だったよね!? 相手外人だし子持ちだし私バカなのかな?ヤバい今のなしって言う??こんな空気にしちゃうなら言わなければよかった!
何だか頭の中が混乱して訳が分からなくなってきた。
緊張で手も震えるし涙まで出てきそう。ほんとにどうしよう!?
そんなとき突然ギュッと抱き締められて息が止まった。
「Ich mag dich. Ich liebe dich. 好きです。愛しています Ich liebe dich.」
「私も花美が大好きです!ずっとずっと一緒に、死ぬまでずっといたいです。ううん、死んでからも!」
エドヴィンさんとアーヴァさんからギュ〜ッと抱き締められてることに気付き照れていたら、2人から怒涛の告白をされ顔が熱くなってきた。
恥ずかしくて俯いたら拗ねたようなお兄ちゃんと目があった。
「……俺は?」
「えっと、ごめんなさい。お兄ちゃんは家族だから」
申し訳なく断るとお兄ちゃんは完全にソファに突っ伏してしまった。こればかりは前世というか前世界の常識がね。ほんと申し訳ない。
「ハァ〜、俺は夫候補になったばっかだしな」と呟く時雨さんの言葉が聞こえて更に申し訳なくなった。
「それなら花美!デートしよう!」
「いいですね。3人でどこか行きましょうか?」
「へ?」
アーヴァさんとエドヴィンさんが嬉しそうにニコニコデートなんて言うから驚いた!
でっ、デートってデートだよね!? したことないよ!
焦っていると、
「そんなこと許すと思うか?ハメを外したバカが花美に何するか分からないからな!絶っっっ対に行かせないぞ!」
お兄ちゃんの呪詛の混じった低音ボイスに背筋が震える。
アーヴァさんは暢気に「大和ヤキモチ焼いてる!可愛いおもち!」と笑ってる。すごい。
3人が仲良く揉めて、それを新入りの時雨さんが呆れた顔をして見ていた。
そんな感じで、気持ちを伝えることで何か大きく変わってしまうかと思って不安だった関係だけど、いつも通り過ごせたのでした。




