18話 登校までの朝の一時
「ハァ〜〜」
次の日の朝。
学校に行く準備を整えみんなのいるリビングに行きソファに座ったとき、思わず溜息が出た。
学校に行くのに気が進まない。あんな醜態を晒しちゃったから恥ずかしくて。
どんな顔してみんなに会えばいいんだろう?一人悩んでいるとお兄ちゃんの声がした。
「なら学校なんて行くのやめよう!夫なら心配するな。俺達兄弟を全員花美の夫にすればいい!」
「何言ってるのお兄ちゃん、兄妹として育ってきたシュン達を恋愛対象としてなんて見れないからね私!」
お兄ちゃんの発言は冗談だと思ってたんだけど、昨日から何度も言われてるから本気っぽく感じてきた。
驚くことに、ここでは兄弟との結婚は普通らしい。もちろん私には絶対無理だけど!
場合によっては親との結婚もあるそうだが、聞いたときは鳥肌が立ったよ(((;゜Д゜)))
……いやまぁ分かるよ、男女比狂ってるから子孫を残す為にそうするしかない時もあったのは。
でも今は必要ないよね?そこまで女性少なくないじゃん。お互い相手を選ぶ余裕もあるんだし。
私の言葉にお兄ちゃんはガックリと落ち込んで、逆にアーヴァさんとエドヴィンさんは笑顔になっている。
う、う〜ん、2人が私を好いてくれてるのは知ってるけど、そうあからさまに嬉しそうにされると困るな。
ちょっと居心地悪くなりながら2人の様子を窺う。
アーヴァさんは親しみやすい焦げ茶色のふわふわくせ毛髪と髪と同色の目をしていて、褐色の肌と年齢より幼い顔にウィンクしたりとお茶目な所があるから明るく快活な印象の人だ。
23歳らしいけど18、19歳のちょっと年上のお兄さんて感じに見える。
地球だとバーラト(インド)は男尊女卑とカースト制度のイメージが強いけど、ここだと日本の男性と変わらない。
女性が少ないからかな?同じ階級としか結婚できないなんてしてたら滅んじゃうもんね。
でも向こうでも7:3くらい男性の方が多い国だったけど。男尊女卑の国って男性の方が人数多いよね。
まぁ、多数派の意見が通りやすいのは仕方ないことだからね。だから男尊女卑になるし、人数が少ない女性の意見は無視されちゃうんだよね。
でも今は男女比10:1なんていう危機的状況だし、そんなこと言ってられないんだろうね。
もう少し女性が増えて安定してくればまた男尊女卑の国は増えると思う。残念だけど。
逆にこの状況で男尊女卑してる国があることがすごいよね。
女性が少ないんだし、女性を救う為なんて大義名分掲げられて攻められそうなのによく存続できてるよね。
昔は女性を巡ってあちこちで戦争が起きたらしいのに。不思議。
「どうしたの花美?わたしのかお、なにかついてる?」
「あっ、ごめんねジロジロ見て。
あの、バーラトだと髭が生えた男性がモテるって聞いたんだけど、アーヴァは剃ってるんだね」
朝食の用意をしてくれていたアーヴァさんに話しかけられ、とっさに前から不思議に思っていたことを聞いて誤魔化した。
国によって異性の好みって違うからね、バーラトだと髭の生えた男性がモテるって聞いたことあるんだ。
「にっぽんだと、ヒゲのはえたおとこ、きらわれるきいた。花美もいやでしょ?」
「う〜ん……確かに髭のない人の方が良いかな。でも髭の似合う男性もいるし、バーラトだと髭がカッコいいんだよね?
だったら髭生やしたらいいよ!アーヴァも本当は髭を生やしたいんでしょ?それくらいで好き嫌い変わらないから大丈夫だよ!」
日本だと髭が嫌われると言われ、花美もそうでしょ?と聞かれたので正直に答えた。
髭はねぇ〜、日本人だと似合わない人多いんだよね。大抵の俳優さんとか髭ないときの方がカッコいいもんね。
でも似合う人もいるし自分の好きにしてほしい。そう思って正直に言えばなぜか全員が私を見て目を見開いていた。
ええっ何!? なんか変なこと言った!?
「っ、普通男性は、女性の好みに合わせるものです。好きな女性に合わせて自身を変える、それが当たり前で。
なのに、自分の好みではないのに好きにしていいと言う花美に驚いてしまって」
最初に正気に戻ったエドヴィンさんが、なぜか声を震わせながら言う。
そうか、女性に合わせるのが当たり前なのか。だから3人共驚いたんだね。
なるほど。理由は分かったけどそれって何だかなぁ。う〜ん、
「うん、なるほどね〜。でもほんと私は気にしないから!
無理に合わせたりしなくていいからね。ほんとに無理なものは無理だって言うから!
髭の有無なんて私としては大して気にするとこじゃないから、自分の好きにしてね!私に合わせてしたいこと我慢してる〜なんてことの方が嫌だよ!」
無理に合わせたり、したいことを我慢したりしてほしくなくてそう素直に伝えるも、3人は固まって動かない。
あっ!?
「わっと!」
「あっ、すみません花美!けがは!?」
「お湯かかってない!?大丈夫アーヴァさん!」
アーヴァさんが紅茶を注いだまま固まったせいでカップから紅茶が溢れて慌てて止めた。
急いで布巾でお湯を止め、アーヴァさんにかかってないか聞くが彼はまた驚いている。
?? どうしたの?お湯かかってないか気になるんですけど?
「お湯かかってない?」
「だっ、だいじょう、ぶ…です。花美、またさんづけしてる」
「なら良かった!もう、変なとこで止まらないでね!…と、さん付けごめんね!」
笑いながら注意すれば彼も笑ってくれた。眩しい!流石イケメン爽やか!!
それからまたさん付けしてた!みんな年上だからさん付けしちゃうんだよな。
2人からは敬語じゃなくていいよ、名前で呼んでほしいって言われてて。それに女性は男性に敬語なんか使わず呼び捨てするんだって言われてるんだけど、中々慣れないんだよね(^_^;)
それからみんなで朝ご飯を食べる。……食べるんだけど。
「は!? お前らは花美に給餌したのに俺はだめなのか!? なんでだ花美!?」
「いやっ、だから普段は給餌なんかしてなくて」
「でも学校でこいつらに食べさせてもらったんだろ!なんで!?お兄ちゃんからは嫌なのか!?」
と、なんか教室での食事をお兄ちゃんが聞いてたみたいで、自分だけ私に食べさせてない!花美は俺が嫌いなんだ!みたいな勘違いを起こしてですね。
仕方なく食べさせてもらったら2人もまた食べさせてこようとして、なんか朝から変な攻防をすることになって疲れた。
おかしいな、家だと普通に食べてたのに。いや、家でもたまに……
やめておこう。
ただ、ちょっと気になることがある。
「エドヴィンさん?」
「っ、あっ、すみません」
なんでかエドヴィンさんが心ここにあらずで、みんなで我先に給餌してくるところで遠慮がちにスプーンを差し出してきたり。
食器を片付けるのに食器同士をぶつけて音を鳴らしたりと些細なミスをしていた。
洗うの替わろうとしたんだけど断られたんだよな。家でお手伝いしてたからって言っても強情で。
ここで家事できるようになるのは時間がかかりそう。家でもそうだったから諦めないけど。
でも今はそんなことよりエドヴィンさんだ。
「大丈夫ですか?エドヴィンさん。何か不安なことでもあるんですか?」
「いぇ、大丈夫です。心配をおかけしてすみません……と、また敬語ですね花美」
「……すみません。あっ、ごめんね慣れなくて」
声をかけても笑顔で躱されてしまう。
年が近いアーヴァさんならまだタメ口で喋れるんだけど、エドヴィンさんなんて10歳くらい年上だからすぐ敬語を使ってしまう。
彼も敬語だから尚更。でも、覚えた日本語が敬語だからと言われてしまっては何も言えない。
……心配だけど本人が何も言う気がないならしょうがないかと暫く見守ることにしよう。




