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君の気持ちを僕は知らない 3 ※BL

気づかないこの心は








これからも君を









翻弄していくのだろう









そして僕らを祝福していくのだろう











clarity love 君の気持ちを僕は知らない












「あれ?」

周が家へ帰るといると思っていた夏流が帰っておらず、電気もついていなかった。

夏流がこの時間帯までいれる場所は限られている。

その第一候補にまず電話を入れた。

「もしもし」

『もっもしもしっ!』

出たのは周のバンドメンバーの奥さんになった人物であった。

いつもよりもどこか緊張した様子で電話対応をしていた。

『かっ香南さん!本当にかかってきました!えっとえっと…』

後ろの方で何やら騒いでいるようだった。また面白い事でも企画しているのかとクスリと笑ったが次の言葉に表情が一転した。

『城之崎夏流は、あずかった!返してほしければ…うちにこい!へっこれってまるで私たちが悪者…』

『大丈夫だ。夏流がこっちにいる間はこっちが正義の味方だ。』

電話の向こうでバンドメンバーの香南、そしてその奥さんの七海がひたすら討論をしていた。

それは周に十分な思考能力回復の時間をくれた。

「えっと、説明をしてくれるかな?」

『あっえっと、あの、お願いします!』

そして変わる音がすると香南の声が鮮明に聞こえてきた。

『そういうことだ。とにかくナツは家にいる。じゃあな。』

こちらのことも聞かずブチっと切れる電話の音。

「…どうなってるの?」

周はため息をつくと購入してきた小さな箱の入っている袋を持って七海たちのいる家に向かった。















ぴんぽーん

「周だけど。夏流を迎えに来ました。」

『げっ玄関は開いています!どうぞ!』

何が起こっているのかわからないまま目の前の玄関の戸をそっと開ける。

するとそこにはいつも可愛い顔をしている天使二人が怒った顔で仮面Xマンのおもちゃを手に持ち眉を顰め立っていた。

「美羽君?瑠唯君?」

「「あまにーちゃん!」」

「はい…」

突然の大声に周も驚く。

「けんかはだめ!」

「なか、よく!」

「は?」





喧嘩?なぜ?






頭の中に疑問詞しか思いつかない。

これでは埒が明かないと玄関に上がろうとするとすぐさま取り押さえられた。

「だめーー!!!」

「あまにーちゃ!はいっちゃ、だめ!」

「うーん…」

周は少し考えると双子の背に合わせるように座る。

「どうして俺は入っちゃいけないの?」

「だって、ごめんなさいできないひとはだめなんだ!」

「ちゃんと、なつにーちゃんに、あやまって?」

「夏流に?どうして?」

二人は真剣そのもので、ボディラングエイジも欠かさない。

「だって、なつにーちゃんないてた!げんきがないんだ!」

「なつにーちゃん、いつもみたいに、えがお、みせてくれない!」

美羽の夏流が泣いてたという言葉に周は目を見開く。







そういえばどこか悲しげな面影があった。

いつからだ?

いつから、彼は…






そして自分の持ってきた小さな袋を見る。

「…もしかして、何か勘違いをしているのかな?」

「「ふえ?」」

「うーん、ねえ美羽君、瑠唯君、俺夏流に謝りに来たんだ。どうしたら通してくれるかな?」

「「うーん…」」

まさか普通に謝りに来たというとは思わなかったのだろう。

双子たちは戸惑いながらリビングのほうを見やる。

すると七海がこそこそと顔を出した。

「なつさんの気持ち、ちゃんと、理解してあげる覚悟があるならどーぞ!」

「夏流の気持ち?」

「私にも理解してあげられない。けれど、周さんにわかってほしい気持ち、すごく、すごく大事なんです!」

「「だいじなんです!」」

復唱するように双子が周のほうを向く。

そして再び考える。そして小さな袋を見てクスリと笑う。

周は袋を七海の見えるように持ち上げた。

「これは、その覚悟の証にはならないかな?」

「それは?」












周が二階に上がると次は香南が立っていた。

「俺が、最後の番人らしいぞ。よく通れたな。」

「ふふっ可愛いナイト達を倒すのは至難の業だったよ。」

「…で?どうするんだ?」

「うーん、どうやら夏流はとても大きな勘違いをしているようなんだ。だから俺はまずその誤解を解きたいと思っているよ?」

「…これから同じようなことが起こってもか?」

香南はじっと周を見つめる。

「同じようなことが起こって、毎回なつが泣くのは困る。」

自分に自信を無くした夏流。男だから、女だから、この性別の壁が彼を襲っているのだろう。

そしてそれを壊せる何かがないとこの問題は解決しないと香南と七海は思ったのだ。

「今回は、俺が悪かったと思っている。勝手にいろいろ計画を立ててしまったのだし。ただ、こういうことをしたいと思うのは俺にとって夏流だけなんだよ。」

それは香南にではなくそのドアの向こうにいる夏流に向けての言葉だった。

「俺はね、これでも他人に関して無関心と思っていたんだよ。けれど君に会って、君が必死に生きてる姿を見て初めて守りたいと思ったんだ。初めて人に興味を持ったんだ。」

「…」

「俺のくだらない誤解を、解かせてくれないかな?」

しばらく無言が続く。周もこれはさすがに長期戦かと思った頃、そっとドアが開いた。

そこには目を真っ赤にした夏流が立っていた。

「君はこれを女性と買いに行く姿を目にしたんだね?」

すっと小さな袋を差し出す。夏流は目を大きく見開きそしてうつむきながら頷いた。

「これはね、俺にとってとても大事な節目を表す印にしたかったんだ。」

袋からまたもや小さな箱を取り出す。それを開けると指輪が光っていた。

周は夏流の左手を取ると薬指にその指輪をはめた。

「君の、大切にしていた香南君が独り立ちしたからね。ようやく俺達もゆっくり二人の時間を過ごせるようになったんだ。これからも、よろしくお願いします。」

「…へ?!」

夏流は指輪と周を交互に見やる。それを見た周はクスリと笑い、香南は大きくため息をついた。

「…そんなことだろうと思った。」

「だからね、誤解なんだよ。あの女性は香南君も指輪をオーダーしたブランドのデザイナー。一応なんていうのかな?結婚指輪のつもりで俺たちの分も作ってもらったんだよ。」

へなへなと座り込む夏流。

「だって、こっそりと会ってるから。僕…」

「それはサプライズのほうがいいかなと思ったんだよ。あとは一応芸能人だしね。人目につくのは避けたかったんだよ。」

「けっけどっ!」

周の瞳をじっと見つめる。






聞いてもいいのだろうか?

不安な気持ちを言ってもいいのだろうか?







「君が何を悩んでいるのか、これ以上俺の頭の中では考えられない。どうしたら俺は君を救うことができる?」

「周、だって、周は僕のことを好き、なの?」

「え?」

今度は周が驚く番だった。今までの言葉を聞いていなかったのかと首をかしげる。

「だって、だって、僕、周からその…好き…とか愛してる…とか…聞いたことないから…」

俯きながら小さな声で夏流がぼそぼそと話す。

周はしばらく声を出さなかった。それがさらに夏流を不安にさせる。

「ぼ、僕が、子供っぽいのはわかって―」

「そっか…ごめんね。それじゃあわからなかったよね。」

夏流の俯いた顔を右手で顎を支えあげる。

「いい?ちゃんと聞くんだよ?」

「え?」





「夏流、愛してる。」





夏流が言葉の意味を理解した時には言葉を発するはずの唇は周のそれに遮られていた。















それから以後周と夏流は仕事中は右手の薬指、オフの時には左手の薬指にその指輪をはめるようになった。

この3月は香南と七海だけではなく、周と夏流の関係もようやく次の一歩へ進んでいったのであった。

大変お待たせしました!



夏流と周もお幸せに!

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