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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第6章:【真・創世記】「働かずに稼ぐ」という神話と、一億人のログイン移民
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【上書きされた地球】物理的な国境の消失。全人類を飲み込む『オーバーライド・エンパイア』

 その日、世界中の街から人影が消えた。


 かつて経済の中心だった摩天楼まてんろうの街並みも、不気味なほどの静寂に包まれていた。世界を支配するエリートも、国を守るはずの公務員も、今は皆、自宅や簡易シェルターの床に横たわっている。彼らの肉体はそこにあるが、魂はすべて一箇所の座標――『オーバーライド・エンパイア』へと亡命していた。


 旧時代の連合組織(U.G.A.)の残党は、必死に「ログイン禁止令」を発令し、ネット回線の物理的な遮断しゃだんを試みた。だが、もはやその試みすら、誰にも届かない。回線を管理するエンジニアも、命令を下す上官も、既に市民権ランクを上げるための「狩り」に夢中だからだ。



 ――帝都、王宮の最上階。


 レインは、地平線を埋め尽くすほどの光の柱を見下ろしていた。一秒ごとに数千、数万という「ログイン移民」が、現実の国籍を捨て、この帝国の門を叩いている。


「先輩、接続者数は既に一億人を突破しました……。あの日、あなたがセクター99で宣言した『オーバーライド・エンパイア』の名が、今やこの星で唯一機能している『国家』の名前になりました」


 シュガーが震える手で操作するホログラムには、主要国の政府機能が完全にマヒし、全人類の意識がこの帝国へと雪崩なだれ込んでいる統計が表示されていた。


「我が王。世界中のサーバーが、自ら『エンパイア』の配下へと再定義を始めています。もはやこの名前は、あなた個人が付けた愛称ではありません。……この惑星を動かすOSオペレーティング・システムとなったのです」


 アリスの言葉に、レインは不敵に口角を上げた。


『ああ、そうだ。あの時はまだ運営に対する宣戦布告に過ぎなかったが……今、この名は「真の法」になった』


 レインが手を掲げると、全人類の視界にシステムメッセージが、より巨大な、黄金の輝きを伴って再表示される。


【 OVERRIDE EMPIRE:旧人類データの完全移行、および市民権の固定化を開始 】


『全人類に告ぐ。旧時代の国家というシステムは、本日をもって終了した。これからは、この帝国の市民権ランクこそが、お前たちの命の価値であり、財産であり、力だ』


 かつてセクター99で宣言した「俺が望むルールだけが法となる」という言葉が、今、物理的な国境を、法律を、そして「現実リアル」という最大の壁を完全に塗りつぶした。


 人々は狂喜してそれを受け入れた。税金をしぼり取るだけの政府、理不尽な格差、不自由な物理法則。そんな「バグだらけの現実」を捨て、全知全能の王が統治する『オーバーライド・エンパイア』のパーツになることを、人類は自ら選んだのである。


 ――こうして、西暦2200年のある日。人類は「住む場所」を失ったのではない。「現実」という不自由なサーバーから、レインという神が統治する「無限のサーバー」へと、種族丸ごと亡命したのだ。


「……さあ、始めよう。誰も働かず、ただ俺のルールで稼ぎ、欲望のままに生きる、真の楽園エデンを」


 その言葉と共に、現実世界の主要都市の電力網が、帝国のシステムによって一括管理され、黄金の『レインの紋章』が夜の地球を覆い尽くした。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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