神の余暇(バカンス)の終わり。一億人の幸福と、自分を「燃料」にした王の献身
四人のヒロインと、それぞれが望む最高の夜を過ごしたレイン。
愛に満たされ、帝国はこれ以上ない幸福の絶頂にいた。
だが、その翌朝――王座のレインの視界が、白く爆ぜた。
(……くっ、限界か)
一億人の「働かずに稼ぐ」という欲望を叶え続けるための膨大な演算。
そして四人のヒロインに分け与えた、運営すら超越する特権的パワー。
それらすべての「負荷」を、レインという一個人のアカウントが肩代わりしているのだ。
一億人の幸福を維持するため、彼は自身の「存在データ」を削り、リソースへと変換していた。
ふと見ると、レインの右手の指先が、デジタルノイズを放ちながら砂のように透け始めている。
「……主様? どうされたのですか、そんなところで立ち尽くして」
背後から声をかけたのは、昨夜、魂を同期させたアリスだった。
彼女の精密な解析眼は、レインが隠そうとした「肉体の欠損」を、すぐに見抜いてしまう。
「アリスか。何でもない、ただの立ちくらみだ」
「嘘をつかないでください。……魂の座標が、震えています。貴方の存在確率が、ゼロに向かって加速しています」
アリスが、レインの手に触れようとする。
だが、彼女の指先は、実体を失いつつあるレインの手を、空しくすり抜けた。
「……! これは……システムへの過負荷ではありません。
レイン……貴方、まさか自分自身を『燃料』にして、この帝国を回しているのですか!?」
アリスの悲痛な叫びが、静まり返った玉座の間に響く。
一億人が謳歌する「働かなくていい世界」の正体は、王の命を削って作られた、あまりにも残酷な献身の結晶だったのだ。
「……いいんだ、アリス。これが俺の選んだ『遊び』の対価だ。
一億人が笑っていれば、それでいい」
「よくありません!!
貴方がいない世界など、私にとってはただのガラクタです!!」
感情を剥き出しにするアリスの叫びに呼応するように、帝国の空に巨大な「黒いノイズ」が走る。
幸福の絶頂で、ついに王の崩壊と、世界の終わりのカウントダウンが始まった。
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