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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第4章:絶対神の新婚生活。説教する精霊女王と究極の箱庭づくり
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【朗報】介入制限、完全消失。世界を「繕う」だけの予備部品だった俺は、法を喰らって絶対神へと進化した

 かつて、俺の視界には常に無慈悲な警告文システムメッセージが張り付いていた。


《管理者権限:制限中──介入はわずかに留まる》

《世界自律度:上昇──動きは、もはや俺の手に届かない》


 理不尽な追放を受け、街の崩壊を予見しながらも、俺に許されていたのは、システムのほころびを少しだけつくろう「その場しのぎの修正」だけ。自分を削り、誰に感謝されることもなく、ただ独りで、絶望的な運命の濁流だくりゅうを指先で押し留める日々。


 向けられるのは、俺の苦悩を知らぬ者たちからのさげすみと、無能の烙印らくいん。 ……それでも俺は、この世界を守るために孤独を選んでいた。


(……だが、実際はどうだ? 俺がいなくなって18日も持たなかったじゃないか)


 管理ウィンドウのログを読み返せば、かつての王都が消滅デリートするまでの時間は、あまりにも短かった。俺が「延命処置」だと思っていた毎日のメンテナンスや、指先から漏れる無自覚な魔力の補強こそが、あのボロ屋のような世界を支えていた唯一の支柱メインプログラムだったのだ。


 俺を無能と呼び、追い出した連中。 彼らは、自分が座っている椅子を支えていたネジを、自らの手で外した。その末路は、救いようのない自業自得。今さら後悔したところで、消えたデータは二度と戻らない。


 だが、今はもう、そんな計算をする必要すらない。


 アリスから差し出された『神霊果』――この世界のシステムログが物質化した「法」そのものを胃に収めた瞬間、俺の中で何かが音を立てて崩れ、再構築された。


 腹の底から湧き上がるのは、全能の感覚。かつて俺を縛っていた「制限」の鎖は、今や俺の指先一つで霧散する薄氷のようなものだ。


(……ああ、そうか。もう世界を『直す』必要なんてないんだな)


 俺が「美味しい」と思えば、この庭の空気はより甘く研ぎ澄まされる。俺が「安らかであれ」と願えば、かつては介入不能だった物理法則すらも、俺の望むままにひざまずき、楽園を維持するための「奴隷どれい」となる。


 もはや、世界が俺を動かすのではない。俺の存在そのものが、この世界の「法」となったのだ。


「レイン様。そんなに熱心にご自身の掌を見つめて、どうされましたか?」


 アリスが背後から俺の首筋に腕を回し、潤んだ瞳でのぞき込んでくる。かつてさげすみの視線にさらされ、独りで世界を支えていた時の凍えるような孤独が、彼女の柔らかな肌の熱で、溶けていく。


 俺は、指先に集まった「かつては警告が出て触れることすらできなかったはずの黄金の光」を、そっと彼女のほほに滑らせた。


「……いや。昔はあんなに不自由で、独りだったのに。今はこんなに自由で、君がそばにいる。……それを、み締めていただけだよ」


「当然ですわ。今のレイン様は、この領域における絶対神。あなたが望みさえすれば、一度 消去デリートしたあの王国の残骸ざんがいから、気に入ったパーツだけを拾い上げ、あなたの『玩具』として再構成することだって容易いのですから。あの時、あなたを嘲笑あざわらった王や兵士たちを、感情だけを持った『しゃべる石像』として復元し、この庭の噴水の台座にする……なんて趣向も、今のレイン様なら自由自在なのですよ?」


 アリスの甘いささやき。かつての敵を「パーツ」や「玩具」と呼ぶ彼女の残酷なまでの忠誠心が、今は心地よい。


「主様! 主様ー! また噴水に虹をかけたですぞ! これ、リヴィアの魔力だけで維持してみたですな! むふー、褒めても良いですぞ!」


 水飛沫みずしぶきの中でリヴィアが自慢げに翼を広げる。守るべき仲間が目の前にいて、彼女らもまた、俺を何よりも大切にしてくれている。 自分を削る必要のない、満たされた日々。


「ああ、すごいなリヴィア。……さて、次はどんな楽園を創ろうか」


 俺がそう呟き、庭をさらに拡張しようと意識を外界へ向けた、その時だった。


 ピリッ、と。


 完全に制御下にあるはずの「世界の境界線」に、微かな振動が走った。それは、デリートされたはずの旧世界から漂着した、不気味なほど純粋で、理屈っぽい「バグ」の気配。


「……あら? ゴミ箱の中に、まだ『燃え残り』があったようですね」


 アリスの目が、氷のように冷たく細められた。絶対神となった俺の楽園に、ゴミ(過去の因縁)が迷い込んだらしい。


 ……いいだろう。今の俺なら、そのバグ(絶望)すらも最高のエンターテインメントに書き換えてやれる。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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