03
誰だ、良さげな移動手段とか何とか言ったバカは。
俺だ。
クソッタレ、こういう仕様なら確認の通知とかあってもイイだろうが…!
「死ね、リザードマン!てめぇの粗末な槍で殺せるわけないだろうが!何本その首へしおりゃ気づきやがんだバーカ!」
「貴様が死ぬまで気付かんさ!くたばれ人間!新鮮な肉を寄越せ!」
「二度と食わせるか、クソ蛇ィ!オラァ!」
「かする気配すらないぞ下手くそがぁ!シッ!」
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事の発端は数分前。
あの扉のような枠に触れたあと、俺は光に包まれて、いきなり飛ばされた。
光が収まったと感じ、いつの間にか閉じてしまっていた目を開ければ餌を見つけたと言わんばかりに涎を垂らしながら完全武装のリザードマンの大軍がいた。そりゃもう、うじゃうじゃいた。
だが。
俺は丸腰だ。
勝てない。なら逃げよう、そう考えた俺は悪くないはずだ。
「待て、お前ら。そんな武器を持つことすら忘れた雑魚の肉など食らっても弱くなるだけだ。捨て置け」
「はっ!戦うことのできない雑魚の肉を食おうとした自分がおろかでありました!」
「所詮胃袋に入れば同じなどという考えを持っていた自分が恥ずかしいであります!」
「われらは誇り高き戦士!残飯を食おうなど考えることが間違いだ!!」
・・・こんな声をわざわざ大声で、目の前で、楽しそうに侮辱されて、黙って立ち去る男なんて男じゃねえだろ?
だから。喧嘩を売ろう。
そして、喧嘩を売るためには武器が必要だ。
武器がなければ、売ったとしても向こうが買ってくれないだろう。
そのために、武器を調達するために、自分の知るゲームとしての常識をぶち壊そう。
いつも使っている魔法が、『武器にしか使用できない』というテキストを『武器として扱えそうなものなら、ゲームシステムに武器として認められていなくても問答無用で使用できる』というテキストへと脳内で変換する。
付与術・水刃。
効果は、「切れ味の強化、切れ味の維持、水属性付与」
効果時間は「魔力を消費している間」
自分が持つ魔法の中で最も早くカンストした愛用の魔法だ。
俺が、このゲームでこの魔法を一番使いこなせると自信を持っていうぐらいには使い込んだ相棒のような魔法だ。
それを、俺は信じることにした。
だから、確信を持つ事が出来た。
・・・俺は、目の前にいるこいつらを死体の山へと作りかえることができるという確信を。
馬鹿にされてから、喧嘩を売られてから、考えていたのは1分にも満たないだろう。
(・・・この時間で何度だって殺せただろうに。油断か慢心かしらねぇが、俺にとっちゃあ好都合だ)
この時間で殺しに来なかった、目の前の馬鹿なリザードマン達に聞こえないように、小さくつぶやくような声で愛用している魔法を起動させる。
自分の肉体という素材の中から右手を選択し、魔法という技術で加工し、即席のナイフを作り上げると、たまたま近くにいたリザードマンの首を狙って、左足で踏み込みながら腕を振りぬいた。
多少の抵抗はあったものの、掻っ切ることに成功したのを自分の指先に伝わる感覚で感じた。
「おいおい、武器にしかできないと思ってたことが自分のことをものとしてみたら成功しちまったよ。だが、これなら武器を作らせてくれってタビットに頼み込むことはなかったかァ?」
『自分自身を武器とする』という新しい事が出来た彼は気づかない。
自分を馬鹿にした敵を一人排除できた高揚感に浸った彼は気づかない。
今まで撃破した敵は、血を流すことなく撃破エフェクトとともに消えていったのに、
今さっき殺した敵は、血の池を作り、生々しい死体を残したまま消えないことに。
「・・・何をした、人間」
「あぁ?自分の体を武器に見立てて『付与術・水刃』を発動して、こいつの喉笛掻っ切っただけだろうが。
まぁ、そんなことはどうでもいいだろ?
宣戦布告だ。
お前ら全員、PKしてやるよ。
どっからでもかかって来いよ!不意打ちに対応できない強者さん!!」
そうして、お互いに殺る気をたぎらせて、あまりにも血なまぐさい、ダンジョンで初めての戦闘が始まった。




