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アポロンの涙

アルテミスの怒りの続きです。

ひかりはかげ





ぼくはきみとはなれない






きみはぼくとはなれられない







clarity love アポロンの涙







香南が目を開けるとカーテンの隙間から光がさしていた。

あの後瑠唯を寝かしつけている間にどうやら自分も眠ってしまったらしい。

横を見ると瑠唯が目をはらしてすやすやと寝ていた。

後ろにある目覚まし時計を見るとなんと10時だった。

瑠唯を起こさないようそっと部屋から出て下へ降りるとリビングには誰もいなかった。

「七海と美羽、どこかでかけたのか?」

中に入ると机の上にメモが置かれていた。






香南さんと瑠唯へ


美羽とお出かけしてきます。

夕方には帰ります。ご飯はキッチンに作り置きしていますのでそれを食べてください。






昨日の今日だ。突然どうしたのだろうと心配になる。

しかし帰る時間が明記されているところを見ると何か目的があって出かけたようだった。

香南は二人を信じ瑠唯のためにと朝ごはんの準備を始めた。








「おはよう…」

しばらくすると目をこすりながら瑠唯がリビングにやってきた。

「おはよう。目真っ赤だぞ。顔洗ってこい。」

「うん。」

ゆっくりとした足取りで洗面所へ向かった。

顔を洗った瑠唯は少し頭が置き始めたのだろう。

きょろきょろと辺りを見渡していた。

「ななちゃんと、その…」

「ああ、ななと美羽はお出かけしに行ったぞ。夕方には帰るらしいから二人で留守番してよう。」

「うん…」

どこか悲しげに瑠唯はご飯を食べ始めた。

ご飯を食べ終えると香南は掃除をし始め、瑠唯は宿題をし始める。

元気な美羽がいなからか終始静かだった。

それらが終わったころ昼ご飯を食べる。

瑠唯が手伝ってくれたおかげでスムーズに料理の準備ができた。

録画しておいた子供向け番組を見ながら静かに食べていた。

ご飯を終え食器を片づけ終えると瑠唯は香南とリビングにいた。

昼からどうしようかと瑠唯に尋ねる。

「どうする?公園でも行くか?」

「…いい。ぼく、おうちに、いる…」

「そうか。じゃあ何かゲームでもするか?」

何かやることはないかとひたすら瑠唯に尋ねるがすべて首を横に振られた。

香南がどうしたらいいか迷っていると瑠唯がぼそりとつぶやく。

「ぼく、すてられちゃったのか、なあ…」

「は?」

どうして?と質問しようとしたが、瑠唯がソファに体育座りをして話し始める。

「ふたりでどこかいって、ぼく、ななちゃんとみうに、わるいこといっちゃったから、きらわれちゃったかなあ…」

「瑠唯…」

すっかり沈んでしまった瑠唯にかけれる言葉もなく必死になだめるので精いっぱいだった。









ぼっと二人でテレビを見ているといつの間にか夕方になっていた。

「瑠唯、二人は絶対帰ってくるから、二人のために夕ご飯作ってあげよう。絶対二人喜ぶぞ。」

「う、うん。」

瑠唯も立ち上がるとさっそくキッチンへ向かい夕ご飯を作り始めた。

材料もあったため今日は美羽の大好きなカレーを作ることにした。

切ったり火を使うにあたっては香南がしていたが、まぜたり、ルーを入れたりするのは瑠唯が行った。

あとはじっくり煮込むだけだったがまだ帰ってこなかった。

もうそろそろ日も沈みかけていた。

瑠唯はますます心配そうな顔をする。

「どうしよう、ほんとうに、ななちゃんも、みうも、かえってこなかったら…」

「大丈夫だ。瑠唯、」

しかしさすがに香南も心配になり電話をしようとカバンの中から携帯を取り出そうとした。

すると玄関の戸が開く音がした。

「ほら、二人とも帰ってきたぞ。」

香南は瑠唯の背中を押すが瑠唯は止まったまま首を横に振った。

「瑠唯?」

「ぼ、ぼく、きらわれて、」

「瑠唯…」

二人がそうこうしているうちにリビングの戸が開く。

「ただいま!」

「ただいま~ごめんなさいね。突然出かけちゃって…」

帰ってきた美羽と七海のかっこうは泥だらけだった。

瑠唯は驚いて硬直状態だしさすがの香南も目を見開いていた。

「二人ともどこへ行って…」

「ふふっ今日は少し冒険に行ってきたんです。ほら、美羽」

「う、うん!」

美羽は真面目な顔をすると後ろに何か手で隠しながら瑠唯の目の前に立つ。

「み、みう…」

「るい、ごめんなさい!」

ばっと腰を折りながら隠していたものを前に差し出す。

それはパックに入ったいちごだった。

「え、これ…」

「いちご食べちゃったでしょ?美羽がどうしても瑠唯のためにいちごを渡したいってわざわざイチゴ狩りできるところ探して行ってきたのよ。」

美羽の後ろに立った七海が解説を入れる。

美羽が顔を上げる。

「るい、ゆるしてくれるか?」

いちごのパックを受け取った瑠唯は美羽を抱きしめる。

「みうっみうううう!!!ごめんなさいっ!わあああああんっ!!」

「あーあ!また、泣いちゃってもう…」

「瑠唯心配してたんだ。ななと美羽が自分のこと捨てたんじゃないかって。」

香南がななのそばに立ち顔についた土を払ってやる。

香南の言葉に七海は驚いた様子だったがとてもうれしそうな顔をした。

「もう、私たちが瑠唯を捨てるわけないじゃない。」

双子のほうを見ると瑠唯はまだ泣いていた。

「ぼくも、きのう、っくだいきらいっていって、ひっく、ごめんなさいっ!」

「おれがわるいんだからいいんだよ!それよりほら、いちごたべようぜ!」

美羽は瑠唯をひとなでするといつもご飯食べる机で瑠唯が座るところにお皿とフォークを用意した。

そして瑠唯からいちごのパックを再び渡してもらい台所で洗ってきたかと思うとそのお皿にいちごを置いた。

「ほらぜんぶでかいだろ?おれがえらんだんだ。」

「美羽、一生懸命探したのよ?」

「すごい、ねっ。みう、すごい」

「すごいな。よかったな、瑠唯。」

「へへっさあ、どーぞ。」

香南や七海たちも席に座りいちごを見る。

美羽は瑠唯の隣に座り瑠唯がいちごにフォークを刺すところ見ていた。

瑠唯は一瞬迷った様子であったがフォークを美羽の目の前に差し出す。

「はい、みう。どーぞ。」

「え?」

「「瑠唯?」」

せっかく瑠唯のために探してきたものを瑠唯は美羽に差し出していた。

さすがの美羽も混乱していた。

「ぼく、このいちごみたらもうおなかいっぱいになっちゃった。みう、おなかすいたでしょ?だから、どーぞ。」

「るい…」

瑠唯が微笑んでいるのを美羽はじっと見るとにこっと笑いかけ瑠唯が差し出したいちごをぱくっと食べた。

「すっげーおいしい!!」

「そっか。よかった。」

美羽は瑠唯からフォークを借りるといちごを刺し瑠唯に差し出す。

「はい、るいあーん!」

「…うん!」

瑠唯は嬉しそうに口を開けいちごを食べた。

「どうだ?」

美羽は心配そうに瑠唯を見やる。

瑠唯は少し咀嚼するといちごを飲み込む。そして美羽に笑顔を向ける。




「おい、しい!みうのいちご、とっても、おいしい!」




その顔はいつもの数倍かわいくて美しい笑顔だった。

皆様投票ありがとうございました!



そしてこれからもよろしくお願いします!

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