【運営ハイジャック】「久しぶりに、コードの書き方を教えてやろうか?」 ――削除プログラムを逆流し、俺は運営の心臓部へ降り立つ――
深夜一時五十五分。
『エターナル・レジェンド』の世界から、太陽が消えた。
公式アナウンスにより、全プレイヤーに対して緊急メンテナンスによる強制ログアウトが宣告される。
「おい、マジかよ! いいところだったのに!」
「運営、例の街を消すつもりか!? せっかく『全裸教』に入信したのに!」
掲示板が阿鼻叫喚に包まれる中、数百万の意識が仮想世界から引き剥がされていく。
やがて、賑やかだった草原も、白亜の街の周囲も、静寂という名のノイズに支配された。
――だが、その街のテラスに、一人だけ「残っている」男がいた。
「……来たな」
午前二時。
空がガラスのように割れ、そこから無機質な巨大な腕が降りてくる。
運営が放ったリージョン消去プログラム――
『論理爆弾』だ。
触れたものすべてをゼロとイチの塵に分解する、絶対的な「無」の権現。
その直後、レインの耳元に、震える声が届いた。
シュガーからの、隠し(かくし)音声ログだ。
『……先輩、今です!
運営がプログラムを走らせるために、メインサーバーの第一隔壁を開放しました。
私が送ったバックドア(鍵)なら、そこから「上」へ逆流できます!』
「恩に着るよ、シュガー」
レインは不敵に微笑むと、空中に展開した数千のウィンドウを一斉にスワイプした。
消去プログラムが街に触れる直前――
レインの身体が、真っ黒なノイズとなって「空」へと吸い込まれていく。
「――お前たちの『削除』というルールは、もう古い。
これからは、俺がこの世界の深度を書き換える」
レインが逆流したのは、運営の心臓部。
本来、プレイヤーが決して立ち入ることのできない、純粋なデータのみが流れる
『深層階層』。
そこには、驚愕に目を見開いた運営のスタッフたちの意識が、管理者アバターとして並んでいた。
「なっ……なんだ、このノイズは!?」
「セクター99の消去に失敗!
逆に、メインサーバーに未知のコードが侵入しています!」
パニックに陥る運営フロア。
その中心に、悠然と降り立ったのは、黒い外套を翻したレインだった。
「よう、クズ共。……久しぶりに、コードの書き方を教えてやろうか?」
レインが指を弾くと、運営たちの権限(特権)が次々と剥奪されていく。
彼らのアバターは「ただの一般プレイヤー」と同じ、貧弱な姿へとダウングレードされた。
シュガーが必死にシステムを偽装し、レインの侵入を「正常なアップデート」として認識させているおかげで、彼らはレインを追い出すことすらできない。
この夜――
世界の力関係は、完全に逆転した。
運営は「バグを消そう」として、
自分たちの「心臓」を、レインに握られてしまったのだ。
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